なぜこれを張り付けたのかと、それは一発 最速 朗読するためです。


Dear Ms miss Eleanore shimizu鉱業とフィリピン経済 4-1-1. 市場トレンド フィリピン政府の推定によると

清水大策 <shimizudaisaku@daiichiyoukou.com> 2022年6月7日 9:41
To: Mariel Garcia <mejiacademy888@icloud.com>
 Dear Ms miss Eleanore
shimizu
鉱業とフィリピン経済 4-1-1. 市場トレンド フィリピン政府の推定によると現在のフィリピンの鉱業投資額は 約60億US$でこれによって創出される年間総利益額は最高で30億 US$である。また、現在実施が確認済みの高利益鉱業プロジェクト は今後10年間で20万口の雇用を創出すると予想されている37。 4-1-2. 鉱業のフィリピン経済への貢献 2006年の鉱業のフィリピン経済への貢献の内訳は以下の通りである38。 表5 鉱業界統計39 2005年 2006年第2四半期 鉱業の総生産額(出典:MGB) 大規模な金属鉱業 132億PHP 99億PHP 小規模な金採掘 242億PHP 149億PHP 非金属鉱業 128億PHP 資料無し 合 計 502億PHP 248億PHP 1985 年 の 不 変 価 格 に よ る 総 価 値 付 加 額 (出典:NSCB) 148億PHP 61億PHP 鉱業のGDP貢献率 1.20% 2.00% 鉱物及び鉱物製品の総輸出額(出典:BSP) 820百万$ 822百万$ 鉱業の総輸出額貢献率 2.00% 3.70% 鉱業投資額(払い込み済み)(出典:SEC) 資料無し 資料無し 鉱業/採石事業における雇用(出典:DOLE) 12万3,000人 12万人 鉱業の雇用貢献率 0.36% 0.37% 鉱業税/手数料、ロイヤルティ DENR/MGBによる手数料/ロイヤルティ 210.2百万PHP 57.2百万PHP BIR(フィリピン国税局)による消費税 177.9百万PHP 国家政府機関の徴収税 2,319.9百万PHP LGU(地方政府)の徴収税 230.4百万PHP 4.1百万 合 計 2,938.4百万PHP 61.3百万PHP 37 出典:Chamber of Mines of the Philippines(フィリピン鉱業会議所)編纂の Philippine Mining Investment Opportunities(フィリピンの鉱業投資の機会) 38 出典:Chamber of Mines of the Philippines(フィリピン鉱業会議所)編纂のPhilippine Mining Investment Opportunities(フィリピンの鉱業投資の機会) 39 2006 年 12 月 31 日正式発表 - 23 - 表 6 GNPと鉱業付加価値(MVA)の成長率 1998~2004年第3四半期 単位=百万PHP 年 GNP GNP成長率(%) 鉱業付加価値額 (MVA) MVA成長率(%) 1998年 934,481 0.4 10,624 2.8 1999年 969,334 3.7 9,736 -8.4 2000年 1,036,392 6.9 10,833 11.3 2001年 1,061,283 2.4 10,125 -6.5 2002年 1,107,007 4.3 15,285 51.0 2003年 1,168,778 5.6 17,856 16.8 2004年第1四半 期~第3四半期 896,643 6.2 14,436 6.2 4-1-3. 鉱業市場のトレンド フィリピンの鉱業市場は、大きく成長する兆しを見せており、2006年の金属鉱業の総生 産額は248億PHP(予想データ)である。現在、フィリピンでは操業中の金属鉱山が18 鉱山、承認/登録済みのMA(鉱業協定)またはFTAAが390件(申請処理中のものは2,203 件)である40。 4-1-4. 鉱物生産 フィリピンには鉱物が大量に埋蔵されており、埋蔵量の世界順位では、金で第3位、銅 で第4位、ニッケルで第5位、クロムで第6位である。また、未開発の埋蔵鉱物の価値額 は約8,400億US$と推定されている41。 表7 フィリピンの原鉱及び地金の生産量(2005年) 鉱物 単位 量42 貴金属 金 kg 37,519 銀 kg 19,146 ベース・メタル 銅精鉱 DMT 75,283 銅精鉱中の銅含有量 MT 16,323 ニッケル原鉱 DMT 1,563,1 ニッケル原鉱中のニッケル含有量 MT 27,815 16 冶金用クロム 20,025 化学製品用クロム 16,226 耐火物用クロム DMT 1,830 40 出典: MGB による Mining Industry Statistics(鉱業統計)2006 年 12 月 31 日発表 41 出典:フィリピン国家経済開発局(Philippine National Economic Development Authority)によるデータ 2004年6月29日発表 42 出典:Philippine Metallic Mineral Production (フィリピンの鉱物生産)2006 年 1 月 31 日発表 - 24 - 4-1-5. 鉱物輸入 2006年10月現在のフィリピンの金属含有鉱物の輸入額は38.15百万US$である43。 4-1-6. 鉱物輸出 2006年、金、銀、銅、ニッケルといった主要鉱物の価格は昨年と比べてかなり値上がりし ており、第2四半期において、銅は2.75US$/lb(2004年、2005年の平均価格は、それぞれ 1.30US$/lbと1.58US$/lb)といった記録的高値、金も590.31US$/oz(2005年平均価格は 431.35US$/oz)、銀とニッケルは、前年比でそれぞれ55.8%高、12%高である。44以下は、 金属価格の最新データである。 表7a. 金属価格の最新データ45 鉱物 単位 価格 金 US$/oz 647.15 銀 US$/oz 13.40 銅 US$/mt 5,540.50 ニッケル US$/mt 40,625.00 鉄鉱石 US$/dmt 52.21 表7b. 2006年のフィリピンの鉱物総輸出額46 鉱物 FOB(US$)2006年1~11月 銅精鉱 73,748,829 銅地金 1,078,233,605 金 45,041,736 鉄鉱石塊 141,868,618 クロム原鉱 4,190,089 ニッケル 16,376 4-2. フィリピンの鉱業活動の概要47 フィリピンでは現在、23件の大型鉱業開発プロジェクト(総価値額908億US$)が行われて おり、これらによって今後6年間、40億~60億US$の直接外資投資、50億~70億US$の外貨為 替、20万口の直接的/間接的雇用が創出されると予想されている。この23件のプロジェクト のうち、7件は継続中(建設や開発前段階の完了または拡張中)のものである。 現在のフィリピンの鉱業利益は、年間で約10億US$とマレーシアやパプア・ニューギニ アの利益額とほぼ同額であるが、インドネシア(36億US$)やチリ(130億US$)及び西 43 出典:国家統計局 Philippine Imports by Major Type of Goods(フィリピンの輸入品-主要輸入品別) 44 出典:Mining Industry Statistics(鉱業統計)2006 年 12 月 31 日発表 45 出典:MGB による 2007 年 1 月 29 日付 Daily Metal Prices(日間金属価格) 46 出典:国家統計局による Philippine Exports by Commodity Group(フィリピンの輸出品-物品グループ 別)http://www.census.gov.ph/data/sectordata/2006/ex061102a.htm(2007 年 2 月 4 日発表) 47参考: Briefing Kit on the Philippine Mineral Sector(フィリピン鉱業界の概要)2004 年 12 月発表 - 25 - オーストラリア州(260億US$)からは遅れを取る格好である48。 フィリピンの鉱業界への探鉱投資は、他国との厳しい競争にも関わらず、この10年間で大 きく伸び、タンパカン(銅)、南東部(銅、金)、ボヨンガン(銅)をはじめとした世 界規模の鉱床が、多く発見されている49。これらの鉱床は、以前に発見された鉱物品位 が低く厚みも少ない鉱床とは異なり、高い価値が期待されるものであるので鉱業活動で の社会面/環境面の費用もより容易に補えるものと思われる。 フィリピンの陸地面積はおよそ3,000万haであるが、このうちで鉱業活動が認可されている のは僅か1.5%である。鉱業地球科学局(MGB)は、残りの土地(98.5%)の30%は地質学的 にも金属鉱物が埋蔵地されているものと推測している。 前記される金属鉱物の埋蔵地の占める割合(30%)は、今後も継続して行われる探鉱や地質 学的マッピングによって増える可能性もある(現在の推測では、900万ha増の見通し)。図 1にはフィリピンの鉱物埋蔵有望地が示されている。 48 Mining Journal の特集号“フィリピン”2006 年 3 月 49 Mining Journal の特集号“フィリピン”2006 年 3 月 - 26 - 図1 フィリピンの既存鉱区/将来的鉱区 海洋部にも鉱床の存在の可能性がある。フィリピンの海洋部(EEZも含む)はおよそ2.2百 万㎢に及び(1) 金、クロム鉱、マグネタイト(磁鉄鉱)、シリカといった鉱物、(2) 金、 銅、コバルトをはじめとする鉱物から成る他金属硫化鉱床、(3) 銅、金、亜鉛、コバル トなどを含むマンガン団塊や堆積物などが、豊富に埋蔵されている。図2には鉱床の存 在の可能性の高い海洋地域が示されている。 - 27 - 図2 鉱床の存在の可能性の高い海洋地域 - 28 - 4-3. 探鉱プロジェクト及び優先的開発プロジェクト(Priority Development project) 2006年1月の時点で、DENR/MGBの発行しているEP(探鉱認可)の件数は、27件である。DENR/MGB の報告によると、現在、確認されている優先的開発プロジェクト(Priority Mineral Development project)の数は24件で、そのうち操業が開始されたのは、パラワンのニッケ ルプロジェクト、ラプラプ(Rapu-Rapu)の多金属プロジェクト、Canatuanの銀/金プロ ジェクト、 Teresaの金プロジェクト、パドカル(Padcal)の銅拡張プロジェクトの5件 である。残りのプロジェクトは建設及び開発、最終的F/S調査及び資金調達、事前的F/S及 び探鉱後期、最終入札などといった様々な段階にある。 図3 大型開発/拡張プロジェクトの位置 優先的開発プロジェクト - 29 - 5. 鉱業法/法規 5-1. 鉱業政策 5-1-1. 国家鉱業政策(National Mineral Policy) フィリピン政府は、フィリピンの国家成長への鉱業の貢献の可能 性を認識し、「フィリピンの経済成長を促進するため、“持続可 能な開発の原則の遵守”、“公正及び公平”、“フィリピン民族 の文化への配慮”、“フィリピンの主権の尊重”のもと、責任あ る鉱物の探鉱/開発/加工処理を積極的に推進する」といった政策 を掲げている50。 5-1-2. 原則 フィリピンの鉱業界では、国家鉱業政策(National Minerals Policy) のもと次のような原則が掲げられている51。 (1) 政府は国家の発展と貧困の改善において鉱業投資の果たす重要な役割を認識し、 持続可能な探鉱プログラムの支援メカニズム(鉱業保有地の付与に関する政府機 関の手続きや方法の合理化・臨機応変なリサーチ/開発の優先順位付け・人員の 能力開発など)を設置する52。 (2) 鉱業界を繁栄に導くような鉱業投資の促進のために明確で安定しかつ予測可能 な投資/法規政策を設置する。 (3) 鉱物によってフィリピン国民の得る恩恵をその(鉱物の)価値付加を通じて最大 化するためにも下流部門の生産性と効率性を増進していく。 (4) 小規模鉱業を鉱業界の正式な分野として及び上流と下流の両方における開発イ ニシアティブの一部として促進していく。 (5) 再生不可能な鉱物資源の持続可能性の促進のため分別ある採鉱及び鉱物の加工 処理の最大限化に有効な技術を導入する。 (6) 鉱業活動においては、その全段階において環境保護を第一の考慮事項とし、打撃 緩和/継続的回復の施策を必ず盛り込む。閉山または鉱区の最終的な回復は、適 切な環境/財務保証人の支援のもとに行われるものとする53。 (7) 公共の福祉、安全性、環境の質の保護のためにも鉱業活動に影響を受ける土地の 生態系(生物多様性や小島の生態系など)を安全に確保すべきものとする。鉱業 活動に影響を受ける地域社会の権利、例えばICC(土着文化共同体)の権利、特 にFPIC(自由意志による事前承諾)の権利は保護されるべきものとする54。 (8) 鉱業活動は鉱物埋蔵地の複合的な及び持続可能な活用といった体制のもとに行 50 大統領令(EO)第 270 号第 1 項 51 大統領令(EO)第 270 号第 2 項 52 大統領令(EO)第 270-A 号第 1 項 53 大統領令(EO)第 270-A 号第 1 項 54 大統領令(EO)第 270-A 号第 1 項 - 30 - われるものとする。 (9) 廃鉱の改善及び回復は過去の鉱業プロジェクトの与えた打撃を解決するために も最優先事項とされる。 (10) 鉱業から生じる経済的及び社会的恩恵は政府の各部門及び(鉱業活動に)影響を 受けた地域社会に公平に分配されるべきとする。 (11) 鉱業界に関する情報の提供、教育、コミュニケーションは地域社会の権利の一般 認識と尊重の促進及び鉱業やその関連プロジェクトに対する国家または地方で の意思決定の情報の伝播のためにも産業及び利害関係者の共同によって、積極的 かつ持続的に行われるものとする。 (12) 資源マネジメント政策/計画において、鉱物に対する多岐な関心/懸念事項が一つ にまとめられるためにも産業及び利害関係者全体の継続的で意義ある協議が設 定されるべきである。 5-2. 鉱業機関 5-2-1. 鉱業地球科学局(MGB) 鉱業地球科学局(MGB)は、フィリピンの鉱業部門の主要政府機関で、国内の鉱物資源 の管理及び譲与を担当し、鉱業保有地に関連した協定(MPSA、 FTAAなど)の申請の受 理及び審査を行う。但し、MGBの機能はDENRの付属機関の範囲内のものであり、鉱物生 産分配協定(MPSA)の最終承認はDENR長官(Secretary)、FTAAの最終承認はフィリピ ン大統領によって行われる。 MGBは、陸地及び海洋の地質、採鉱、鉱山環境、製錬、鉱物経済などに関するリサーチ や鉱山の測地学的調査(MGBの地質的危害に関するマッピングは、最近、自然災害の多 発によって新たな注目を浴びることになっている)なども行っている。 5-2-2. 環境天然資源省(DENR) 環境天然資源省(DENR)は、国内の環境及び天然資源(保留地、分水界、公有地など) の保護、管理、開発、適正利用及び天然資源の加工処理のライセンス付与や規制などを 担当する政府機関である。 DENRの主な権限と機能は以下の通りである。 • 国内の天然資源の管理、保護、開発、活用、回復と関連する政府の政策/計画/ プログラムの発案、施行、管理。 • 天然資源の探査、開発、保護、採取、処理、活用及び天然資源の枯渇や質低下を 招くようなその他の商業活動に対する法律の細則の制定。 • 森林、譲渡/譲与の可能な土地、鉱物資源の管理と調整及び手数料、地代、税金 などの賦課及び鉱物の探査/開発/加工処理に伴う歳入の徴収。 • 野生動植物の保護や国立公園または保護区の指定を通じての文化/自然遺産の保 護。 - 31 - • 環境保護法の施行による安全な自然環境の維持。 DENRの権限の行使は、管轄の局を通じて行われ、鉱業部門においては、MGBがそれを担 当している。また、PAWB (保護区及び保護野生動物局)もDENRの付属機関であるがこ の機関は環境保護の面から鉱業活動を規制するような機能を備えたものである。 5-2-3. 保護区及び保護野生動植物局(PAWB) 保護区及び保護野生動植物局(PAWB)は、NIPAS(国家総合保護区システム。国立公園、 野生動物保護区、海洋公園、生物圏保護区などを含む)の指定、管理に関する政策、ガ イドライン、規則、法規の管理及びNIPAS候補地の推薦などを担当する機関である。フ ィリピンでは鉱業法の下、保護区での鉱業件付与は禁じられているため、PAWBのこのよ うな活動は鉱業活動を規制することになっている。 PAWBのその他の権限や機能には主に以下のようなものがある。 • フィリピンで絶滅の危機に晒されている動植物のリストの更新及びそれらの保 護及び繁殖のプログラムの提案。 • 生物学的多様性、遺伝子資源、フィリピンで絶滅の危機に晒されている動植物の 保護に関する政策、ガイドライン、規則、法規の立案や提言。 • DENR長官のNIPAS管理の監視及び審査の補佐、DENR地方支所のプログラム導入に おける専門的な支援。 5-2-4. 国家先住民委員会(NCIP) 国家先住民委員会(NCIP)は、土着文化共同体(ICC)や先住民(IP)の権利の向上の ための政策、計画、プログラムの策定及び施行を担当する政府機関である。 NCIPは、以下のような面で鉱業活動に関わりを持つ。 • ICC/lPを擁護する立場から先祖伝来の土地の所有権の証明書を発行する。 • 鉱業権の申請される土地が先祖伝来の土地である場合に、その申請者による ICC/IPからのFPIC(自由意志による事前承諾)の取得手続きを管理する。 • 鉱業権の申請が行われる土地が先祖伝来の土地ではない場合にその旨の証明書 を申請者に発行する。 NCIPは上記以外にも次のような重要機能を持つ。 • 政府機関としてICC/IPの支援及びその支援の拡張としての調停を行う。 • ICC/IPの経済的、社会的、文化的発展のための政策やプロジェクトの策定及び実 施を行う。 • ICC/IPの季節会合/集会を催し、政策や計画の見直し、評価、策定を行う。 • フィリピンのICC/IPの代表として、IPやその他の関連事項の国際会議に出席する。 - 32 - 5-2-5. 国家経済開発局(NEDA) 国家経済開発局(NEDA)はフィリピン経済の開発と計画を担当する独立機関である。 NEDAは様々な委員会を通じて主に以下のような活動を行っている。 • 政府の年間支出プログラムの水準及び経済/社会開発、国防、一般公共サービス、 債務返済への政府支出の上限に関し、大統領承認の提言を行う。 • 各開発活動への適切な費用割り当て(資本、流動運営費)を計画し、大統領への 提言を行う。 • 資本、インフラプロジェクトへの資本充当額を計画し、大統領への提言を行う。 • 大型国家プロジェクトの会計、財政、収支の見積もりと実施スケジュールの大統 領への定期的提言を行う。 • 大統領に対し、国内、海外債務プログラムの更新提案及び大型国家プロジェクト の、会計、財政、収支の現状報告を年次に行う。 NEDAは、2004~2010年に実施予定の「フィリピン中期開発計画(Medium Term Philippine Development Plan)」において、鉱業部門を“投資で40億~60億US$、外資為替で年間50 ~70億US$、雇用数で24万口以上を創出する経済的ポテンシャルの非常に高い産業”と定 めている。このようなことからも、NEDAは鉱業界の再活性化における政府政策の主要牽 引力であるとも言える。 5-2-6. 内務地方政府省(DILG) 内務地方政府省(DILG)は、地方政府を統轄する省で、特に「公共の秩序及び安全」と 「地方自治及び共同体の権限の促進」に関する、規則、法規、実施細則の制定と監視を 担当する。 DILGのその他の役割には主に以下のようなものがある。 • 「平和と秩序の促進」、「公安の確保」、「地方政府とその職員の、行政面、技 術面、財務面での能力強化」のための、計画、政策、プログラム、プロジェクト の確立や指定。 • 地方での天災や人的災害による緊急事態に対する計画、政策、プロジェクトの策 定。 • 基本的公共サービスの有効かつ効率的な提供のための一般市民及び地域有力者 との調整、協力システムの確立。 • フィリピン国家警察(Philippine National Police)、防火局(Bureau of Fire Protection)、刑務所管理及び刑務所管理学局(Bureau of Jail Management and Penology)の監督。 5-2-7. 地方政府 地方政府は鉱業法(Mining Act)の下、小規模鉱業、採石事業を管轄しており、鉱業事 - 33 - 業は開発の段階に入る前に鉱区の属する地方政府の承認を得なければならない。 5-2-8. 鉱物開発委員会(MDC) 鉱物開発委員会(MDC)は、フィリピン政府の「国家の鉱物資源の責任あるかつ持続可 能な開発」という政策を促進する政府機関である。 MDCは数々の政府機関(DENR、DILG、財務省、NEDA、NCIPなど)のメンバーによって構 成されており、DENRの長官が委員長、 DENRの多角的開発チーフアドバイザー (Presidential Adviser for Multilateral Development)が副委員長を務めている。 また、鉱業界の民間協会の要でもあるフィリピン鉱業会議所(Chamber of Mines of the Philippines)もMDCに加盟している。 MDCは、その権限のもと、鉱業開発と関連したプログラムの実施、投資における実施と 規制の調和、鉱業部門の投資の促進において、政府のあらゆる支部、省、局、機関、施 策の支援を受けることが可能である。 MDCのその他の権限や機能には主に以下のようなものがある。 • 鉱業部門の投資の問題や必要性に関する情報、ガイダンス、指導、解決策を提供 し鉱業投資家を支援する。 • 「フィリピン鉱業の再興の国家政策アジェンダ(National Policy Agenda on Revitalizing Mining in the Philippines)」で掲げられる目標の関連タスクと 達成報告の簡便化を行う。 • 鉱業界の投資関連事項の全般的な見直しを行う。 • 鉱業界の投資障壁に対するタイムリーかつ効果的な解決策を大統領に提言する。 • 使節団派遣やフォーラムの開催などを通じ、鉱業界への投資の促進を図る。 5-2-9. 天然資源鉱業開発公社(NRMDC) 天然資源鉱業開発公社(NRMDC)は、政府の完全所有の公社(DENRの管轄下)であり、 全ての種類の鉱物(主に金、銀、銅、鉄)の探鉱、開発、採鉱、製錬、生産、輸送、貯 蔵、流通、交換、販売、処理、輸出入、取引、宣伝を行う55。 5-2-10. フィリピン鉱業会議所(Chamber of Mines of the Philippines) 採鉱、採石、製錬を行う企業を促進する民間団体であり、1936年に創設された。 5-3. 鉱業法の歴史 植民地時代(パリ条約によって米国の占領下に置かれるまで)のフィリピンではスペイ ン鉱業法と呼ばれる1867年5月勅令が鉱業法として一般に施行されていた。 その後、米国の占領下となった1900~1935年には、“基本法(organin act)”と呼ばれる法 律がフィリピン憲法と見なされ、その一部である1902年7月1日発布議会法(Act of Congress) 55 2003 年 4 月 9 日のフィリピン大統領覚書 - 34 - に従って、国内の島々の土地管理が米国議会によって行われていた。 1902年フィリピン法案には「発見された鉱床または土地の、探査、占有、購入の自由」 といった条項が盛り込まれており「フィリピン諸島の公有地(測量済みのもの、未測量 のものの両方)または米国市民/未測量の島の島民に占有あるいは購入される島の有価値 鉱床は全て、探鉱、占有及び購入が自由に行われるものとする。」と宣言されている。 この法に基づき定められた鉱区は、“特許鉱区(patented claim)”と呼ばれ、その一部 は現在も存続している。特許鉱区は、現代法に基づく鉱業保有地とは異なり、保有期間 は永続的であり、地表権と地下権の両方が伴うものである。 1935年11月15日、フィリピンでは自治領憲法(Constitution of the Commonwealth)であ る1935年憲法の施行が開始された。この憲法では「フィリピンの天然資源は、鉱物資源及 びそれらの埋蔵される土地を含み、国家に属する」と定められている。1936年には、第一 回国民議会で、自治領法(Commonwealth Act)第137号が発布された。この法律では「鉱 区の購入の権利を失った者に対し、鉱業地の貸与のみを行う」といった旨が定められて いる。 1947年、憲法付加令(Ordinance Appended to the Constitution)よって1935年憲法は修 正された(この修正は、今日では“同等権利の修正”として知られる)。これにより、米国の 国民及び企業は、フィリピン国内の天然資源の譲与、探査、開発、加工処理において、他 の外国人や外国企業が規制を課せられる中、1974年7月3日までは(フィリピン国民と)同 等の権利を有することが可能となった。 1973年1月17日、フィリピンでは1973年憲法の施行が開始となった。1973年憲法は、「フィ リピン国内の鉱物資源は全て国家に属する」と定められている点では、1935年憲法と同様 であるが、これに加え、「フィリピン国民は天然資源の探査においていかなる企業とも委 託契約を結ぶことが可能である」といった新条項が定められている。そして、この条項の 施行のために、1974年鉱物資源法令(Mineral Resources Development Decree of 1974) においては、「鉱区が貸与されている者は、その鉱区の鉱物の探鉱、開発、活用におい て、資格保有の企業と委託契約を結ぶことが可能である」と定められることになってい る。 その後、1987年憲法が発布され「100%外資の企業は、鉱物または石油の探鉱、開発、加 工処理の大型プロジェクトにFTAA(財務技術支援協定)の形で参入することが可能であ る」と定められた。 そして同年には、大統領令(EO)第279号が議会で承認され、上記の条項に関連し鉱業 コントラクターと政府との操業分担の基礎となる「生産分配計画」が定められた。 1995年、大統領令(EO)第279号は廃止され現行の鉱業法である共和国法(RA)第7942号 (フ ィリピン鉱業法とも呼ばれる)が施行となった。 5-4. フィリピン鉱業法1995年(The Philippine Mining Act of 1995) フィリピン鉱業法1995年は、フィリピンの鉱物の探鉱、開発、加工処理、保護のシステム を定めるものである。 この鉱業法の下フィリピン共和国の領土及び経済専管水域の土地(公有地、私有 地の両方)に埋蔵される鉱物は全て国家の所有であると定められている。また、 この鉱業法では「国家は環境保全及び(鉱業に)影響を受ける地域社会の権利を 保護した上で飛躍的に成長していくためにも、私企業と共同で、鉱物の探鉱、開 - 35 - 発、加工処理、保護の合理化を促進する責任を担う」と定められている56。 従って、フィリピンの鉱業プロジェクトは全て国家に属し、国家自身によってあるいは協 定に基づく民間鉱業コントラクターへの委託を通じて行われている。 5-5. 鉱業保有地 5-5-1. 有資格者 鉱業権は通常、有資格者のみに付与される。この場合の“有資格者”とは、「鉱業活動の 委託を請け負うことが可能なフィリピン国民の成人、あるいは、鉱業活動のために設立 または権限委託され、鉱物開発の技術及び財源を備え、法律に従う登録を行っており、 かつ、資本の60%以上がフィリピン国民によって保有される57、会社、共同経営事業、団 体、協同組合」を指す。但し、EP(探鉱認可)、FTAA(財務技術支援協定)、MPP(鉱 物加工認可)の申請においては、合法的に設立された外資系法人も “有資格者”と見な される58。 5-5-2. 探鉱認可(EP) 探鉱認可(EP)は、有資格者に、フィリピン国内で鉱業活動の許可されている土地での 探鉱活動を認可するものである59。 探鉱とは以下のような方法を通じての鉱物資源の探査または予想のことである。 • 地質学的調査、地球化学的調査、地球物理学的調査 • 遠隔探査 • 試錐、トレンチング、掘削、立坑、トンネル掘り • その他、鉱物の存在、埋蔵範囲、質、埋蔵量、商業性を確認するための方 法60 5-5-2-1. 探鉱期間と鉱区面積 EPの有効期間はその発効日から2年間である。更新も可能で最初の有効期間も含めた最長期 間は非金属鉱物の探鉱で4年間、金属鉱物の探鉱で6年間である。 56 共和国法第 7942 号第 2 項 57 DENR の省令第 99-34 号の第 9 項“公認株式資本(Authorized Capitalization)”では、以下のように定めら れている。 「省覚書令(DOM)第 99-10 号による“会社、団体、協同組合、パートナーシップ(合名会社)に必要とさ れる、最低公認資本額は 1 千万 PHP、及び、最低資本払い込み額は 250 万 PHP”という定めは、鉱業権の申 請者が、操業者(オペレーター)またはサービス受託業者に事業を委託しているか否かに関わらず、その主申 請者に、適用される。また、申請者が 2 名以上の場合、この規則は申請者 1 人(法人)のみに適用される。 個人が鉱業権の申請を行う場合、本人の財力の証明のために必要とされる最低資金額(銀行預金または与信枠) は 250 万 PHP となる。上記される要求事項は、省覚書令第 99-10 号に従って、鉱業権の申請において強制的 に適用されるものとされる。」 58 DENR 省令(DAO)第 96-40 号第 5 項(cb) 59 DENR 省令(DAO)第 96-40 号第 5 項(cb) 60 DENR 省令(DAO)第 96-40 号第 5 項(ag) - 36 - EPの更新はその保有者がEPの規約条件を全て遵守し、かつ、鉱業法またはその実施細則の いかなる条項にも違反していない場合にのみ可能となる。 EPの有効期間中には、当該の鉱業プロジェクトのF/S(フィージビリティー調査)の実施 とその結果のMGBへの報告が行われなくてはならない。 有資格者のEP申請/保有が可能な鉱区面積は以下の通りである。 a. 陸地の場合-1州につき ⅰ. 個人の場合-20区画(子午線基準)(約1,620 ha) ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-200区画(16,200ha) b. 陸地の場合-フィリピン全体 ⅰ. 個人の場合-40区画(3,240ha) ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-400区画(32,400ha) c. 海洋の場合-フィリピン全体、平均干潮位線より500m以上の沖合 ⅰ. 個人の場合-100区画(約8,100ha) ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-1,000区画(81,000ha) 5-5-2-2. 申請必要事項 EPの申請を行う有資格者は、以下の書類を5部ずつ、所定の手数料を添えて、関連のMGB 地方支所(MGB Regional Office)に提出しなければならない。 a. EP申請書(MGBフォームNo.05-1) b. 探鉱予定地の地図及びスケッチ・プラン 地図及びスケッチ・プランは、縮尺1:50,000のNAMRIA(国家マッピング及び資源 情報局)指定の地形図であり、当該の土地の地理的座標、子午線区域、著しい環 境的特徴を持つ土地、他のプロジェクト地との境界線を示しており、MGBの代理権 限を持つ測地技師によって正式に作成、署名、捺印されたものであること。 c. 2年期間のEXWP(探鉱作業プログラム)(MGBフォーム No.05-4)-ライセンス保 持の鉱山技師または地質学者によって正式に作成、書名、捺印されたものである こと。 d. 2年間のEWP(環境作業プログラム)(MGBフォーム No. 16-1/16-1 A)(陸地探鉱、 海洋探鉱の両方に適用) e. MGBより発行される環境マネジメント/地域社会関係記録証明書(CEMCRR)。申 請者が過去に探鉱/採鉱活動に携わったことのない場合は、Certificate of Exemption(免除証明書)の申請が必要となる。 f. 技術能力の証明(EXWPやEWPの活動に携わる技術担当者の探鉱/環境マネジメント における履歴や実績など) g. 会社、共同経営事業、団体、協同組合のいずれかの場合、その定款並びに付随定 款及びSEC(フィリピン証券取引委員会)または担当の政府機関の発行する登記書 の写し(フォトコピー可)。 - 37 - h. 財力の証明 ⅰ. 個人の場合-現行法に従って正式に証明された資産負債諸表。与信枠、前年 度の所得税支払いの証明。 ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-最新の監査済み財務諸表。前 年度の年次報告書、与信枠、銀行保証、その他の流通証券。 i. 申請者の、承認済み、保留のEPの全てに関する証明 海洋探鉱の場合、以下のような書類の提出や手続きが必要となる。 a. 調査船及びプラットフォームの名前、登録港、重量(t)、種類と等級。外国船を 使用する場合は、その最初の入港予定日と最後の出港予定日を通知し、必要な入 出港手続きの全てを行うこと。 b. NAMRIAの湾岸測地調査部門(Coast and Geodetic Survey Department)による、 「EXWPは、刊行物"Notice to Mariners(海員通達)への最新情報の提供のために 正式登録されている」という証明及び海洋での安全ナビゲーションと事故防止の 徹底のために定期的に実施される安全施策のリスト。 c. 以下の合意 ⅰ. 探鉱に使用される架設、船舶、施設の全ては妥当な距離内で他の全ての船舶 と識別可能であること。 ⅱ. 科学的架設/設備/器具の撤去の際にはその30日前にMGBに通知を行うこと。 ⅲ. (探鉱に使用される)船舶がフィリピンの経済専管水域内にある場合、MGB の担当官、フィリピン湾岸警護官(Philippine Coast Guard)、その他の 関係者が、妥当な時間帯に当該の船舶に乗船する。 探鉱地に申請された土地が複数のMGB地方支所管轄区域にまたがる場合、申請はその探鉱地 面積の最も多い割合を占める管轄区域の支所に対して行われ、その他の支所には申請から3 営業日以内に写しが提出されること。 5-5-2-3. 規約条件61 EPには、以下のような規約条件が含まれる。 a. 探鉱の権利は当該の鉱区内における全ての当事者の有効権、優先権、既存権が 保護された上で行使されるものとする。 b. EP保有者の正式代理62は、探鉱以外の目的においてはその代理人の役目は果たさ ない。 61 DENR 省令(DENR Administrative Order )第 2005-15 号、第 22 項 62 DENR 省令第 99-34 号 (第 2 項の「認可取得者の“正式代理(Duly Authorized Representative)”」)で は、「EP の規約条件に基づく認可取得者の正式代理とは、認可取得者と操業協定またはそれと類似する形態 の協定を、DENR の長官(Secretary)より承認された正式な形で結んでいる、企業またはサービス受託業 者を指す。」と、定められている。 - 38 - c. EPの有効期間は、基本的には当該のEPの発効日より2年間であるが、その後2年間 の更新が可能であり、これを含めて非金属鉱物の探鉱の場合は最長4年間、金属鉱 物の探鉱の場合は最長6年間となる。また、EPの有効期間に関しては更に次のよう な条件が適用される。 ⅰ. 更新は、当該のEP保有者がその規約を遵守しており、かつ鉱業法及びその実 施細則のいずれの条項にも違反していない場合にのみ可能となる。 ⅱ. EPの有効期間(非金属鉱物の探鉱の場合は最長4年間、金属鉱物の探鉱の場 合は最長6年間)に鉱業プロジェクトの実現可能性の証明の提出が不可能な 場合、EP保有者は、更にその2年間の更新をF/S(実現可能性調査)の完了、 鉱業プロジェクトの実現可能性の証明、MAまたはFTAAの申請といった目的の 範囲内において、申請することが可能である。 ⅲ. EPは、鉱業プロジェクトの実現可能性の証明が承認される以前か、MAまたは FTAAの申請が承認される以前のどちらか若しくは両方で、期限失効を迎える 場合、それらの申請が承認されるまでの期間において自動的に有効となる。 d. EPの保有者は、MGBまたはその地方支所の半年毎の検査及び承認(費用はEP保 有者が負担)を受けるために、各期末から30日(暦日)以内に、EXWPの実施及 び経費に関する報告書(調査結果、研究レポート、地質学的レポート/マップ など。宣誓済みのものであること。)をMGBまたは担当のMGB地方支所に提出す る。 ⅰ. EXWPの年間経費予算の超過額は、繰り越されてEPの有効期限内に相殺される ことが可能である。 e. EPの保有者はEXWPの承認から6か月を超過してから30日(暦日)以内と以後は6 か月毎にEXWPへの準拠を示す報告書を提出する。 f. EPの保有者はEPの有効期間において毎年、付与地を一部ずつ(最初の2年間は 20%以上、その後の更新期間は、残り面積の10%以上)譲渡していく(但し、EP の付与地面積が5,000ha未満である場合は、これを行う必要はない)。この譲 渡に関し、EP保有者は譲渡地に関する報告書を地理的報告、地図(1:50,000 縮尺)、分析結果、費用額の詳細を添えてMGB本部または担当のMGB地方支所に 提出する。譲渡後の土地の探鉱費用の下限は、承認済みのEWPに従って決定さ れる。 g. (DENRの)長官またはその正式代理は、EP保有者のパフォーマンスの見直しを 年次に行う。 h. EPの保有者はEPの期限失効または放棄あるいはMAまたはFTAAへの切り替えの 際に、最終的な報告書をMGB本部または担当のMGB地方支所に提出する。この報 告書は信用性のある国際機関の作成した開示報告書との比較が可能で、かつ、 探鉱地での発見事項(サンプルの場所、評価、化学的分析、鉱物の可能性評価 など)、探鉱期間における経費の詳細などを含むものでなければならない。 i. ダイヤモンドビットによる掘削の場合、EP保有者はMGB本部または担当のMGB地方 支所の所長の要請に従って、コアビットの見本の4分の1を同局に提出する。提出 されたコアビットは参考及び安全保管のためにMGB本部または担当のMGB地方支所 - 39 - のコア図書館に保管される。 j. 海洋探鉱は、国連海洋法条約に則り、他の船舶の航海に悪影響を与えず、かつ、 他者の海洋活動(漁獲、養殖、輸送など)との調和の上で行われること。 k. 陸地探鉱は常に環境を保護する方法で行われること。 l. EPの有効期間はその保有者が付与地でのMAまたはFTAAを申請する場合、それら の探鉱期間であると見なされる。 m. EPの保有者はフィリピン鉱業法及びその実施細則に準拠するものとする。 n. EP保有者は、法人である場合、SEC(フィリピン証券取引委員会)に提出した年 次報告書(GIS)の写しを毎年、提出する。 o. MGBまたはその地方支所が適切と捉える他の規則が、盛り込まれる場合がある。
  EPの発行までのフローチャート MGB 地方支所への申請 (MGB のフォーム No.05-1、必要書類を各 5 部、申 請手数料を提出) 事前評価 土地区画 書類評価 探鉱申請地の現状調査と整理 NCIP の認可取得 探鉱申請の公示(掲示、ラジオ発表) 各認可証の取得 最初の評価 MGB 本部の証明 最終評価と認可 番号割り当て、登記、貸与 (MGB 地方支所が行う) - 41 - 5-5-3. 鉱業協定(MA) 鉱業協定(MA)は、政府と鉱業コントラクターとの間で交わされるもので、鉱業コント ラクターはこの協定のもとにその対象となる鉱業地(以下、契約地と呼ぶ。FTAAに基づ く鉱業地も同様)での鉱業活動(鉱物の探鉱、開発、加工処理)の独占権(所有権では ない)を政府より付与される。MAは、以下のような種類に分かれている。 ① 鉱物生産分配協定(MPSA)-政府が鉱業コントラクターに対し、契約地での鉱業活 動の独占権(所有権ではない)を付与し、鉱物の所有者として鉱業コントラクター との生産物共有(鉱物種類、価値などに基づき行う)を行う。鉱業コントラクター は、必要技術、資金、マネジメント、人員を提供する。 ② 共同生産協定-政府が鉱業コントラクターの鉱業活動に対し、鉱物資源を除く物資の 供給を行う。 ③ ジョイント・ベンチャー協定-政府と鉱業コントラクターによってJV会社が設立され、 両者が株式を保有する。政府は持ち株利益の他に総利益に対する分配も受ける。 5-5-3-1. 鉱区面積 有資格者のMA申請/保有が可能な鉱区面積は以下の通りである。 a. 陸地の場合-1州につき ⅰ. 個人の場合-10区画(約810 ha) ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-100区画(8,100ha) b. 陸地の場合-フィリピン全体 ⅰ. 個人の場合-20区画(1,620a) ⅱ. 会社、共同経営事業、団体、協同組合の場合-200区画(16,200ha) c. 海洋の場合-フィリピン全体、平均干潮位線より500m以上の沖合 ⅰ. 個人の場合-50区画(約4,050ha) ⅱ. 会社、団体、協同組合の場合-500区画(40,500ha) ⅲ. EEZ(経済専管水域)の場合-その大部分がMGBの局長(Director)の提言 に基づき、DENRの長官によって定められる。 5-5-3-2. 有効期間 MAの有効期間はその発効日から25年以内と定められているが、その後も同様の規約条件の 下に(但し、政府と鉱業コントラクターの合意の上での協定内容変更は可能)最高25年ま での更新が可能である。 MAに基づく鉱業事業は更新期間も全て消化された後は政府または鉱業コントラクターによ って行われる。事業が鉱業コントラクターによって行われる場合、公開入札の最高入札者 がその事業者となるが、MAの鉱業コントラクターが最高入札者に妥当な経費を弁済すれば その最高入札者と同等の権利を有することになる。 - 42 - 5-5-3-3. 申請必要事項63 鉱物の開発/加工処理とそれに伴う建設及びこれらの作業と並行しての探鉱活動のため にMAを申請する場合は以下の各書類を5部以上、揃えて提出する必要がある。 a. 個人の場合 ⅰ. 将来的な契約地の地図及びスケッチ・プラン。縮尺1:50,000のNAMRIA(国家 マッピング及び資源情報局)指定の地形図であり、当該の土地の地理的座標、 子午線区域、著しい環境的特徴を持つ土地、他のプロジェクト地との境界線 を示しており、(MGBの)代理権限を持つ測地技師によって正式に作成、署 名、捺印されたものであること。 ⅱ. 3年間のDUWP(開発/加工処理作業プログラム)(MGBフォームNo.6-2)-ラ イセンス保持の鉱山技師または地質学者によって正式に作成、書名、捺印さ れたものであること。 ⅲ. 技術能力の証明(DUWPの活動に携わる技術担当者の、鉱業活動/環境マネジ メントにおける履歴や実績など) ⅳ. DUWPを実施する上での財力の証明(昨年度の所得税支払いの証明の写し、250 万PHP以上の銀行預金または与信枠の証明書など) ⅴ. 鉱業プロジェクトのF/S(実現可能性調査)(MGBフォームNo.5-3) ⅵ. MAの申請地における探鉱の最終報告書 b. 企業、共同経営事業、団体、協同組合の場合 ⅰ. 当該の会社/共同経営事業/団体の、定款並びに付随定款、SECまたは担当の 政府機関の発行する正式な登記書あるいはこれらの書類がMGB/地方支所に 正式に登録されているとの証明書。 ⅱ. 将来的な契約地の地図及びスケッチ・プラン。縮尺1:50,000のNAMRIA(国家 マッピング及び資源情報局)指定の地形図であり、当該の土地の地理的座標 /子午線区域、著しい環境的特徴を持つ土地、他のプロジェクト地との境界 線を示しており、(MGBの)代理権限を持つ測地技師によって正式に作成、 署名、捺印されたものであること。 ⅲ. 3年間のDUWP。(MGBフォームNo.6-2)ライセンス保持の鉱山技師または地質 学者によって正式に作成、書名、捺印されたものであること。 ⅳ. 技術能力の証明。(DUWPの活動に携わる技術担当者の鉱業活動/環境マネジ メントにおける履歴や実績など) ⅴ. DUWPを実施する上での財力の証明。(最新の監査済み財務諸表、該当する場 合は、前年度の年次報告書、与信枠、銀行保証、その他、流通証券など) 63 省令(DAO) 96-40, 第 34 項(関連の修正も含む) - 43 - ⅵ. 省令(DMO) 99-10号を(修正法も含め)遵守するとの宣誓供述書。 ⅶ. 鉱業プロジェクトのF/S(MGBフォームNo.5-3) ⅷ. MAの申請地の探鉱の最終報告書 c. 申請者が既存のかつ有効な鉱業リース契約、操業協定、採石認可、ライセ ンス、未完の採鉱/採石区の保有者である場合上記に加えて以下のような書 類の提出(いずれか該当するもの)が必要となる。 ⅰ. 担当の(MGB)地方支所による鉱業/採石権の有効性と存続性の証明。 ⅱ. 採鉱後の土地、廃鉱地、尾鉱地の回復に関する適切な環境報告書及び鉱業活 動の最中に実施される公害防止施策の報告書。 ⅲ. 拡張作業(すなわち、鉱業プロジェクトにおいて当初に認可された作業以外 のもの)に関する環境コンプライアンス証明書(ECC) ⅳ. 鉱業プロジェクトのF/S(MGBフォームNo.5-3)。但し、鉱業活動を既に行っ ている場合は、その詳細、財務諸表(社会面/環境面での経費、納税額、手 数料納付額など。MGBフォームNo.5-3A)を提出のこと。 ⅴ. 鉱区の、承認済みの調査計画 上記の申請が受理されたら、申請者はその承認を受ける前にECC、環境保護促進プログラム (EPEP)、環境マネジメント、地域社会関係記録証明書(CEMCRR)、承認済みの調査計画 提出が必要となる。 - 44 - MAの発行までのフローチャート MGB 地方支所への申請 (MGB のフォーム No.061、必要書類各 5 部、申請手 数料を提出) 事前評価 土地区画 書類評価 鉱物探査地の現状調査と整理 NCIP の認可取得 MA 申請の公示(掲示、ラジオ発表) 各認可証の取得 MGB 地方支所の最終的な評価 DENR 長官局による最終的な評価と認可 MGB 本部による番号割り当て MGB 地方支所による登記と、契約地の貸与 MGB 本部の最初の見直し - 45 - 5-5-4. 財務技術支援協定(FTAA) 財務技術支援協定(FTAA)は大型の鉱物探鉱、開発、加工処理において政府と鉱業コント ラクターとの間で交わされる協定で対象の鉱物は鉱物全般(金、銅が主)である。ただし、 セメント原料、大理石、花崗岩、砂、砂利、建築用資材には適用されない。FTAAは、“大型” の鉱物プロジェクトを対象としたものであり、鉱物の開発や加工処理及び関連の建設事 業に対する鉱業コントラクターの資本投資額は50百万US$以上でなければならない。 5-5-4-1. 適用鉱物 FTAAは金、銅、ニッケル、クロム、鉛、亜鉛などといった鉱物の探鉱、開発、加工処理に 適用される。セメント原料、大理石、花崗岩、砂、砂利、建設用資材は対象には含まれな い。 5-5-4-2. 契約地面積の上限 有資格者のFTAA申請/保有が可能な契約地面積(フィリピン全体が対象)の上限は以下 の通りである。 • 1,000区画(子午線基準)(約81,000ha)(陸上のみ) • 4,000区画(約32万4,000ha)(海洋のみ) • 1,000区画(陸上)及び4,000区画(海洋) 5-5-4-3. 有効期間 FTAAの有効期間はその発効より25年以内とされているが法準拠とFTAAの当事者間の合意に 基づいた上で最長25年間の更新が可能である。有効期間においては鉱業活動の各段階が以 下の期間内に完了されることが必要である。 探鉱-FTAAの発効日より最長で2年間である。以下の条件を満たしていれば、更に2年間 の延長が可能である。 • 更新に妥当性がある。 • 2年間のEXWP及びEWPの成果に関する包括的な技術的報告(前者に関する報告書は ライセンス保有の鉱山技師または地質学者、後者に関する報告書はEO(環境担当 官)の署名入りであること)を提出する。 • 探鉱期間の監査済み財務諸表を提出する。 • 2年間のEXWP(探鉱作業プログラム-MGBフォームNo.5-4を使用、ライセンス保有 の鉱山技師または地質学者によって正式に作成、署名、捺印されたもの)を提出 する。 • EWP (MGBフォームNo.16-1またはMGBフォームNo.16-1Aを使用)を提出する。 • (鉱区の)譲渡報告書を提出する。 - 46 - • DENR、MGBまたはその地方支所より要請される、その他の書類を提出する。 鉱業コントラクターは、探鉱期間の延長を希望する場合は現行の探鉱期間が終了する前に その申請を上記の書類を添えてMGBに提出し、MGB地方支所に写しを提出する必要がある。 探鉱期間の終了後、FTAAは以下のような段階で実施される。 事前F/S(妥当であると認められた場合)-探鉱期間の終了後から最長2年間 F/S-探鉱、事前F/Sの終了後または鉱業プロジェクトの実現可能性の宣言から最長2年間 開発、建設、鉱物の加工処理-FTAAの残り期間 鉱業コントラクターに必要性が生じた場合、同一の契約地において上記の段階を同時に行 うことも可能である。 鉱業プロジェクトのF/Sの評価では以下のような事項が厳しく吟味される。 • 鉱山寿命 • 鉱物の品位のマネジメント • 鉱業活動の手順 • 環境保護施策 • 政府への配当の支払い能力及び環境/地域社会に関する費用の負担能力 政府への配当の支払い能力の保証は政府機関から奨励金を受けている鉱業プロジェクトに おいても必要である。鉱山寿命に関しては、政府が投資配当を確実に得るためにも(費用 回収期間は最長5年間)利益創出期間が10年以上でなければならない。 5-5-4-4. 申請必要事項 FTAAの申請においては所定の申請用紙、手数料、FTAA案件書8部及び以下の書類の各5部を 担当のMGB地方支所に提出することが必要である。 a. 必須書類 ⅰ. 定款並びに付随定款、SECまたは担当の政府機関の発行する申請者の正式な 登記書あるいはこれらの書類がMGB/地方支所に正式に登録されていること の証明書。 ⅱ. 将来的な契約地の地図及びスケッチ・プラン。縮尺1:50,000のNAMRIA(国家 マッピング及び資源情報局)指定の地形図であり、当該の土地の地理的座標 /子午線区域、著しい環境的特徴を持つ土地、他のプロジェクト地との境界 線を示しており、(MGBの)代理権限を持つ測地技師によって正式に作成、 署名、捺印されたものであること。 ⅲ. 2年間のEXWP(MGBフォームNo.5-4)。ライセンス保持の鉱山技師または地質 学者によって正式に作成、書名、捺印されたものであること。 ⅳ. 技術能力の証明(EXWPの活動に携わる技術担当者の鉱業活動、環境マネジメ ントにおける履歴や実績など)。 - 47 - ⅴ. EXWPを実施するための財力の証明(最新の監査済み財務諸表、該当する場合 は、前年度の年次報告書、与信枠、銀行保証、その他、流通証券など)。 ⅵ. 以下の申告を含めた、DENR備忘録法令(DMO) 第99-10号の定め(修正も含 め)への準拠の宣誓供述書。 • 申請者が他に付与された、あるいは申請手続き中である、鉱業認可、鉱 業協定のリスト(州単位での鉱区面積/場所の詳細を含むこと)。 • 申請者の株主が70%以上の授権資本を保有している、その他の鉱業権申請 者、鉱業コントラクター、鉱業認可保有者のリスト(各者の州単位での 鉱区面積/場所の詳細を含むこと)。 b. 申請の受理後から申請承認までの期間における提出書類 ⅰ. 政府認可の担保会社または金融会社の作成した、財務保証、契約履行保証、 信用保証状(LC)、流通証券のいずれか。名宛人はフィリピン政府(DENR長 官の通知によって支払が行使される)、額面は申請者の年度経費負担額(通 貨はBSPへの譲渡が可能な外貨またはPHP)となる。 ⅱ. 環境マネジメント/地域社会関係記録証明書(CEMCRR)またはCertificate of Exemption(免除証明書) ⅲ. EWP(MGBフォームNo.16-1または16-1A) ⅳ. 承認済みの調査計画 ⅴ. 環境コンプライアンス証明書(ECC) ⅵ. 環境保護促進プログラム(EPEP)(MGBフォームNo.16-2) ⅶ. SDMP(社会開発/マネジメントプログラム) ⅷ. NCIPの発行する、以下の証明書。 • (IP地域ではない場合)申請された鉱区は、先祖伝来のあるいは領有地 ではないとの証明。 • ICC/IPによってFPIC(自由意志による事前承諾)が発行されていると の、証明。 ⅸ. その他、MGBから提出を要請される書類。 c. FTAAの承認後からFTAAの登録までの期間における提出書類 ⅰ. 鉱業コントラクターが4百万US$以上、あるいはそれと同額のフィリピンペ ソ貨幣の授権資本を有するとの証明。 d. 鉱業プロジェクトの実現可能性の宣言の承認に必要とされる以下の書類。 - 48 - ⅰ. 鉱業プロジェクトのF/S ⅱ. 3年期間のDUWP(開発/加工処理作業プログラム) ⅲ. 技術能力の証明(DUWPの活動に携わる技術担当者の鉱業活動、環境マネジメ ントにおける履歴や実績など) ⅳ. DUWPを実施する上での財力の証明(最新の監査済み財務諸表、該当する場合 は、前年度の年次報告書、与信枠、銀行保証、その他、流通証券など)。 - 49 - FTAAの発行までのフローチャート MGB 地方支所への申請 (MGB フォーム No.07-1、FTAA 提案書各 8 部、必要 提出書類を各 5 部、申請手数料を提出) 事前評価 MGB 地方支所による登録と、契約地の貸与 土地区画 書類評価 探鉱地の現状調査と整理 NCIP の認可取得 FTAA 申請の公示(掲示、ラジオ発表)各認可証の取得 MGB 地方支所の最初の評価 DENR 長官の最終的な見直し Negotiating Panel(交渉小委員会)と申請者との交渉 Negotiating Panel(交渉小委員会)の委員長による承認 MGB 本部の最終的な査定 大統領の承認 MGB 本部による番号割り当て - 50 - 5-5-4-5. 規約条件 FTAAには、以下のような規約条件が含まれている。 ・FTAAの有効期間においては鉱業コントラクターが探鉱期間及び事前F/S期間に以 下の額以上の費用額を負担するといった約束が宣誓書の形式で行われる。 プロジェクト年度 US$/ヘクタール 1 2 2 2 3 8 4 8 5 18 6 23 また、鉱業コントラクターは50百万US$以上(フィリピンの鉱業コントラクター の場合は、これと同価値のフィリピンペソ額)を当該の契約地におけるインフラ 機構及び開発に出資することが義務付けられている。尚、FTAAの付与の事前に仮 探鉱期間、特別探鉱期間が付与された場合、それらに掛かる費用はFTAAの探鉱期 間の初年度の経費に含まれることになる。 鉱業コントラクターの年度費用がその下限額を超えた場合、超過分は翌年度の費用 下限額から差し引かれることになる。逆に、費用が費用下限額に満たなかった場合、 それがMGBまたはその地方支所によって正当な理由によるものであると認められれ ば、不足分が翌年度に繰り越されることが可能となる。 ・鉱業コントラクターはFTAAの下では当該の契約地や契約鉱区のいかなる所有権も取 得するものではないが、これによって合法的に土地/地表の買収を行う当人の権利が 侵害されるものではない。 ・鉱業コントラクターは、FTAAの目的を迅速かつ効率的に達成する上で必要とされる 財力、管理能力、技術能力、技術を保有する、あるいはそれらの入手が可能な状態 にあり、かつ、それらを期毎の作業プログラム及び予算に基づきタイムリーに活用 をすることを理解している。そして、妥当な場合には、2年間(DENR長官の関連細則 に基づく年次見直しによっては、更に2年間の延長も可能)の探鉱期間を設けるとの 陳述と保証。 ・申請者は、FTAAを結ぶ上での資格の全てを有し、欠格要素は全く有さないとの陳 述と保証。 ・鉱業コントラクターは、鉱業法の実施細則(省令第96-40号)の第60項に従って、契 約地の譲渡を行うものとするとの条項。 ・鉱業コントラクターは、契約地や契約鉱区での鉱業活動における資金調達に関し、 持ち株の売却、本国への利益送還が認められているフィリピン法人への外資投資、 現地業者による信用貸し、特定の事業目的による認可済み金融スキームの利用を除 - 51 - き、フィリピン国内では(フィリピンペソにおいてもその他の外貨においても)そ れ(資金調達)を行わないとの陳述及び保証。 ・鉱業活動はフィリピンの鉱業法及びその実施細則に基づき行われるとの条項。 ・鉱業コントラクターは、不可抗力の場合を除き、FTAAの計画及び作業プログラムで 定められた期間内に鉱業活動を完了させるとの条項。 ・鉱業コントラクターは物品やサービスの調達においては、質、価格において、(海 外産と)同等のものがフィリピン産にある場合はそれらを優先し、資格保有の建設 企業、建設資材、技能、道路建設、輸送の下請け、一般家庭機器、家具、食料に関 しては特にこれを遵守するとの条項。 ・鉱業コントラクターは鉱業関連の全ての雇用において、フィリピン人の有資格者の 優先的な雇用及びこれらの被雇用者に対する技術の伝達の義務を負うとの条項。 ・鉱業コントラクターは性差別を行わず、女子従業員が自身の権利と利益に関わる 方針や意思決定に参加する権利を尊重するとの条項。 ・鉱業コントラクターは、現在利用が可能な公害防止技術や設備の中で最良のもの を採用し、環境保護、鉱業跡地及び鉱山廃棄物、粉砕屑またはその他の汚染や破 壊によって打撃を受けた土地の回復の促進をEMB(環境マネジメント局)やDENR地 方支所との調整の下にかつECC及び大統領令(PD)第984号に従って行うとの条項。 ・鉱業コントラクターは鉱業活動に関する年次報告書及び地質、会計、その他鉱業 活動の関連データをフィリピン政府に提出し、これらがフィリピン政府の調査に 使用されることを受諾するとの条項。 ・鉱業コントラクターは鉱物/副産物の処理を市場最高値で行うことが義務付けられる が政府によって妥当性が認められれば、他の売買よりも鉱物価格が安値となるよう な、または譲歩的な契約条件となるような長期販売契約、外貨為替ヘッジ、コモデ ィティヘッジ契約などの交渉を行う権利も有する。但し、このような売買取引を行 う場合、鉱業コントラクターはMGBにその取引書の写しを提出のこと。提出の詳細は MGBと鉱業コントラクターの間で守秘されるとの条項。 ・FTAAの規約条件の解釈及び行使に関する協議及び調停を設けるとの条項。 ・鉱業コントラクターは、現行の法律、規則、法規に従って、手数料、租税、ロイヤ ルティ、配当、その他の手数料の支払いを行うとの条項。 ・外国人の雇用は非常に専門的な訓練と経験が必要とされ、更に現行の法律規則、法 規の下に認可が必要とされるような技術的職種のものに限られるとの条項。 ・外国の技術が使用される場合及び外国人が重役に起用される場合は全て、その代行 者を養成するプログラムが実施されるとの条項。 ・鉱業コントラクターは、労働、安全、保健の規格に関し、それらを法律、規則、法 規と照らし合わせて確認を行うとの条項。 - 52 - ・鉱業コントラクターは、契約地や契約鉱区のみで鉱業活動を行い、他の鉱業コント ラクター、土地賃借人、操業者、鉱業認可保有者の権利を侵害しないものとすると の条項。 ・鉱業コントラクターは地域社会、特にICCの権利、慣習、伝統を認識及び尊重する との条項。 ・鉱業コントラクターは、鉱業法の実施細則(省令第96-40号)の第14章に基づき、 鉱区のまたはその近隣の地域社会の開発、地球科学、鉱業技術に貢献するとの条 項。 ・鉱業コントラクターはEPEP及び年次EPEPに基づく義務(鉱業法の実施細則である省 令第96-40号の第171項に基づく年次環境経の割り当てなど)を遂行するとの条項。 ・鉱業コントラクターは、最も適切でかつ効率的な採鉱や加工技術を使用するとの条 項。 ・鉱業コントラクターは探鉱作業をFTAAで定められた範囲内の土地で認可済みの作業 プログラムに基づき行う。作業プログラム及び関連経費に20%以上のマイナス偏差が 生じた場合はMGB局長またはMGB地方支所の所長の認可を得るとの条項。 ・鉱業コントラクターはFTAAの認可後、MGB本部または担当のMGB地方支所に対し、探 鉱活動の進捗報告書(所定の様式を使用のこと)並びに地質学的、地球物理学的、 地球化学的なデータ(縮尺1:50,000以上の地図に示されていること)を毎年及び鉱 業の活動とその達成事項の報告を四半期毎に提出のこと。また、鉱業コントラクタ ーは探鉱期間の終了時において、探鉱活動の詳細なリスト及び関連経費内訳の最終 報告書を契約地の縮尺1:50,000の地質地図(国際規格であること)を添えてMGBま たはその地方支所に提出しなければならないとの条項。 ・FTAAは鉱業コントラクターがFTAA規約に違反した場合あるいは鉱業法の実施細則 (省令第96-40号)第230項で定められる理由が生じた場合、無効、廃止、解約と なるとの条項。 ・FTAAが無効、廃止、解約となった鉱業事業は鉱業法の実施細則(省令第96-40号) の第68項に準拠していれば、操業の残り期間において、最低費用額の規則に従う必 要はない。 ・鉱業コントラクターはFTAAを解消した場合も金融、環境、法律、財務に関する義 務(FTAAの有効期間にフィリピン政府との間で生じたであろう義務も含む)のい かなるものからも免除されないとの条項。 ・鉱業コントラクターに鉱業プロジェクト資金を融資した金融機関は当該の鉱業コ ントラクターの返済不履行に備え、FTAAの管財人を指名する権利を持つ。但し、 管財人は有資格者(Qualified Person)であり、指名は大統領の事前認可の上で 行われるとの条項。 ・鉱業コントラクターは当人に適用される鉱業法の条項実施細則の全てに準拠すると - 53 - の条項。 ・法人の鉱業コントラクターはSEC(フィリピン証券取引委員会)に提出した年次報告 書(GIS)の写しを毎年、提出しなければならないとの条項。 ・鉱業コントラクターは 1991年 地 方 政 府 法 ( The Local Government Code of 1991)及び共和国法(RA)第7160号の関連条項に従って、EXWPの実施前におけるサ ングニアン(地方政府の評議会や議会)からの協議またはプレゼンテーションの要 請への対応及び開発及び鉱物の加工処理におけるサングニアンの事前認可の取得を 実施しなければならないとの条項。 ・フィリピン憲法、鉱業法及びそれらの実施細則に整合し、かつDENRが国益及び公益 となると見なすその他の規約。 ・また、DENRは実施細則への準拠または安定したFTAAの財制度の確立に必要とされる ような規則、法規、ガイドラインを制定または発布することがある。 5-6. 鉱業プロジェクトの財制度 鉱業開発は地方政府及び国家政府に富をもたらすものである。鉱業及び鉱物加工に対す る賦課金の中で最も一般的なものは租税及び手数料であり、以下に直接納入される。 • 国家政府(法人税、消費税、ロイヤルティなど) • 地方政府(地方事業税、地域社会税など) • フィリピン国民(土地所有者、土地所有権保持者、IPへのロイヤルティ) 一方、間接税には燃料税、輸入燃料への関税、源泉税などがある。租税及び手数料の税/賦 課率は内国歳入法(NIRC)、フィリピン税関及び関税法(Customs and Tariff Code of the Philippines)、鉱業法1995年(Mining Act of 1995)及び地方政府の税法などで定め られている。事務手数料は担当の政府機関によって管理されている64。 MAの下に鉱業コントラクターが政府に納める配当額は、MPSAの場合を除き、以下の事項 を考慮の上で、政府と鉱業コントラクターの間の交渉によって定められる。 • プロジェクトの資本投資 • リスク • プロジェクトの経済的貢献 • 協定の各当事者に、公正かつ公平な分配をもたらすようなその他の要素 フィリピン政府は協定の当事者間での合意の上で以下のような補償を求める権利を有する。 • 鉱業コントラクターの所得税 • 消費税 • 鉱業法で定められる特別手当(脚注66参照) • 鉱業コントラクターの海外株主への配当または利息に対する、源泉税 64 2006 年 3 月にロンドンで発刊された Mining Journal の特別号 7 ページ目参照 - 54 - • 現行法に基づくその他の租税、手数料の全て - 55 - 5-6-1. MPSA財政負担 MPSA及びFTAAに基づく鉱業コントラクターの財的負担は以下の通りである。 MPSAに基づく財的負担=政府への基本的配当+他租税及び手数料 (1)政府への基本的配当 MPSAによる政府への基本的配当とは当該の事業によって生産された鉱物に掛かる 消費税65のことである。 (2)その他租税/手数料 a. 国税/国家手数料 ⅰ. 所得税 ⅱ. VAT(付加価値税) ⅲ.(埋蔵地での)鉱物に対するロイヤルティ ⅳ. キャピタルゲイン税 ⅴ. 海外株主の受け取る融資利息に対する税 ⅵ. 海外株主の受け取る配当に対する税 ⅶ. 印紙税 b. 地方税/地方手数料 ⅰ. 事業税 ⅱ. 不動産税 ⅲ. 登記税 ⅳ. 職業に関する手数料 ⅴ. 地域社会税 ⅶ. その他地方税 c. その他支払い ⅰ 鉱業法で定められる特別手当66 ⅱ ICCへのロイヤルティ 参考:65 共和国法(RA)第 7790 号-内国歳入法(修正も含む)第 151 項(A)の修正法であり、鉱物(金 属、非金属)及び採石資源への消費税税率の減率が定められている。 66 DENR省令(DENR Administrative Order)第94-60号第5項(c)では、「“特別手当(Special Allowance)” とは土地所有権保持者(Claim Owner)または地表権保有者(Surface Right Owner)への支払い、 特に大統領令(PD)第463号(鉱物埋蔵地の管理や処理の近代的システム及びそれらの土地の開 発や探査の促進及び奨励が、定められている)及び大統領令(EO)1987年第279号(環境自然資源 長官に、探鉱、鉱物の開発や加工処理に関する、JV、共同生産、MPSAの交渉や締結及びこれらのよう な協定または大型の探鉱/開発/加工処理への外資企業の技術/財務支援に対するガイドライン設置の権 限を与えるものである)で定められる、移行時期における支払いのことである。」と定めている。 - 56 - 5-6-2. FTAA財政負担 FTAAによる財的負担=政府への基本的配当+その他の政府への配当 5-6-2-1. 基本的配当-直接税/手数料 a. 国税/国家手数料 ⅰ. 所得税 ⅱ. 鉱物への消費税 ⅲ. VAT(付加価値税) ⅳ. (埋蔵地での)鉱物に対するロイヤルティ ⅴ. キャピタルゲイン税 ⅵ. 海外株主の受け取る融資利息に対する税 ⅶ. 海外株主の受け取る配当に対する税 ⅷ. 印紙税 b. 地方税/地方手数料 ⅰ. 事業税 ⅱ. 不動産税 c. 登記手数料 ⅰ. 職業に関する手数料 ⅱ. 地域社会税 ⅲ. その他地方税 d. その他支払い ⅰ. 鉱業法で定められる特別手当 ⅱ. ICCへのロイヤルティ 5-6-2-2. 追加的な配当 鉱業法規によって定められた特定の条件に応じて徴収される。徴収対象額の算出方法は以 下のいずれかとなる。 (1) NM(正味鉱業利益)67の場合 NM(正味鉱業利益)=GO(総利益)-DE(控除経費) GO=当該の鉱区での鉱物または鉱物製品の内国歳入法で定められる実際の市場価値 DE=鉱業コントラクターが鉱業活動において適正にかつ必要性に基づき直接負担する 正式経費 67 省令(DAO)第 99-56 号、第 3 項(g) - 57 - 正式経費68には以下が含まれる。 a. 鉱業活動、鉱物の粉砕、輸送、取り扱いの経費 b. 一般/事務経費 c. プロジェクトに関連した作業に伴い発生する、コンサルティング経費 d. 環境経費 e. 鉱区のあるいはその近隣の地域社会の開発費用(地球科学的/航業技術の開発も含 む) f. 土地所有権の保持者/地表権保有者へのロイヤルティ支払い g. 探鉱継続/開発経費 h. 海外融資への利息経費 • 政府の租税/手数料 (2) NC(正味キャッシュフロー)69の場合 正味キャッシュフロー=GO(総利益)-DE(控除経費)+IPL(融資利息) -UPOE(未回収操業前経費)-OCE(継続的資本経費) 68 省令(DAO)第 99-56 号の第 3 項で定められる通り。 69 省令(DAO)第 99-56 号第 3 項(g) - 58 - (3) EP(超過利益)70の場合 NIAT – (0.40 X GO) 超過利益= 1 –ITR NIAT = 税引き後正味利益 GO =総利益 ITR =所得税率 5-6-3. 費用回収 費用回収とは、5年以内にPOE(操業前経費)の全てを回収することである。FTAAにおける 政府の配当徴収は、鉱業コントラクターがPOE、EDP(探鉱/開発費用)の回収を全て終えた (5年以内であること)後に開始される71。 鉱業コントラクターの回収対象となるPOEは、以下の費用となる72。 a. 採鉱/探鉱保有地/協定の買収、維持、管理 b. 探鉱、鉱物評価、F/S、環境調査、生産、採鉱、粉砕、鉱物加工、鉱業地の回復 c. 鉱物の保管、取り扱い、輸送、設備、販売 d. 契約地内での鉱業活動に関する開発 e. 契約地外での、鉱業活動に必要とされる開発 f. 政府への租税、手数料の支払いの全て g. LGU(地方政府)への支払い及びインフラ機構に対する費用負担 h. 土地所有者、地表権保有者、土地所有権保持者(ICCなど)への支払い i. 鉱業コントラクターの、「フィリピンの国家開発への貢献」、「フィリピン国 民の技能養成」といった義務を遂行するための費用 j. 鉱業活動に直接的に関連するコンサルティング費用(フィリピン国内、フィリ ピン国外におけるものの両方を含む) k. 鉱業地での事務所の設置及び管理の費用(鉱業活動に充当され、かつ、鉱業コン トラクターの義務遂行に関連しているフィリピン国内で発生した管理費用など) l. 金融関連の費用-特にフィリピン国内外での融資利息(以下の負債資本比率に従 う) 70 省令(DAO)第 99-56 号第 3 項(g) 71 省令(DAO)第 96- 40 号、第 214 項 72 省令(DAO)第 99-56 号第 3 項(f) - 59 - •200百万US$以上の投資→8:1 •200百万US$未満50百万US$以上の投資→5:1 但し、利息率は、当該の融資と類似した金融取引における一般的な国際利率を超過しな い率とする。 - 60 - 5-7. 鉱業税のシステム 5-7-1. 一般税のシステム(法人) フィリピンの法人税制度の一般的な枠組みは、内国歳入法(以下、税法)によって定めら れている 。この法律の下、フィリピン国内で設立された会社はフィリピンの国内法人 (domestic corporation)であると見なされる。 国内法人には、共同経営事業(partnership-設立や組織の形態は問わない)、合資会社 (joint-stock company)、共同出資口座(joint account)、団体(association)、保 険会社(insurance company)が含まれる。一方、一般の専門共同経営事業、フィリピン政 府との操業/コンソーシアム協定に基づき、建設請負、または、石油、石炭、地熱、その他 エネルギー源の操業を目的に設立された、 JV(合弁会社)またはコンソーシアムは国内法 人には含まれない。 5-7-2. 所得税 国内法人は、通常、フィリピン国内及び国外での課税所得に対し、年間35%の所得税を課さ れる。課税所得は、税法で指定されている総所得から、やはり同法によっ定められる控除 額を、差し引いたものである。総所得には、取引または事業によって発生した所得、不動 産取引、利息、賃貸、ロイヤルティ、配当などによって得られる利益が含まれる。一方、 控除額として認められるものには、通常/必要経費、利息、納税、損失、未回収負債、減価 償却、慈善活動費用、寄付金などがある。 フィリピンでは2009年1月1日より、国内法人のフィリピン国内外での所得に課せられる所 得税の税率が30%に引き下げられる予定である。 また、税法では、通常の税率で法人税を納める国内法人または居住者扱いの外資系企業に、 MCIT(最低法人所得税)の納税を義務付けている。この所得税は、総所得(Gross Income) に対して2%の税率が税年度末に課税されるもので、以下のような場合にのみ適用される。 • 企業の課税所得が、ゼロまたはマイナス計上である場合。 • 企業に掛かるMCITの額が、通常の所得税の額を上回る場合。 税法の下、MCIT額が通常所得税額を超過した場合、それを年ベースで繰越し、(超過発生 より)3年以内で通常所得税と相殺することが認められている。 税法の下、MCTIの課税額を計算する上での総所得(Gross Income)は、総利益から売り上 げ戻り高、割引、販売済みの物品/サービスの費用などを差し引いたものであると定義付け られている。販売済みの物品/サービス費用には商品の生産及び輸送に係る事業経費の全て が含まれる。 MCITの課税は、企業の事業開始年度、すなわち、BIR(フィリピン国税局)への登録年度よ り4年目から開始される。 - 61 - 5-7-3. 鉱業会社の税控除 鉱業コントラクターは税法の下、事業経費の他にも鉱業活動に使用した資産の減価償却額 (計算方法は、以下を参照)を課税所得から控除することが可能である。但し、これを行 う鉱業コントラクターは、その開始の際にBIRへの通知を行うことが必要である。 減価償却額の計算方法 • 耐用年数が10年以下の場合-通常の減価償却率を適用。 • 耐用年数が10年を上回る場合-5年以上耐用年数内で償却を完了。 また、鉱業会社は税法の下、財務省(DOF)の規則/法規(BIR長官の提言に基づき、定めら れる)による減耗償却方式で計算された減耗費または割賦償却費を、課税所得から控除す ることも、可能である。但し、これらの控除額は資本投資額を超えてはならない。そして、 商業規模の生産が開始された後に行われる探鉱/開発における無形掘削費用は、以下のよう な方法で課税控除されることが、可能となる。 • 経費が生産を行わない井戸/鉱床の掘削に伴うものの場合-経費の発生した年度 に控除する。 • 経費が、契約地での生産井戸/鉱床の掘削に伴うものの場合-経費の支払または発 生年度に全て控除する。または、資産計上/割賦償却を行う。 ある年度において、課税所得からの控除に計上された、鉱物の探鉱、掘削、開発に伴う無 形掘削費用は、同年度の減耗償却費を算出するための調整ベースには含んではならない。 フィリピン税法の下、鉱業会社は、課税所得の算出において、探鉱日付をもって累積され たあるいは課税年度に支払われたまたは発生した探鉱/開発費用を費用として控除するか、 または減耗償却費の調整ベースとして控除するかの選択が可能である。但し、この選択は 変更が不可能であるので、納税年度が変わっても継続して適用していかなければならない。 控除額は、鉱業活動の正味所得(税優遇措置による所得は含まないこと)の25%までと定 められているが、この25%を超過した控除対象費用額は、控除が完了するまで翌年に繰り 越すことが可能である。 上記の控除において、「鉱業活動による正味所得」とは、鉱業活動(操業)の総所得から、 鉱業活動に必要または関係のある控除額(採鉱、粉砕、販売に伴う費用額、鉱業活動に直 接使用された資産の減価償却費など)を差し引いたものである。また、「探鉱費用」とは、 鉱山/鉱床の開発前の段階で、原鉱またはその他の鉱物の鉱床の存在、場所、範囲、質を 確定するために発生したまたは支払われた費用を指す。そして、「開発費用」とは鉱山ま たはその他の自然鉱床の開発の段階において発生したまたは支払われた費用のことであ る。 正味営業損失(優遇措置による恩恵額は含まずに算出)は、操業開始後10年間においては その発生年度から5年の間に課税所得から控除することが可能である。この控除は、損失 の発生した年の翌年に全額計上され、その額が課税所得額よりも上回る場合は残り4年間 において同じような方法(全額計上→超過額は翌年に繰り越し)で行われていく。 - 62 - 5-7-4. 源泉税73 フィリピンの源泉税には、最終源泉税と相殺可能源泉税の2種類がある。 5-7-5. 最終源泉税 最終源泉税による納税は、納税者の申告所得額に対して源泉徴収された税金の最終的かつ 全額の支払いとして見なされる。この場合、所得税の支払義務は、所得の支給者、すなわ ち所得税の源泉徴収者が負うことになる。従って、所得税の源泉徴収の不履行または不足 が生じた場合、不足分の納税の義務は、所得支払者/源泉徴収者が負うことになる。そして、 所得受給者は源泉徴収所得に関する納税申告を行う必要はない。 最終源泉税は、フリンジベネフィット、賞与、当選金、利息、ロイヤルティといった、最 終税が適用される所得、配当、不動産売却に伴うキャピタルゲイン及び証券取引市場以外 での証券売却などによる所得に適用される。 5-7-6. 相殺可能源泉税 相殺可能源泉税は、源泉徴収された税額が所得受取者の納税額と同額となることを目的と するものである。すなわち、このシステムの下では、納税者が税法の定めに従って所得税 の納税申告を行い、実際の所得税が源泉徴収額を上回る場合はそれを支払う義務を負うこ とになる。 拡大源泉税(Exppanded Withholding Tax)の適用される所得及び補償所得(Compensation Income)に対する源泉税は相殺可能源泉税の性質を持つ。 5-7-7. 賃金に対する源泉税 賃金の源泉税は、雇用者と被雇用者の間で発生する所得に適用される。この場合、雇用者 が従業員の所得税を源泉徴収しBIRに納税する。 従業員の所得税を源泉徴収する雇用者は全て当該の従業員に対し、支払い賃金額とその源 泉税額の明細を渡すものとする。 5-7-8. 鉱業法に基づく先住民(IP)へのロイヤルティ74 鉱業法の下、先祖伝来の土地の鉱業活動への利用は当該の土地に関連するICCの事前承諾が 必要であり、それが得られた際、鉱業協定の当事者には、ICCへのロイヤルティ支払いの義 務が発生することになる。 IPは、先住民権法1997年(IPRA)の下、以下のような権利を有する。 • 領域内の天然資源を管理及び保護し、次世代のためにそれらを発展させる権利。 • 領域内で発見された天然資源の配分及び処理によって得られる利益を受益及び共 有する権利。 • 国家/慣習法に従う生態系及び環境の保護施策の徹底のために、領域内での天然 資源の探査の規約条件を交渉する権利。 • 先祖伝来の土地に影響を及ぼすようなプロジェクト(公共、民間の両方)の計 73 参考:Joven L. Estacio、Ranato R. Pasimio1999 年共著「Principles of Taxation (税制度原則)」- Comprehensive Tax Reform Act of 1997(包括的税改正法 1997 年)に基づき著されている。 74 Isagam Cruz 対 DENR 長官 G.R 第 135385 号 2000 年 12 月 6 日 - 63 - 画及び実践に関し、情報を受理し、知的参加をする権利。また、このようなプ ロジェクトによって受けた被害の持続の可能性がある場合はそれに対する公正 かつ公平な補償を受ける権利。 • 上記のような権利への干渉、阻害、侵害の防止を目的とした政府施策を受ける 権利。 規約条件の交渉の権利は、天然資源の探査に関するものに対してのみ発生する。この場合、 「探査(すなわち探鉱)」とは、鉱物資源の探査や予想、鉱物資源の存在の確定、利益取 得を目的とした採鉱の実現性の確定といった範囲に限られる。探鉱は、準備的な鉱業活動 であるので、フィリピン憲法によって国家に属すると定められる天然資源の「探鉱、開発、 処理」の全過程と同等のものとは見なされない。 国家は、先祖伝来の土地に埋蔵される天然資源の利用のための民間企業との共同生産、JV、 生産共有協定への参加から排除されないものとする。 鉱業コントラクター及び鉱業権保有者は、鉱業法の実施細則の下、鉱物保護区から採取ま たは生産される鉱物/鉱物製品の市場価格の5%以上の額をロイヤルティとして他の鉱業税 とは別にMGBに納入する必要がある。鉱物保護区での鉱物資源の開発または加工処理に対し てフィリピン政府より徴収されるロイヤルティ、事務手数料、通関手数料、探鉱手数料、 その他手数料の合計額の10%は、MGBに預託金として納められ、政府所有の他の鉱物保護区 での探鉱、開発、環境マネジメントの特別プロジェクト及び管理費用に充当される(政府 の受託銀行に預託)。 5-7-9. 付加価値税(VAT) フィリピンでは税法の下、以下を行う法人、自然人の全てに付加価値税(VAT)が賦課され る。 • 取引または事業 • 販売 • 物々交換 • 交換 • 物品または資産のリース • サービスの提供 • フィリピンへの物品輸入 VATは通常、物品、資産、サービスの販売に課税されるもので一般的な税率は12%である。 物 品販売の場合、 “総販売価格”(購入者が物品/資産の販売、物々交換、交換において売り手 に支払った、または支払うべき金銭/有価物の総額のこと)にこの12%の税率が適用され る。サービス販売の場合、手数料、報酬、対価の取得を目的としたフィリピン国内での サービス(建設/サービス受託業者によるサービスも含む)の全てにVATが適用される。 資産の場合、その利用やリースにVATが適用される。 税法の下、12%のVATはフィリピンに輸入される物品の全てにも適用されている。この課 税対象額は、関税、消費税、その他手数料をフィリピン税関局(Philippine Bureau of Customs)が定める上で使用される総価値額に基づき決定される。フィリピンへの物品 輸入者は、物品の通関前にVAT、関税、その他の手数料を支払うことが義務付けられて いる。 VAT免除の待遇を受けている個人、企業、機関がVAT免除の輸入品をVAT免除待遇を受けてい ない個人または企業にフィリピン国内で販売、譲渡、交換した場合、後者はその物品の輸 - 64 - 入者と見なされ、VATを賦課されることになる。このようなVAT課税は、当該の輸入品の所 有者が誰であるかには関係無く、その輸入品に対する他の全ての先取特権及び手数料より も優先される先取特権を生じることになる。 VATは間接税であり、販売者のVAT負担額は、販売品価格に反映され、購入/輸入者に引き 継がれる。一方、購入者/輸入者は、販売者より引き継いだVAT額を投入税払い戻しとし て、自身の負担するVAT額と相殺することが可能である。 VATの登録を行っている業者は、品物を販売するごとにBIRより正式登録された受領証また は販売/取引インボイス(送り状)を発行する必要がある。これは、納税者がVAT納税額に 対して投入税払い戻しを申請する上で必要な書類となる。 VATの登録業者の取引には、VAT率0%の税優遇措置が適用されるものがある(“ゼロレート 販売”と呼ばれる)。これは主に原料の輸出販売、外貨建て販売、BSP(フィリピン中央 銀行)への金販売、特別な法律や国際協定に基づき免税待遇を受けている企業への販売 などに適用されている。このような“ゼロレート販売”を行う業者はその(ゼロレートの) 販売に関連した購入において、販売者側がVAT額の払い戻しを行っていない場合はその額 の還付をBIRに申請することが可能である。 税法では、以下のような取引に対してVATの免除が定められている。 • フィリピンから海外への物品の販売及びその出荷 • BSPへの金販売 • オムニバス投資法1987年(OIC)の適用される輸出販売 • フィリピンの非居住者に対する、外貨建て物品販売 • 再生可能エネルギー源(バイオマス、太陽熱、風力、水力、地熱、海洋エネルギ ーなど)や、新型エネルギー源から生産された電力や燃料(燃料電池、液体水素 燃料など)の販売 • フィリピンの調印している国際協定の下にVATが免除されている取引 上記のようなVAT免除の物品、不動産、サービスを販売する業者は、“ゼロレート販売”を行 う業者とは異なり、このような(VAT免除の)販売に関連した購入におけるVAT還付を申請 することは、できない。 5-7-10. 配当税 国内法人の収入または利益から株主に配分される所得(金銭、資産のいずれも)は、配当 と呼ばれる。国内法人から、国内法人または居住者扱いの外資系企業(フィリピンで取引 または事業を行う外資系企業など)が受け取る配当にはフィリピンの所得税は適用されな い。 一方、非居住者扱いの外資系企業(フィリピン国内で取引または事業を行っていない外資 系企業)の受け取る配当にはその配当受取総額に対して通常35%の所得税が適用される。こ の35%税率の課税は、最終源泉税である(すなわち、フィリピンの国内法人が非居住者扱い の法人への配当を行う場合は、配当総額に掛かる税金を源泉徴収し、BIRに納税する義務が 生じる)。 税法の下、配当所得の源泉税は以下のような条件のいずれかが満たされていれば、15%に減 額されることが可能である。 • 当該の非居住者扱いの外資系企業の居住国が、当該の企業のフィリピンでの20%以 - 65 - 上の税率に相当する納税額の還付(貸方計上)を認めている。 • 当該の非居住者扱いの外資系企業の居住国がフィリピンの国内法人からの配当に 関し、何の所得税も課していない。 また、非居住者扱いの外資系企業の居住国がフィリピンと税制協定を結んでいる国である 場合も、配当への源泉税が減額されることがある。このような減税の適用を受けるには BIRに二重課税の回避措置の申請を行う必要がある。 5-7-11.消費税 税法の下、鉱物、鉱物製品、採石資源にも以下のような消費税が適用されている。 a. 石炭-1トン当たり10PHPの税額 b. 非金属鉱物の全てと採石資源-国産品に関しては、採取の際の総生産高に対す る実質市場価格の2%。輸入品に関しては、フィリピン税関局が関税、正味消費 税、VATの額を決定する上で使用する価格の2%。 c. 金属鉱物の全て-国産品に関しては、採取の際の総生産高に対するの実質市場 価格に以下の税率を適用。輸入品に関しては、フィリピン税関局が関税、正味 消費税、VATの額を決定する上で使用する価格に対して以下の税率を適用。 ⅰ. 銅及びその他の鉱物: 2% ⅱ. 金及びクロム: 2% d. フィリピン産の石油-物品の課税対象の販売、物々取引、交換、その他類似の取 引が最初に行われる時点での国際適正価格の3%。納税は物品が生産地を離れる前 に購入者によって行われること。 5-8. 貿易/投資法規 5-8-1. 輸入者登録システム 商業規模で定期的な物品輸入を行う(同一の輸入者または荷受人によって年に2回以上、行 われる輸入は、“定期的な物品輸入”と見なされる75)輸入者/荷受人は、フィリピン税関局に 登録を行わなくてはならない。この登録の申請においては、BIRの発行するVAT登録証明書 (Value-Added Tax Registration Certificate)、SECまたは内国貿易局(Bureau of Domestic Trade)の発行する登録証明書(Certificate of Registration)の提出が必要となる。 しかしながら、EPRS(貨物受け渡し至急手続き)の適用を受けることが承認・認可されてい る輸入者や貨物受取人は、上記の規則を免除される76。EPRSは、特定の人物/企業を対象に、 貨物の至急通関/配送を提供するシステムである。輸入者/荷受人は、税関局に何の債 務も負わず、警戒/要注意の企業/人物として記録されていなければ、このシステムの 利用の申請が可能である。申請においては、申請用紙とフィリピン商工会議所及び/ま たは、民間の産業/事業団体の推薦状を貨物の入国港のDistrict Collector(地方関税担 75 税関覚書令(CMO) 第 149-88 号(1988 年 12 月 28 日) 76 税関覚書令(CMO) 第 149-88 号 - 66 - 当官)宛に提出することが必要となる77。 5-8-2. 輸出に関する要求事項 フィリピンの物品輸出における検査、物品/輸出通関の要求事項は以下の場合を除き省略さ れる。 (1) 他国に輸入割り当て制度が存在する物品の輸出。 (2) 輸出禁止の品物の輸出。 (3) 丸太、銅、コーヒーの輸出。 (4) フィリピンが調印国である。国際協定の該当する輸出78。 フィリピンでは、通関を必要とする輸出品に対し、輸出手続きの簡便化と輸出書類の一本化 が適用されている。従って、輸入国側が、複数機関による輸出書類の発行を希望していない 限り、一つの輸出品に対しては単一の政府機関が検査/認可手続きに当たっている上、定期 的輸出を行う業者に対しては、定期間での通関(最長1年間の指定期間内で行われる)や四 半期毎の納税などといった輸出書類の簡素化(但しこれによって、政府の輸出者に対する税 金、罰金、利息の賦課が免除されるわけではない)79などの措置が取られている。 鉱業法の実施細則第270項の下、鉱業コントラクター/認可保有者は、鉱物の輸出または販売 に関する既存及び将来的な販売契約をMGBに登録することが義務付けられている。 5-8-3. 輸出奨励80 共和国法第7844号に基づく登録を行っている輸出者は、大統領令(PD)第1853号で定められ る、輸入関税前払いの義務を免除される。この大統領令(PD)第1853号では、「金融機 関(輸入地銀行)の輸入に関するL/C(信用状)の開設は、その申請者が当該の輸入関 税の全額を預入しない限り不可である」と定められている81。関税の前払いは、(L/C の開設を必要としないような)他の支払い形態または延べ払いによる輸入の場合も必要 とされる82。 輸出業者が(輸出品に使用する物品の輸入において)大統領令(PD)第1853号の免除を 受けるには、輸出業者当人の事業に外貨建ての海外向け製品/サービスの生産、製造、取 引のいずれかが直接的/間接的に含まれており、それによって得られる利益が、当人の通 常事業利益の50%以上であることが必要となる。しかしながら、間接的な輸出業者の場合、 その業者が生産、製造、取引のいずれかに携わる製品/サービスは、“外貨建てで海外に (直接)販売されるもの”である必要はない。大統領令(PD)第1853号の免除が適用され る輸出業者は、その証明書を政府機関より取得し、金融機関あるいは輸入品の入国場所 の税関事務所(Office of the Collector of Customs)に提示しなくてはならない83。 5-8-4. 外資投資 外資系企業は、上記された通り、EP(探鉱認可)、FTAA(財務技術支援協定)、MPP(鉱 77 税関覚書令(CMO) 第 045-88 号(1988 年 6 月 1 日) 78 大統領令(EO)第 1016 号 第 1 項(1985 年 3 月 25 日) 79 大統領令(PD)第 930 号 (1976 年 5 月 13 日) 80 共和国法(RA)第 7844 号(輸出開発法 1994 年(Export Development Act of 1994)) 81 大統領令(PD) 第 1853 号 第 1 項(1983 年 1 月 1 日) 82 大統領令(PD) 第 1853 号第 3 項 83 探鉱開発法(Export Development Act)Rule VII、第 2 項 a - 67 - 物加工認可)の申請が可能である。一方、MA(鉱業協定)はフィリピン国民あるいは外 資保有株が40%以下で、鉱業活動を目的に設立または権限を委託されたフィリピンの企業、 共同経営事業、団体、協同組合に限られる。 従って、外資系企業がフィリピン政府とのMA(鉱業協定)を希望する場合、法律で定め られる範囲内の外資保有率である国内法人を設立することが必要となる。 5-8-5. フィリピンの法律に基づく外資投資待遇 フィリピンでの外資投資規則は外資投資法1991年(FIA)で定められている。FIAでは、「外 国人または外資系企業は、FINL(外資投資ネガティブ・リスト)に含まれる事業を行っ ていない限り、フィリピンでの事業あるいは国内法人に対する100%までの資本投資が可 能である」と定められている。 FINLには、国内法人の外資による完全所有または部分所有が制限あるいは禁止されてい る事業がリストされている。このリストはリストAとリストBから成り、フィリピン国民 /法人のみに投資が認可されている事業分野/活動、外資の投資参入率の上限が定められ ている事業分野/活動が記されている。 リストAには、フィリピン憲法または法律によって外資参入が制限されている事業分野/ 活動、リストBには、保安、防衛、保健、倫理上または中小企業(SME)の保護上、外資 参入が制限されている事業活動が記されている。 リスト更新は、リストAは法律の改正に伴い随時、リストBは最低2年毎に行われる。 FINLのリストAでは、以下の事業に関し、外資所有率が40%までと定められている。 • 天然資源の探査、開発及び加工処理 • 私有地の所有 • 払込資本が20万US$未満の国内市場事業 • 先端技術に携わるあるいは従業員数が50人以上で払込資本が10万US$未満の国内 資本事業 また、外資系企業は1987年憲法の下、フィリピン大統領との法的協定によって、鉱物、 石油、その他の鉱油の探鉱、開発、加工処理の大型プロジェクトに技術/財政支援の形 で参入する(参入条件が法によって定められている)ことが可能である。 鉱業法の下、鉱物生産分配協定(MPSA)によって鉱業事業を行う企業の外資参入率は40% までと定められている。一方、EP、FTAA、MPPの下に鉱業事業を行う企業の外資参入率 は40~100%までである。 5-8-6. 外資資本の保護 企業は、法的人格を持った個人の集合体である。企業は、集合体として編成される上で、 憲法の下に与えられたいかなる免責をも放棄されることはない84。従って、憲法の下に 与えられた特定の権利と保証を有する。 84 参考:“Theory of Enterprise Entity(企業実体の論理)、Bache & Co (Phil), Inc. v. Ruiz 37 SCRA 823, 837 (1971 年)(Hale v. Henkel 201 U.S. 43, 50 L. Ed. 652 より抜粋) - 68 - オムニバス投資法1987年(OIC)では、優先投資分野(Priority Investment Area)の 事業に携わる企業への奨励と特権が定められている。鉱業法の下、探鉱、採鉱、採石、 鉱物加工の事業は、OIC85で定められるIPP(投資優先計画)に自動的に含まれることに なっている。OICの施行は、貿易産業省(DTI)の付属機関であるBOI(投資委員会)に よって管理される。 5-8-7. 有限責任 企業の投資額に対する責任は、株主の投資額以内の範囲に限られるというように、企業は有 利性を持つ。これは、企業とその株主とは分離しかつ性質が異なるといった法的論理に基づ くものである86。 一般的に、企業の責任とは企業の負う義務と代表取締役/担当官/従業員を通じての行動 の範囲に限られている87。 5-8-8. ジョイント・ベンチャー(JV) フィリピンの最高裁判所は、ジョイント・ベンチャー(JV)を「個人または会社の商業事業 における共同体で、これらの個人または会社の全てが当該のJVの資産への貢献及びリスクを 共有するものである。JVには、重要事項における利害の共通、重要事項に関する方針を決定 及び管理する権利、利益と損失を共有するための義務(合意に従って変更可能なものである こと)が備わっている必要がある。」と定義付けている88。 近年、JVはフィリピンの事業/プロジェクト形態として一般化している。特に外資系企 業の参入するプロジェクトにおいては、それが著しい。JVでは、その契約形態の性質か らも、状況に沿って特殊な規則や方法を柔軟に導入することが可能である。 フィリピンには、JVについて直接的に定められた法律は存在せず、通常はフィリピン市 民法(Civil Code)に含まれる契約法(Law on Contracts)及び共同経営事業法(Law on Partnership)の条項が適用されている。 契約法では、「契約においては、その当事者が適切と見なす規約条件を契約の規約条件 として定めることが可能である。但しこれらの規約条件は、法、倫理、良慣習、公共秩 序、公序良俗に反するものであってはならない89。」と定められている。 一般的な法律学に従うとJVは共同経営事業の一種である。通常の共同経営事業とJVとの 主な違いは、その存続期間と組織としての計画にある。通常の共同経営事業は、事業一 般を目的に設立され、その存続期間は特に定められていない。その一方でJVは特定のプ ロジェクトの遂行を目的に設立されるものである。 JVの設立方法は、以下のような様々な種類に分かれている。 • 会社形態(インコーポレーション)のJV • 直接出資型(straight-equity)のJV 85 BOI(投資委員会)2006 年投資優先計画第 2 部必須産業 (2006 Investments Priorities Plan, Part II Mandatory Inclusions) 86 San Juan Structural and Steel Fabricators, Inc.対 Court ofAppeals 296 SCRA 631 (1998 年) 87 Malayang Samahan ng mga Manggagawa sa M. Greenfield 対 Ramos 357 SCRA 77 (2001 年) 88 Kilosbayan Inc.対 Guingona 232 SCRA 110 (1994 年) 89 市民法第 1306 条 - 69 - • 共同経営事業(パートナーシップ)によるJV • 契約形態のJV 一般的には、企業間でのJV契約は共同経営事業や会社の新設を伴わない限り、SECへの 登録は必要ない。SECの規則では「複数の会社によるJVの設立は、その事業内容が、参加各 社の設立認可状で認められているものであれば、契約や協定の形態で行うことが、可能であ る。」と定められている(このようなJVは、“契約形態のJV”に該当する)。JVが(SECへの) 登録を行う場合、国内法人の設立、編成、登録と同様の手続きを踏むことが必要となる。 5-8-9. オムニバス投資法(OIC)に基づく奨励 オムニバス投資法1987年(OIC)の定めに従ってBOIへの登録を行う投資家は、フィリピ ン憲法で定められる基本的権利と保証を取得しかつ以下のような権利をフィリピン政 府から認められる90。 投資の本国送還-外資投資の場合、投資引き上げ金の本国への送金を投資時に使用され た通貨及び現行の一般外貨為替率で行う権利。 海外融資と契約-技術的支援契約に関連した海外融資の元本及び利息返済及び海外での義 務遂行に必要な送金を現行の一般外貨為替率で行う権利。 非収用-投資資産、あるいは、投資企業の資産の政府による収用は公共使用、国民福祉、 防衛の目的に基づき補償金を以って行われるものを除き、行われない。資産を収用された 企業は受理した補償金の(海外)送金を投資の際に使用した通貨及び現行の一般外貨為替 率で行うことが可能である。 投資に対する徴発-投資資産、あるいは、投資企業の資産の徴発は戦争の勃発、国家的な 緊急事態の発生及びそれらの期間を除き、行われないものとする。徴発においては、正当 な補償金の設定及び支払いが、当該の徴発時または戦争あるいは緊急事態が休止期間に入 った直後に行われる。資産を徴発された企業は受理した補償金の(海外)送金を投資の際 に使用した通貨及び現行の一般外貨為替率で行うことが可能である。 守秘情報-鉱業コントラクターが鉱業法及びその実施細則に基づき提供した守秘情 報は、当該のプロジェクトの期間においてDENR及びフィリピン政府によって守秘さ れる。 EP(探鉱認可)保有者は、EPの有効期間及び延長期間において、OICの下に定めら れる財奨励を受けることが可能である(この奨励を受けるには BOIへの登録が必要 である)。OICでは、BOIがIPP(投資優先計画)で指定する経済分野への投資に対する 奨励(税免除措置/諸手当等)が定められている。フィリピンでは、国家経済の発展に 対する鉱業の貢献が強く認識されており、鉱業法の下、毎年度のIPPには鉱業活動の分 野を必ず盛り込むことが定められている。 OICで定められる投資奨励は、基本的にはフィリピン国民またはフィリピン国民の所有す る国内法人にしか適用されないが、総生産物の70%以上を輸出する事業あるいは先端的企 業(フィリピン国内で商業規模で生産されたことのない製品の製造を行う、または、フ ィリピン国内で実践されたことのない技術、プロセス、生産計画を使用または実施する プロジェクト)であればその国籍は問われない。 90 OIC(1987 年オムニバス投資法)(大統領令第 226 号)第 38 条 - 70 - 上記のような奨励を受ける外国籍者はBOIへの登録日から30年あるいはBOIの定めるそれ 以上の期間内にフィリピン国籍を取得しなくてはならない(企業の場合、資本の60%以上 をフィリピン資本とし、投票権はフィリピン国民に保有されること)。但し、生産品の 100%を輸出する外資系企業はこれを免除される。 通常、BOIの登録プロジェクトに必要とされる資本額は、そのプロジェクト費用の25% である。この資本は、払込資本、払込資本に転換された/される予定の留保利益のい ずれも可である91。 BOIの登録企業(すなわちOICに基く投資奨励を受ける企業)に適用される税優遇措置や 奨励の詳細は以下の通りである。 5-8-9-1. 税優遇措置 a. MA(鉱業協定)事業などの探鉱/開発事業は、先端的企業として見なされること は可能だが、ITH(免税期間)の適用は不可である92。 先端的企業は、以下のようなBOI登録企業のいずれかである。 ⅰ. フィリピン国内において商業規模で生産されたことのない物品、製品、物資、 原材料を、製造、加工、生産する(単なる組み立てや包装の範囲以上のもの であること)企業。 ⅱ . 設計、方法、スキーム、メソッド、プロセス、システムを駆使し、 ある要素、物質、原材料を、フィリピン国内において利用または 試用されたことのない材料または完成品に転換する、あるいは製 造する企業。 ⅲ. BOIが担当の省との協議の上で、「フィリピンの自給自足のための国家的食 糧/農業プログラム、または福祉プロジェクトの目標達成を可能とし、かつ それらにとって不可欠である」と認める、農業、林業、鉱業の分野のいずれ か、及び/または、場合によっては工業的(食品加工など)な面も持つサー ビス事業に携わる企業。 ⅳ. 新型燃料の生産、新型エネルギー源を使用する設備の製造、生産/製造/加工 における石炭または新型燃料/エネルギー源の使用または後者(新型燃料/エ ネルギー源)への変換のいずれかを行う企業。 上記のような製造過程による“完成品”は、可能な限り多くのフィリピン産原材 料が使用または加工されたものでなければならない(但し、企業の投資の度合 いやリスクが考慮されていること)。 鉱物加工事業は、探鉱または開発も並行して行う場合においても、ITHの適用が 可能である(適用期間は、商業規模の操業の開始から先端的企業は6年間それ以 外の企業は4年間)。 91 BOI General Policies and Specific Guidelines to Implement the 2005 Investments Priorities Plan (IPP) (2005 年 IPP の施行における一般政策及び特別ガイドライン)2005 年 8 月 2 日 92 BOI General Policies and Specific Guidelines to Implement the 2005 Investments Priorities Plan (IPP) (2005 年 IPP の施行における一般政策及び特別ガイドライン)29 ページ目 - 71 - 以下のようなプロジェクトは、ITHの適用期間の延長が可能である。 ⅰ. フィリピン産の原材料をBOIの指定する割合で使用するプロジェクト。 ⅱ. 資本/設備対従業員数の比率がBOIの指定する率に整合するプロジェクト。 ⅲ. 操業の初めの3年間における外貨の預金額または収入額が年間50万US$以上 のプロジェクト。 事業拡張を行う鉱物加工企業は、商業規模の操業の開始から3年間、拡張部分の 所得税の免除を受けることが可能となる(但し、この免除を受けている期間は、 労働費用の増額分を税控除額に計上することが不可能となる)。先端的企業へ のITHの適用期間は最長8年間と定められている。 b. 金属/非金属鉱物の採鉱、採石、加工(川床での操業を含むもの及び洞窟や海 岸での採鉱は除く)93に対し、OICで定められる税優遇/免除措置の詳細は以下 の通りとなる。 ⅰ. 鉱物加工事業を伴う採鉱/採石事業-ITHの適用が可能。但し、原鉱を直接出 荷する生産の場合はその限りでない。 ⅱ. 採鉱/採石事業を伴わない鉱物加工事業-OICで定められる税免除/税優 遇措置の全ての適用が可能。 ⅲ. 砂利の採取及び鉱物加工事業-ITHの適用は、不可。 ⅳ. 大理石の鉱物加工プロジェクト-OICで定められる税優遇/免除措置の適用 が、可能。但し、フィリピン資本の企業は採鉱/採石を伴うか否かを問わず に製品の50%以上、外資系企業は製品の70%以上を、輸出していることが必要。 ⅴ. 鉱物加工プロジェクト-OICで定められる税優遇/免除措置の適用が可能。 但し、フィリピンのNCR(マニラ首都圏)以外の場所に位置していること。 選別、粉砕、洗浄、乾燥といった単純な鉱物加工作業は、ITHの適用対象とは ならないが、非金属鉱物の粉末状/粒状への加工(グラインディングなど)、 非金属鉱物の種類分け、化学薬品洗浄、研磨はその対象となる場合がある。 FTAAまたはMPP(鉱物加工認可)の協定を結ぶ外資系企業は、先端的企業として見 なされ、最長期間(8年間)によるITHの適用が可能である。 c. 保税工場を所有し、製品の70%が輸出向けの製造業者は、(製造に使用される) 予備部品や消耗品の輸入に掛かる税金の免除を受けることが可能である。 d. 政府の指定する資本対労働者比率の条件を満たしている企業は、BOI登録から5年 間、直接労働力としての追加人員(熟練労働者、未熟練労働者のいずれも該当) の賃金の50%を課税所得額より控除することが、可能である。但しこのような企業 は、この税優遇措置を受けている期間、ITHの適用を受けることが不可となる。 e. 輸出品の材料として使用される原料、供給品、半加工品に対する納税には税還付 93 Ibid - 72 - が適用される。 f. 保税工場を所有する企業は、輸入設備に使用される供給品並びに予備部品に掛か る輸入税の免除を受けることが可能である。 g. BOIへの登録から10年間は、埠頭使用税、全ての輸出税/手数料が免除となる。 h. 資本設備の輸入税の免除94-新設のまたは事業拡張を行うBOI登録企業は、以下の 条件の下、機械、設備及びこれらの予備部品の輸入に掛かる関税/輸入税の100%を 免除されることが可能となる。 ⅰ. BOI登録企業が輸入する機械または設備と同等の質及び妥当な価格の製品が、 フィリピン国内で十分な量だけ生産されていない。 ⅱ. 上記に関し、「(同等の質、及び妥当な価格の)機械または設備が十分な量 だけ、生産されていない」とは、「BOI登録企業によって、(同等の質、及 び妥当な価格の)機械または設備が必要とされる際あるいは妥当な期間内に、 その調達が不可能である」という意味である。(フィリピン製の機械、設備、 予備部品が)「同等の質」であるか否かは、それらの機械、設備、予備部品 が、「生産の過程及び効率性に悪影響を及ぼすものか」、「低質な製品の製 造を招くものか」、「製造費用の増加を招くことになるか」、などの試験に よって、決定される。一方、フィリピン製の機械、設備、予備部品が「妥当 な価格(国内の製造業者より見積もりが出される)」であるか否かは、BOI が当該の機械、設備、予備部品と類似する輸入品の購入価格(これらに税金 が支払われている場合は、価格の15%を上乗せする)を参考にして、それを 決定する。 ⅲ. 輸入される機械または設備は、その必要性が適切なものであり、BOI登録企 業のみによって、製品の製造または登録済みの作業のために使用されるもの とする。 ⅳ. 上記される機械または設備の用途に関しては、それが稼働率の最大化のため に行われる一時的なもの、あるいは、妥当な額の税金を支払った上での常時 的なものであれば、未登録のものもBOIに許可される場合がある。 ⅴ. 機械/設備の発注またはLOC(信用状)の開設において、BOIの事前承認を 得ている。 ⅵ. 上記に関し、BOIは、申請者の機械/設備調達の早急性や財力を考慮し、事 前承認の時期を早める場合がある。事前承認の証明書の有効期間は通常、 発効日より1年間で、延長(指定期限内にその申請を行うことが必要であ る)は、その利点が認められた場合に許可される。 ⅶ. 輸入機械/設備の定格出力は、当該の企業の(BOIへの)登録出力の範囲内で なければならない(但し、妥当な猶予が考慮される)。 5-8-9-2. 予備部品の輸入 上記に関する“予備部品”とは、当該の輸入機械/設備の出荷時に通常、装備されている部品 以外の用途を持たないもので、かつ、それらの機械/設備の機能に非常に重要な役割を果た 94大統領令(EO)第 528 号 - 73 - す部品のみに限られる。 通常、このような予備部品の価格は、それらが使用される機械または設備の価格の10%以下 でなければならない。予備部品の輸入が規定量を超過した場合、及び/または、それらが装 備される機械または設備とは別に購入された場合、その超過分や購入に対し、免税措置は 適用されないものの、税優遇措置は認可を取得した上で可能となる。 5-8-9-3. 輸入条件 上記に関する資本設備の輸入は、以下のような条件が満たされた上で、許可証明書 (Certificate of Authority)の発行をもって、最終認可が下されたと見なされる。 a. 輸入資本設備の船積み書類の荷受人(税関より貨物が直接送付される先)の名 前が申請者の名前である。 b. 輸入申請者は、通関許可書(Release Certificate)の発行のために、輸入資本設 備の詳細、量、価格、供給者名、輸送船舶名、到着予定日を記した正式な輸入書類 と許可証明書を、財務省(DOF)に提出する。 c. DOFより発行された通関許可書( Release Certificate)及びその関連書類の 写しをBOIに提出する(監視/統計上での理由上、必要となる)。 ⅰ. BSP(フィリピン中央銀行)通関許可書の発行の際には、船積み書類及び関 連の書類の写しをBSPに提出することが必要となる。 ⅱ. 輸入資本設備は、申請者の申告した場所で使用されるものと定められており、 BOIの認可を取得すること無しに、移動または他の場所で使用することはで きない。 5-8-9-4. 資本設備の売却/処分の事前認可の取得 上記に基づき輸入された資本設備を、購入から5年以内に売却、譲渡、処分する場合、BOI の事前認可を取得する必要が生じる。BOIの事前認可は、以下のような条件が満たされてい る場合に付与される。 a. 当該の資本設備は、その所有者と同様の奨励措置を受ける(BOI)登録企業に、売 却、譲渡、処分される。 b. 当該の資本設備は、BOIの承認する技術的陳腐化によって、売却、譲渡、処分さ れる。 c. 当該の資本設備は、その所有企業の操業の改善及び/または拡張のために、売却、 譲渡、処分される。 資本設備の売却、譲渡、処分が、BOIの事前認可を取得すること無しに行われた場合、 その両当事者は免除税額の2倍の額を連帯賦課されることになる。 5-8-9-5. 非税奨励措置 a. 設備、予備部品、原料、供給品の輸入及び加工製品の輸出における税関処理を簡 - 74 - 便化する。 b. 持ち込み設備の使用に対しては、何の規制も課さない(再輸出許可が必要とされ る)。 c. (BOIの)登録から5年間(ある一定期間の延長が可能)は、外国人が監督職、技術 職、顧問職に就くことが可能である。但し、外資系企業の社長、部長、財務部長(ま たはこれらと同等の役職)に関しては、その在任期間に上記のような制限は課せら れない。 d. 保税の製造/取引倉庫の運営(税関規則/法規に則った上で行われること)の特権を 与える。 5-8-9-6. 鉱業事業のBOIへの登録のガイドラインと規則 BOIへの登録を行う事業は全て、それに必要とされる認可/ラインセンスを、担当機関から 取得しなくてはならない。BOI登録に必要とされる書類は、以下の通りである。 a. 記入済みのBOI申請用紙(No.501)。 b. 定款並びに付随定款、SECの発行する登録証明書(いずれも写し可)。 c. 過去3年間(申請事業の運営期間に従って、これより短い期間となること も可)の監査済み財務諸表及び所得税申告書の写し。 d. DENR(MGB)より付与されたEP、MPSA、FTAAの写し及びプロジェクト対象地の場 所と範囲を示した地図。 e. 申請者(企業)の代理署名者を指名する役員会の決議書の写し。 f. 事業の各段階、日程、事業費用の内訳、生産/販売の予想、所得状況などを示した 事業報告書。 5-8-9-7. 登録の申請 BOI登録の申請は、州でそれを行う場合、貿易産業省(DTI)の地方支所に提出される。DTI 地方支所に受理された申請は、48時間以内にBOIに転送され、BOIの登録記録書 (Registration Book)に記帳されて初めて、正式に受理されたと見なされる。但し、国内 向け製品または伝統的輸出製品を主な製品とする企業の申請は、それらの事業活動がIPPに 含まれている場合のみに受理される。 BOI登録の申請においては、指定の用紙を使用し、かつ、公証人立会いのもとで宣誓された その写しを2部作成しなくてはならない。BOIは申請の受理後24時間以内に不備を申請者に 通知し、それが修正されたら直ちに申請を正式受理する。 申請が正式受理されたら、その旨が、一般紙またはBOIの要望する形式によって公示される。 この公示は、申請者の費用負担で行われ、申請者の氏名、当該の投資事業の分野や規模、 投資事業に使用する工場の場所などが示される。 - 75 - BOIは申請の正式受理後20営業日以内にその審査を行う。審査が行われない場合は、当該の 申請は自動的に認可されたことになる。 5-8-9-8. 申請者への通知 BOI登録の申請は、BOIがそれを正式に受理してから20営業日以内に認可または却下の裁定 が下される。この裁定は、登録の規約書と同様、当該の申請者に、文書で通知される。BOI が、申請の正式受理後20営業日以内にこの裁定を行わない場合、申請は自動的に認可され たと見なされる。(但し、BOIは、登録企業に対し、通常の規約を適用することも追加的な 特別条項を適用することも可能である) 申請者は、BOIの認可の通知を受理してから30日(暦日)以内に、申請認可の受諾を提出し、 (適用されている場合は)仮登録の要求事項に準拠しなければならない。このいずれかを 怠った場合、申請認可の拒否または事業の中止と見なされ、BOIの登録が取り消されること になる。申請者は、BOIが登録証明書(Certificate of Registration)を発給しない限り、 OICに基づくいかなる奨励措置の適用も受けることはできない。 5-8-9-9. 登録証明書(Certificate of Registration) BOIの登録証明書の発行においては、事前に以下のような条件を満たすことが必要となる。 a. 登録手数料の納入。 b. 登録規約の正式受諾書(法人の場合は、役員会の決議書)の提出。 c. BOIに対する申告と約束の確定及び受諾並びに「BOIに提供した情報やデータは全 て正確あり、それらに修正が生じる場合は、その旨を文書によって正式に通知す る」との旨を示す、役員会/共同事業経営者または個人の宣誓書。 d. BOIが当該の申請者に課す、仮登録の規則の全てへの準拠。 5-8-9-10. 証明書の発行 上記の条件が全て満たされたら、BOIによって登録証明書(Certificate of Registration)が発行される。 5-8-10.鉱業法及び実施細則に基づく奨励 鉱業法1995年は「MAまたはFTAAの鉱業コントラクターは、OICによる財的/非財的奨励を 受ける資格を有する」、「鉱業活動は、常にIPP(投資優先計画)に含まれる95」との条 項を定める他、(MAやFTAAの)鉱業コントラクターに対し、憲法で定められた基本的な 権利と保証及び以下のような権利の享受を認めている。 a. 投資の本国送還 b. 利益の送金 c. 海外での融資及び契約 95 鉱業法第 90 項 - 76 - d. 収用の免除 e. 投資の挑発に対する権利 f. 守秘96 鉱業法またはその実施細則による、鉱業コントラクターへのその他の奨励には、以下の ようなものがある。 a. 鉱業コントラクターの購入、建設、設置する汚染制御装置に対する、不動産税そ の他租税の免除。但し、鉱山廃棄物や尾鉱に関する手数料は免除とはならない。 b. 所得税の損失の繰越。 操業開始後10年間における正味営業損失(算出の際には、優遇措置を計上せずとも良い) は、それらの発生した年から5年間、課税所得からの控除が可能である。控除期間の初年度 において、控除額が課税所得額を上回る場合は、その額を残り4年間において、初年度の控 除と同様の方法(すなわち損失額が所得額を上回る場合は、翌年に繰り越される)で控除 していく。 鉱業コントラクターはこの奨励に関し、それを、鉱業法、またはOICで定められるITH (免税期間)のどちらの下で受けるかの選択肢が与えられている。但し、一度選んだ選 択肢は継続的に適用されるので、その変更を奨励の適用期間中に行うことはできない97。 5-8-11. 所得税の加速減価償却 固定資産は、以下のようにして減価償却される。 a. 固定資産の耐用年数が10年未満の場合、通常償却期間~その2倍以下の期間で償却 を完了。 b. 耐用年数が10年以上の場合、5年以上耐用年数以内で償却。 償却額は、所得税控除額に計上することが可能であるが、償却の開始時に、その旨をBIRに 通知することが必要となる。 鉱業コントラクターは、探鉱日付をもって累積された、あるいは課税年度内に支払われた または発生した探鉱/開発費用を、課税所得額から控除することが、可能である。但し、こ れらの総控除額は、鉱業コントラクターの鉱業活動の正味所得の25%以内と定められており、 超過分の控除額は控除が完了するまで翌年に繰り越されることになる。 上記における“鉱業活動の正味所得”とは、鉱業活動(操業)の総所得から、鉱業活動に必要 または関係のある控除額(採鉱、粉砕、販売に伴う費用額、鉱業活動に直接使用された不 96 a~f は、鉱業法第 94 項で定められる。 97 鉱業法実施細則(DENR 省令第 96-40 号)第 227 項 - 77 - 動産の償却額など)を差し引いたものである。但し、減価償却の対象となる不動産の購入 や改善に係る費用額はこの控除額には含まれない。 この奨励は、BOIへの登録を行っていれば、ITHの奨励と合わせて受けることが可能となる。 5-8-12. 奨励に関する条件 鉱業コントラクターは、奨励の受益に関して以下のような条件に従うことが必要となる。 a. 鉱業コントラクターは、鉱業法並びにその実施細則で定められる義務を遵守し、 それらの義務が忠実に遂行されるに十分な施策を取るとの約束を行う。 b. 鉱業コントラクターは、DENR/MGBが法的権限の下に随時、発令する指令または 指示に準拠する。 c. 鉱業コントラクターは、DENR/MGBの正式な代理が、当人(企業)の鉱業 法並びにその実施細則、MAまたはFTAAの規約への準拠の確認をその会計 記録及び関連の記録/書類の検査に基づき行うことを承諾する。 d. 鉱業コントラクターは、MAまたはFTAAの規約及び/またはBOIへの登録における規 約(MGB及び/またはBOIの必要とする報告書や統計データの提出など)のいずれに も対し、その準拠を怠った場合、いかなる奨励措置も適用されない。 e. 鉱業コントラクターは、MAやFTAAの適用されない事業を開始する際には、 その会計と、MAや FTAAの適用される事業の会計(投資、歳入、販売利益、 受益、購入、給与、費用、経費、利益、損失など)を分離するようなシ ステムを設けなくてはならない。更に MGBはその判断により、鉱業法の施行の 円滑化のために、当該の鉱業コントラクターに対し、MAやFTAAの適用される事業 を(それらの適用されない事業と)分離して、新たに企業を設立することを要請 する場合がある。    6. 上場と報告の規則 6-1. 鉱業会社の上場 PSE(フィリピン証券取引所)は、民間の株取引所であり、公正、効 率的、透明、秩序的な株式売買の徹底を図っている。 鉱業会社は、PSEでの上場において、その資本調達が容易なものとな るよう、適用規則の緩和を受けている。例えば、通常、企業は上場に おいて、PSEの“運営の沿革及び記録(Operating History and Track Record)”の条件を満たしていなければならないが、現事業が探鉱の みの鉱業会社の場合、以下のような書類を提出すれば、上場において 上記の条件を免除されることが可能である。 6-1-1. MGBによる証明書 以下の3点を証明する、MGBの書類。 • 上場申請者の鉱区保有または鉱業権が上場申請の日付において有効である。 • 上場申請者の保有鉱区の開発が承認済みの作業プログラムに沿って行われている。 • 上場申請者がMGBの報告の規則に準拠している。 6-1-2. 鉱物資源/鉱物埋蔵量に関する地質学的報告書 上場申請者が開発を予定している鉱物資源/鉱物埋蔵量に関する報告書。この書類の提出は 必須であり、有資格者(Competent Person)によって作成され、かつ、MGB局長またはその 正式代理及びフィリピン専門業者法規委員会(Philippine Professional Regulations Commission)認定の専門業者団体(以下、認定専門業者団体)の承認を受けたものでなけ ればならない。 上記の“有資格者(Competent Person)”とは、鉱物資源/鉱物埋蔵量、鉱床の種類の推定 に必要な能力を保持していることが、認定専門業者団体及びMGBによって承認されており、 かつ、正式なライセンスを取得している地質学者及び/または鉱山技師のことである。鉱物 資源の埋蔵量の測定が、海外の鉱物資源/鉱物埋蔵量規格に沿って行われる場合、その報告 書は、PSEへの提出前にMGB及び認定専門業者団体の承認を受けなければならない。 6-1-3. EP、MA、FTAA、鉱業プロジェクトのF/S(実現性調査) いずれか該当するものの、正謄本。 6-1-4. 探鉱作業プログラム、開発加工処理作業プログラム いずれか該当するものを提出。ライセンス保持の鉱山技師、地質学者、製錬技師のうち、 いずれか該当する者によって正式に作成及び署名されたものであり、かつ、MGBによって承 認されたものであること。 6-1-5. マネジメントの質及び技術能力の証明 マネジメントの質及び技術能力の証明(マネジメント/技術の主担当者の担当分野での職務 経験を示すような履歴書など) - 79 - 6-1-6. 運営資本及び財的資源 承認された作業プログラムを行う上での十分な運営資本及び資本構造の適正さの証明。 6-2. 鉱業会社の報告義務 6-2-1. フィリピン鉱物報告法(PMRC) フィリピン鉱物報告法(PMRC)は、現在、草案が作成されている最中であり、PSE、フィリ ピン鉱物開発機関基金(Philippine Minerals Development Institute Foundation)、フ ィリピン-豪州法人組織(Philippines-Australia Business Council)、SEC、MGB、フィ リピンの鉱山技師、地質学者、製錬技師の各専門業者協会といった多方面での人員で構成 されるチームがそれを行っている。 PMRCは、豪州証券取引所の豪州鉱石埋蔵量合同委員会(JORC)規程に従って作成されてお り、将来、PSEに上場する鉱業会社の鉱物資源報告に強制的に適用される規格となる。 JORC規程は、世界で広く受け入れられている鉱物資源/鉱物埋蔵量に関する規格であり、多 くの国の証券所の鉱物資源/鉱物埋蔵量報告の規格がこれに倣うものである。従って、JORC 規程を基調とするPMRCが使用されるようになれば、PSEに上場する鉱業会社への投資家信頼 も強まるものと期待される。 PMRCは、2007年末までにその作成が完了し、施行される予定である。 6-2-2. SECの報告義務 SECは、企業に対して以下のような書類の提出/登録を義務付けている。 提出/登録書類 提出/登録期限 株式及びその取引における記録(Stock and Transfer Book)、メンバーシップブック (Membership Book) 登録証明書の発行から30日以内 年次報告書(GIS) 付属定款によって定められる、年次総会の日 付から30日以内 監査済みの財務諸表 付属定款によって定められる、会計年度終了 日から120日以内 非営宣誓書(Affidavit of Non-Operation) (営業が開始されていない、または営業を停 止した場合) 上記される、年次報告書、及び、監査済みの 財務諸表の提出期間内 延期通知(Notice of Postponement) (年次会議の延期の場合) 年次会議の終了日(付属定款で定められる) より遡ること10日以内 年次会議未開催宣誓書(Affidavit of Non-holding of Annual Meeting) (年次会議を開催しない場合) 付属定款で定められる、年次総会の終了日か ら20日以内 - 80 - 6-2-3. 財務報告 SECは、IFRS(国際財務報告基準)に整合するPFRS(フィリピン財務報告基準)を以下のよ うな企業に適用している。 a. 株式公開を行う、あるいはその手続きの最中の企業。 b. 銀行、保険会社、証券会社、年金基金、投信、投資銀行などの金融機関。 c. 公共事業。 d. 2004年の総資産額が2億5,000万PHP以上、または負債額が1億5,000万PHP以上の、 大型経済企業。 上場していない私企業は、PFRSへの移行期間が2007年まで適用されており、現在は旧 会計基準の使用が許可されている。 6-2-4. 業務報告 鉱業コントラクター、探鉱認可/鉱業認可保持者、MPPの保持者またはその請負業者は全て、 業務報告書の定期的な提出が義務付けられている。詳細は、以下の通りである。 a. 金属鉱物の生産、販売、目録及び雇用に関する月例報告書 鉱業コントラクターまたはその請負業者あるいはMPPの保持者は、金属鉱物の生産、販 売、目録及び雇用に関する宣誓済みの月例報告書(MGBフォームNo.29-1~29-9のうち、 該当する用紙を使用)を月末から15営業日以内にMGB局長に提出。 b. 非金属鉱物の生産、販売、目録及び雇用に関する月例報告書 非金属鉱物に関する事業を行うMA、FTAA、MPPの場合、鉱業コントラクターまたはその 請負業者、あるいはMPPの保持者は、非金属鉱物の生産、販売、目録及び雇用に関する 宣誓済みの月例報告書(MGBフォームNo.29-10を使用)を月末から15営業日以内に担 当のMGB地方支所の所長に提出し、その写しを同様の期間内にMGB局長に提出。 c. 採石資源(砂、砂利は除く)の生産、販売、目録及び雇用に関する四半期報告書 採石認可の保持者またはその請負業者は、それらの採石資源の生産、販売、目録、及 び、雇用に関する宣誓済みの四半期(暦年)報告書(MGBフォームNo.29-11を使用)を、 四半期末から15営業日以内に当該の州知事/市長に提出し、その写しを同様の期間内に MGB局長及び担当のMGB地方支所の所長に提出。 d. 工業用砂/砂利の生産、販売、目録及び雇用に関する月例報告書 工業用砂/砂利の採取認可の保持者またはその請負業者は、それらの工業用砂/砂利の 生産、販売、目録及び雇用に関する宣誓済みの月例報告書(MGBフォームNo.29-12を使 用)を月末から15営業日以内にMGB局長に提出し、その写しを同様の期間内に担当のMGB 地方支所の所長に提出。 e. 商業用砂/砂利の生産、販売、目録状況及び雇用に関する月例報告書 - 81 - 商業用砂/砂利の採取認可の保持者またはその請負業者は、それらの商業用砂/砂利の 生産、販売、目録及び雇用に関する宣誓済みの月例報告書(MGBフォームNo.29-13を使 用)を月末から15営業日以内に当該の州知事/市長に提出し、その写しを同様の期間内 にMGB局長及び担当のMGB地方支所の所長に提出。 f. 小規模な金属鉱物鉱業における生産、販売及び雇用に関する四半期報告書 小規模な金属鉱物鉱業の認可の保持者は、それらの金属鉱物の生産、販売及び雇用に 関する宣誓済みの四半期報告書(金以外の鉱物の場合はMGBフォームNo.29-14、金の採 鉱の場合はMGBフォームNo.29-15を使用)を四半期(暦年)末から15営業日以内に当該 の州知事/市長に提出し、その写しを同様の期間内にMGB局長及び担当のMGB地方支所の 所長に提出。 g. 総合年次報告書 鉱業コントラクター、MPPの保持者またはその請負業者は、宣誓済みの総合年次報告書 (MGBフォームNo.29-16を使用)を年末(暦年)から2か月以内にMGB局長に提出。 採石認可の保持者またはその請負業者は、上記と同様の報告書(MGBフォームNo. 29-16 を使用)を年末(暦年)から2か月以内に当該の州知事/市長に提出し、その写しを、 同様の期間内にMGB局長及び担当のMGB地方支所の所長に提出。 鉱業コントラクター、採石認可の保持者またはその請負業者は全ての会計資料、報告 書、書簡を保管し、それらがMGB局長またはその正式代理の確認を受ける場合は何時で も開示を行う。 小規模鉱業認可の保持者は、年末(暦年)から2か月以内に小規模鉱業に関する宣誓済 みの総合年次報告書(MGBフォームNo.29-17を使用)を当該の州知事/市長に、その写 しを同様の期間内にMGB局長及び担当のMGB地方支所の所長に提出。 h. 燃料消費の四半期報告書 鉱業コントラクター、MPPの保持者またはその請負業者は燃料消費の四半期報告書(MGB フォームNo. 29-18を使用)を四半期(暦年)末から15営業日以内にMGB局長に提出し、 その写しを同様の期間内に担当のMGB地方支所の所長に提出。 採石認可の保持者またはその請負業者は、燃料消費の四半期報告書(MGBフォームNo. 29-18を使用)を四半期末から15営業日以内に当該の州知事/市長に提出し、その写し を同様の期間内にMGB局長及び担当のMGB地方支所の所長に提出。 i. 掘削の四半期報告書 掘削を行う鉱業コントラクターまたは探鉱認可の保持者あるいはMGBより掘削機をリ ースする者は、その契約地/認可取得地/プロジェクト地における掘削の四半期報告書 (宣誓済みのものであること)を四半期(暦年)末から30日(暦日)以内にMGB局長に 提出のこと。この報告書には、(掘削地の)地質詳細、ドリルカラーの場所の地勢図 (1:50,000の縮尺であること)とそれらの掘削区画詳細(地質、構造、鉱体が示され ていること)、コアログ詳細(ドリルカラーのエレベーション、ドリルの傾斜/方位/ 長さの調整が示されていること)、コアの物理的/化学的分析が含まれなければならな い。 - 82 - j. 鉱物埋蔵量目録の年次報告書 鉱業コントラクターまたはその請負業者は、鉱物埋蔵量目録の年次報告書(MGBフォー ムNo.29-19を使用)を、各年(暦年)の第1四半期の末日あるいはその以前にMGB局長 に提出し、その写しを同様の期間内に担当のMGB地方支所の所長に提出。 鉱物保護区(Mineral Reservations)以外の場所においては採石、砂/砂利採取の認可 保持者及び小規模鉱業の認可の保持者またはその請負業者が、同様の報告書(MGB フ ォームNo.29-20を使用)を各年(暦年)の第1四半期の末日あるいはその以前に当該の 州知事/市長に提出し、その写しを同様の期間内にMGB局長及び担当のMGB地方支所の所 長に提出のこと。鉱物保護区以内の場所においては、鉱業認可の保持者が同様の報告 書をMGB局長に提出。 鉱業コントラクター、探鉱認可の保持者またはそれらの請負業者は、他の様式での鉱 物埋蔵報告書を提出することも可能である。但し、その場合、上記のフォームで報告 すべき内容の全てがそれに含まれていなければならない。 k. 一般的事故の月例報告 鉱業コントラクター、鉱業認可の保持者及びその請負業者は、月末から15営業日以内 に一般的事故の月例報告書(Monthly General Accident Report)をMGBフォーム15-5 を使用して、MGB及び担当のMGB地方支所に提出。 l. 爆薬消費月例報告書 爆薬購入ライセンス(Purchaser’s License for Explosives)の保持者は月末から15営 業日以内に、爆薬消費月例報告書(Monthly Explosive Consumption Report)をMGBフ ォーム15-8を使用して、担当のMGB地方支所の所長に提出し、その写しを同期間内にMGB 局長に提出。 m. 鉱山廃棄物及び尾鉱の報告書(半年毎に提出) n. EWPの状況の報告書(半年毎に提出) o. 鉱物保護区内での小規模鉱業における生産、販売、目録の四半期報告書 鉱物保護区内での小規模鉱業認可の保持者は、当該の鉱物保護区での採鉱の生産、販 売、目録の四半期報告書(宣誓済み、承認済みのもので、MGBフォームNo.29-20を使用 のこと)を四半期(暦年)末から30日(暦日)以内にMGB局長に提出。 p. MPSA/FTAAの鉱業コントラクターによる、作業プログラムの状況に関する年次/四 半期報告書 q. 土地使用に関する年次報告書 鉱業コントラクターまたはその請負業者は、年(暦年)末から60日(暦日)以内に、 土地使用に関する年次報告書(宣誓済みのものであること)をMGB局長に提出。 r. その他、MGB局長によって提出が要請される報告書 MAの鉱業コントラクターまたはQP(採石認可)、SGP(砂/砂利採取の認可)、GP(グ - 83 - アノ採取認可)、GGP(貴石採取認可)、小規模鉱業認可の保持者は、その認可の有効 期間に何の生産も行われなくとも、上記(a)~(h)のうちで該当する報告書を提出す る必要がある(生産が行われなかった場合、その理由を報告書に記すことが必要)。 また、鉱山の拡張や閉山の際には、MGB局長/担当のMGB地方支所の所長に(採石資源の 採取や小規模鉱業認可の下に行われる採鉱の場合は、当該の州知事/市長。)、速やか にその通知を文書で行うことが必要となる。 上記の報告書の提出の義務は、MA、FTAA、EP、QP、SGP、GP、GGPの規約条件に盛り込 まれなければならない。 6-2-5. 監査 SECは登録企業に対し、外部監査人による財務諸表の監査を義務付けている。SECのウェブ サイトには、公認監査人や外部監査人のリストが掲載されている。監査人の報告書は、PFRS に整合したものであること。 6-2-6. 検査 SECは、証券規制法(Securities Regulation Code)の下に、企業の会社法(Corporation Code) 準拠を監視する役割を担うため、全ての企業に対して、毎年の財務諸表及び年次報告書の 提出を義務付けている。また、SECは企業の会計記録検査を行う権限も有する。 6-2-7. SECへの登録後に適用される規則 新しく設立された、またはSECに登録を行った企業は政府機関や地方政府機関からの、租税、 雇用福祉、営業開始に関する認可やライセンスを取得する、またはその登録を行うなどと いった様々な条件を満たすことが必要となる。 - 84 - 7. 労働、雇用、入国管理 フィリピンの総労働人口数は2006年10月で推定 35.8百万人、このうちで雇用下の人口が33.2百 万人、失業下の人口が2.6百万人とされており (すなわち、雇用率は92.7%、失業率は7.3%)、 前年同期比の雇用下の人口は31万人増加と上向 きの傾向である。 上記の雇用増加に最も高く貢献しているのはサ ービス産業で、雇用増加数は30万5,000人、次に 貢献度の高いのは工業部門で、雇用増加数は1万 2,000人である。それに対して、農業部門の雇用 数は低下している。 統計上、鉱業及び採石産業の雇用は工業部門の 雇用に含められており、この産業での雇用数は2006年10月末の年間で2万人の増加である。 98。 7-1. 労働者と管理者の関係 1987年フィリピン憲法では、労働者に対し、以下のような権利が定められている。 a. 自己組織、団体交渉、平和的な共同活動(法に準拠した上でのストライキ活動を 含む)。 b. 在任期間の安定確保、人道的労働条件、最低生活賃金。 c. 法で定められる労働者の、その権利および受益に関わる方針/意思決定のプロセス への参加。 d. 生産成果において、雇用者の妥当な投資報酬に相対する正当な配分を受ける権利。 “在任期間の安定確保”とは「労働者の解雇は法で定められる正当なまたは公認の理由及 び規則に沿った正当な手続きなくしては行われない」ということである。 その一方で、1987年フィリピン憲法では雇用者側の妥当な投資報酬及び事業の拡大と成長 における権利も明言されている。従って、雇用者は、その資産の管理、調整、利用及び最 良と見なす方法での事業遂行の特権を有している。また、雇用者は妥当な規則及び規定の 設定及び労働者の選択、事業の必要性に応じての労働者の移動、削減、解雇の権利も、有 する(但し、この権利は善意及びフィリピンの法律と有効契約に準拠した上で行使されな ければならない)。 7-2. 雇用の規約条件 7-2-1. 最低賃金 フィリピンの最低賃金は、最低賃金法のもと、地方によって異なり、各地方の賃金及び生 98 2006年10月の情報に基づく。 - 85 - 産性三部会(Tripartite Wages and Productivity Board)により決定されている。最新の 賃金法令(NCRで2006年7月11日より施行)を例に取ると、1日の最低賃金は総基本賃金が 300PHP(1US$:50PHPの為替換算率をもとにすると、6US$)、総緊急生活手当ての最低額が 1日50PHP(約1US$ )と、合計で350PHP(7US$)である。但し、雇用者は例外的な条件の下 において、この最低賃金への準拠を免除されることもある。 7-2-2. 労働時間と時間外勤務 フィリピンでは、労働者の労働時間は1日8時間を超えてはならないと定められており、被 雇用者は1日のうちで8時間を超える分の労働に対し、通常賃金の最低25%増しの時間外手当 を支給される権利を持つ。時間外手当の計算方法は、時間外労働の行われた日が休養日、 通常公休日、特別公休日、通常労働日のいずれに当たるかによって異なってくる。但し、 以下のような種類の被雇用者(“免除被雇用者”と呼ばれる)は時間外手当を受ける権利 を持たない。 a. 政府職員 b. 管理職者99 c. 外勤者100 d. 雇用者が家族であり、かつ、その雇用者によって扶養される者。 e. 個人対応のサービスを提供する、ホームヘルパー(家政婦など)。 f. DOLE(フィリピン労働雇用省)の長官が法規に従って定める、歩合報酬制の仕事 に就く被雇用者。 99 “管理職者”である被雇用者とは、以下のような被雇用者を指す。 (i) 勤務する会社またはその部課の管理を、主な職務とする。 (ii) その他の管理職の担当官/要員である。 以下のような条件を満たす被雇用者は、管理職者であると見なされる。 • 勤務する会社またはその部課の管理を、主な職務とする。 • 習慣的、かつ定期的に、2名以上の被雇用者の指揮を行う。 • 当人より等級の低い被雇用者の採用または解雇の権限を与えられている、または、他の被雇用者 の雇用、解雇、昇進、地位に関する変更に、重要な発言権を持つ。 以下のような条件を満たす被雇用者は、管理職員であると、見なされる。 • 会社の方針の管理に直接、関連のある仕事を、主な職務とする。 • 習慣的、かつ定期的に、任意の及び独自の判断を行う。 • 以下の、いずれかを行っている。 (i) 経営者の、または、会社またはその部課の管理を主な職務とする管理職員の補佐を、定期的かつ 直接的に行う。 (ii) 一般管理のみの状況の中で、特別な訓練、経験、知識を要する特殊/専門的生産工程を、遂行する。 (iii) 一般管理のみの状況の中で、特殊な業務や職務を遂行する。 • 全体の労働時間の中で、上記(i)~(iii)に直接またはほとんど関連しない作業の占める割合が、20% 以下である。 100 “外勤者”とは、通常の勤務場所が、雇用者の事業本部または支部(支店)から離れた場所にあり、当人 の実際の労働時間を明確に定めることが不可能な、農業以外の職務に就く被雇用者のことである。 - 86 - 被雇用者の時間外手当に対する権利は被雇用者の職務及び責任の性質に依るものとされる (すなわち、“免除被雇用者”の資格を持たない被雇用者は、一部の例を除き、その権利 を有するものとされる)。 また、雇用者は、以下のような状況のもとに適切な手当が支給される場合を除き、被雇用 者に時間外勤務を要求しないものとする。 a. フィリピンが戦争状態の場合、あるいはフィリピン議会または大統領によって、 国家あるいは地方の緊急事態が宣言された場合。 b. 人命または資産の損失の防止、または、甚大な事故/火事/洪水/台風/地震、伝染 病の流行、その他の災害/災禍、またはそれらの接近などによって急迫する危険の 防止に時間外労働が必要となった場合。 c. 雇用者の多大な損失または損害を避けるために、またはこれと類似する性質の理 由のために、機械、施設、設備への緊急作業が必要な場合。 d. 腐敗しやすい商品への損失または損害を防止するために作業が必要な場合。 e. 規定の労働時間(8時間)内に開始された作業を雇用者の事業への多大な障害また は侵害の防止のために完了させることが必要な場合。 f. 作業のパフォーマンスまたは質が天候や環境に左右されるものであり、それらの 好条件が来た際に時間外勤務が必要とされる場合。 上記に関し、下記、3~6には、被雇用者(免除被雇用者を除く)の時間外手当の算出方法 (本人の通常給与に基づく歩合となる)が記されている。 7-2-3. 夜勤手当 午後10時より翌朝6時までの間に時間外勤務を行う被雇用者(免除被雇用者を除く)の場合 は、時間計算となり、本人の時間給の10%以上の手当て額が加算される。 夜勤手当は、免除被雇用者及び通常の従業員数が5名以下の小売やサービスの職場で働く被 雇用者には適用されない。 7-2-4. 休養日 通常、雇用者は、週6日の労働を被雇用者に要求することが可能である。被雇用者は免除被 雇用者を除き、通常の勤務日の連続6日間毎に連続24時間以上の無給休養日を取得する権利 を有する。休養日に仕事が行われた場合、雇用者は当該の被雇用者に対し、被雇用者本人 の賃金額よりも高額の休養日手当を支給する必要がある。この手当の額は、休養日が通常 公休日または特別公休日に当たる場合、異なってくる。 7-2-5. 通常公休日 フィリピンでは、以下のような11の通常公休日が定められている。 ① 元旦 (1月1日) ② 洗足木曜日 (移動祭日) - 87 - ③ 聖金曜日 (移動祭日) ④ ラマダン明け休日 (移動祭日) ⑤ 勇者の日(Araw ng Kagitingan)(4月9日) ⑥ メー・デー(5月1日) ⑦ 独立記念日 (6月12日) ⑧ 英雄の日 (8月の最終日曜日) ⑨ ボニファシオ記念日 (11月30日) ⑩ クリスマス・デー (12月25日) ⑪ リサール記念日 (12月30日) いかなる雇用者も、被雇用者(免除被雇用者を除く)に対し、通常公休日の不労賃金とし て、本人の通常賃金(日給)と同じ額を支給しなくてはならない。また、雇用者は、これ らの公休日の労働を被雇用者に要求した場合、当該の被雇用者に対し、その通常賃金の少 なくとも200%以上の額を支払わなくてはならない。 通常公休日の不労/就労賃金は、免除被雇用者及び通常の従業員数が10名未満の小売やサー ビスの職場で働く被雇用者には適用されない。 7-2-6. 特別公休日 フィリピンでは、以下のような3つの特別公休日が定められている。 ① ニノイ・アキノの日 (8月21日) ② 諸聖徒日 (11月1日) ③ 大晦日 (12月31日) 被雇用者は、上記の特別公休日において労働を行わない場合は、不労賃金の支給は適用さ れないが、労働を行った場合は、本人の通常労働賃金にその30%以上(当該の公休日が、被 雇用者の休養日に当たる場合は50%以上となる)を上乗せした額を支給される権利を有する (但しこれは、免除被雇用者には適用されない)。 7-2-7. 勤続休暇 1年間以上の勤続被雇用者(免除被雇用者を除く)は、全て、Service Intensive Leave(年 間勤続休暇。vacation leaveとも呼ばれる)と呼ばれる、年5日間の有給休暇を取得する権 利を有する。この休暇が、その適用年度内に消化されなかった場合、雇用者はその未消化 分を金銭報酬に換算し、当該の被雇用者に支給する必要がある。通常、雇用者は被雇用者 の休暇スケジュールを管理することが可能である。 勤続休暇は、免除被雇用者及び通常の従業員数が10名未満の職場で働く被雇用者には、適 用されない。 7-2-8. 食事時間 通常、雇用者は、1時間以上の食事時間を被雇用者に提供しなくてはならないが、以下のよ うな場合は、その限りではない。 a. 被雇用者の作業が、手作業のものではない、または、重い肉体労働を含むもので はない場合。 b. 被雇用者の職場の通常の操業時間が16時間以上である場合。 - 88 - c. 緊急事態の場合、またはそれが急迫している場合、あるいは、雇用者の多大な損 失を防止するために、機械、設備、施設への緊急作業が必要である場合。 d. 腐敗しやすい商品の多大な損失の防止のための作業が必要となる場合。 上記のような理由で食事時間が(1時間より)短縮された場合、その短縮された時間帯の労 働は、時間外労働手当ての対象と見なされる。但し、食事時間は20分未満に短縮されては ならない。 7-2-9. 民間退職手当 被雇用者は、現行法、または、契約(団体交渉による契約など)に基づき生じた退職手当 を受給する権利を有する。しかしながら、契約に基づいた退職手当は、労働法(Labor Code) で定められる退職手当を上回るものでなければならない。 契約(団体交渉による契約など)や雇用者の退職手当計画などによる退職手当を受給しな い被雇用者(地下採鉱の労働に携わる被雇用者を除く)は、5年以上の勤続の後に60歳以上 の年齢に達した際に、退職及び退職金の受給が、可能となる。また、雇用者は、被雇用者 (地下採鉱の労働に携わる被雇用者を除く)が、定年の65歳に達した際に、その被雇用者 を、退職金を支給した上で定年退職させることが、可能となる。地下採鉱に携わる労働者 の場合、被雇用者側は、勤続5年以上、かつ、50歳に達した際に退職と退職金受給が可能と なり、雇用者側は、60歳に達した被雇用者(地下採鉱に携わる被雇用者の定年は60歳であ る)を、退職金を支給した上で定年退職させることが、可能となる。上記のような退職の 権利を有する被雇用者は、勤務年の各年につき半月分の給与額101(端数としての勤務月数は、 6か月以上であれば1年間と見なされる)を上回る額の退職金を、受給する権利を有する。 また、労働法で強制化されてはいないものの、フィリピンの雇用者の中には、同時期に複 数の退職者が出る際のキャッシュ・フローへの打撃に備え、被雇用者側には積み立ての義 務が生じないような退職金積み立制度を設けている所もある。 通常の従業員数が10名以下の小売、サービス業、農業の職場の雇用者は上記のような退職 手当の義務を免除される。 7-2-10. 出産手当 民間企業に勤務する妊婦は、通常の出産、人工妊娠中絶、流産のいずれか場合は60日間、 帝王切開による出産の場合は78日間の出産休暇を取得し、この休暇期間において、平均給 与と同額の手当てを支給される権利を有する。この出産手当は、1名の妊婦につき第1回目 から第4回目までの出産または流産に適用される。雇用者は、従業員が出産休暇願いを届け 出てから30日以内に、当該の従業員に対する出産手当を全額支給することが義務付けられ ている。雇用者は出産手当を支給後、その支給の事実と正当性の証明をSSS(社会保障シス テム)に行えば、当該の支給額の100%を同機関より直ちに還付される。 7-2-11. 父親産休 父親産休は、既婚の男性被雇用者に対し、本人と同居する法律上の妻の第1回目から第4回 101 “半月分の給与”には、当該の従業員の最新の給与額を基準とした 15 日分の給与、5 日間の勤続休暇手当 てに相当する現金、13 番目の月の給与の 12 分の 1 に当たる額、その他、雇用者と被雇用者との間で退職 金に含むことが合意された手当の全てが含まれる。 - 89 - 目までの出産において、7日間の完全有給休暇を、本人の雇用形態(仮雇用、本雇用、プロ ジェクト雇用など)とは関わりなく、適用するものである。この休暇において支給される 給与は、当該の従業員の基本給及び場合によっては、地域賃金委員会の定める最低手当て 額から成り、最低賃金以上のものでなければならない。父親産休の手当ては、この産休が 消化されなかった場合は支給されない。 7-2-12. 育児休暇 母子家庭または父子家庭の親102である、1年以上の勤続被雇用者には、現行法の下に定めら れる有給休暇の他に、7日以内の育児休暇が適用される。このような被雇用者は、母子家庭 または父子家庭の親としての状態または状況が変化した場合(被雇用者が、単独で子供を 扶養する義務から免じられた場合など)、育児休暇の取得の権利を失うことになる。 7-2-13. 家庭内暴力による有給休暇 当人、またはその子供が虐待を受けている女性被雇用者には、現行法の下に定められる有 給休暇の他に、10日以内(但し、然るべき機関が保護令を下した場合、この期間は延長が 可能となる)の有給休暇が適用される。この休暇は、女性被雇用者に取得の選択肢が委ね られ、それを取得した被雇用者が医療機関や法機関を利用する時間に充てられるものであ る。未消化分の繰越や換金は行われない。 7-2-14. 軍事休暇 フィリピン国防軍の再軍事訓練、動員、集合試験、年次活動のいずれかに召集され、これ に参加する被雇用者は、その参加を理由に失職または減給とされてはならない。 7-2-15. 13番目の月の給与 “13番目の月の給与法”の修正ガイドラインの適用される雇用者の下で働く、一般職(非 102 母子家庭または父子家庭の親とは、以下のような個人を指す。 • 強姦または貞操の被害を受けた結果、妊娠及び出産し、その子供を養育している女性(当該の妊娠の 起因となった強姦/貞操被害の犯人が確定されない場合も、適用される) • 配偶者の死亡により、親としての責任を単独で担う親。 • 配偶者が有罪判決によって1年以上の抑留または懲役に処せられたため、親としての責任を単独で担 う親。但し、配偶者が1年以上の抑留に処せられている者である場合、当該の配偶者に最終的な判決 が下されているか否かには関わらず、当該の親に法律が適用されていることが前提となる。 • 配偶者の肉体的/精神的疾患(医師による証明が必要)のために、親としての責任を単独で担う親。 • 配偶者と法律上または事実上、離婚してから1年以上が経過し、かつ、子供の保護を委任され、親と しての責任を単独で担う親。 • 法廷または教会によって婚姻の無効または失効が宣言され、かつ、子供の保護を委任され、親として の責任を単独で担う親。 • 配偶者の(親としての義務の)遺棄から1年以上が経過し、これを理由に、親としての責任を単独で 担う親。 • 当人の子供の養育を、他人または福祉施設に委託するよりも、自ら行うことを選択した未婚の父親ま たは母親。 • 里親としての免許をDSWD(フィリピン社会福祉開発省)より正式に取得している、または、法的後 見人として指名されており、子供の養育に単独であたる個人。 • 両親(母子家庭あるいは父子家庭の場合は、その親)の死亡、義務の遺棄、失踪、不在長期化によっ て(いずれも1年以上が経過していること)、家長として、家族(4親等以内の児童であること)の 養育の責任を担うことになった個人。 - 90 - 管理職103)被雇用者は、年間(暦年)の勤務期間が1ヶ月間以上であれば、本人の基本給、 役職、雇用形態、給与の支給方法に関わらず、“13番目の月の給与”と呼ばれる賞与を支 給される権利を有する。この賞与は、被雇用者が年間(暦年)に取得した基本給の12分1以 上の額となり、毎年12月24日の前に支給される。支給時期に関しては、支給額の半分を、 フィリピンでの通常の新学年月である6月までに支払い、残り半分を12月24日までに支払う というという方法が可能である。しかし、雇用者と一般職員の団体交渉機関との間で取り 交わされる合意に基づくこともある。 7-3. 雇用形態 7-3-1. 常勤(終身)雇用 雇用者の通常的な事業や取引にとって必要な、または好ましいとされる業務に就く非雇用 者は、全て、常勤雇用(終身雇用)の被雇用者と見なされる。雇用形態には、この常勤雇 用の他に様々な種類(プロジェクト雇用、季節雇用、臨時雇用、固定期間雇用など)が存 在するが、これらを利用するには多くの規則が設けられており、それらに整合しない雇用 は、見かけ上は常勤雇用に当てはまらないようなものでも常勤雇用とされる。 7-3-2. 仮雇用 雇用者は、新採用の被雇用者に対し、採用日付から最長6か月間の仮雇用期間を設けること が可能である(通常、仮雇用期間の延長はできない)。仮雇用の適用された被雇用者は、 その期間の終了後に正式雇用が認められれば、法に従って、常勤雇用の被雇用者と見なさ れる。雇用者が、仮雇用の被雇用者に対し、その常勤雇用を認めない通知を仮雇用期間内 に行わなかった場合、その被雇用者は自動的に常勤雇用とされたと見なされる。また、雇 用者は、仮雇用の被雇用者に対し、当該の被雇用者が常勤雇用として認められるための基 準をその仮雇用期間の開始時に通知しなくてはならない。これが行われない場合、当該の 被雇用者は、勤務開始時より常勤雇用であると見なされる。 7-3-3. プロジェクト雇用 プロジェクト雇用とは、雇用期間が特定の業務に基づき固定化され、雇用期間の終了時期 が雇用の開始時に予め決定されるものである。但し、被雇用者は雇用期間(プロジェクト) の完了後も引き続き再雇用されること及び常勤雇用で雇用されること(但し、業務内容が 雇用者の通常の事業または取引において必要不可欠なものであること)が可能である。 7-3-4. 季節雇用 季節雇用とは、年間の特定時期に実施される労働のために行われる雇用のことである。 7-3-5. 臨時雇用 臨時雇用とは、雇用者の臨時的な業務に関する雇用であり、被雇用者には、その雇用期間 が、雇用開始時に明示される。臨時雇用の被雇用者は、雇用が1年を経過した場合、その雇 用期間が継続的なものであるか否かに関わらず、現業務が存続する期間は、その業務にお ける常勤被雇用者として、雇用が継続されることになる。 103大統領令(PD)第 851 号では、「“管理職の被雇用者”とは、(会社の)管理方針の決定や行使、及び/ または、被雇用者の採用、移動、停職、一時解雇、罷免、解雇、配属、罰則賦課などの行使またはその 提言の権限あるいは特権を与えられている被雇用者のことを、指す。この定義に属さない被雇用者は全 て、一般職である。」と定められている。 - 91 - 7-3-6. パートタイム雇用 フィリピンの労働法の下にパートタイム雇用として認められる雇用とは勤務時間が当該の 職場での通常勤務時間よりも大幅に短く、単発的、定期的、自発的のいずれかの勤務形態 を取るものである。パートタイム雇用の被雇用者は、法の下に常勤雇用の被雇用者に適用 される恩恵の全てを、受ける権利を有する(但し、これらの恩恵は、当該の被雇用者の労 働時間に比例して調整される)上、常勤雇用と同様の職の確保の権利も与えられている。 7-3-7. 固定期間雇用 固定期間雇用とは、雇用の開始日と終了日が、雇用開始の事前に設定される雇用のことで ある。この雇用形態の利用においては、厳しい制限と、以下のような条件のいずれかが設 定される。 a. 雇用期間は、当該の被雇用者にいかなる強要、強迫、不適切な強制も行われるこ と無しに、かつ、当該の被雇用者の同意を妨げるようなその他の状況が存在しな い上で、当該の雇用の当事者間の理解及び自発に基づく合意によって、取り決め られるものとする。 b. 雇用者による被雇用者への及び被雇用者から雇用者への処遇は、概ね同等の条件 下にあり、雇用者が被雇用者に対して優位性を持つものではない。また、この雇 用形態は、可能な限り、高等教育取得者または高技術の職種に対して適用される ものとする。 7-4. 解雇/退職 一般的に、雇用者による解雇は、法的な(すなわち、正当なまたは公認の)理由による、 かつ、その理由に適用される規則に則った解雇のみに可能となる。フィリピンの労働法で は、退職及び解雇自由の原則(雇用者が任意に被雇用者を解雇することを可能とする原則) は認められていない。 一方、被雇用者は、その理由を問わず、30日以上の事前通知(文書であること)をもって、 退職することが可能である。被雇用者が事前通知を行わずに退職する場合、その雇用者は、 その退職によって被る債務を当該の被雇用者に負わせることが可能であるが、場合によっ ては被雇用者の事前通知無しの退職も可能である104。 7-4-1. 法的な理由による雇用解除 雇用者は、労働法で定められる、「正当なまたは公認の理由」をもって、被雇用者の解雇 104 被雇用者は、以下のような場合、事前通知無しでの退職が可能となる。 • 被雇用者が、雇用者またはその代理によって、本人の尊厳または人格を傷つけられた場合。 • 被雇用者が、雇用者またはその代理によって、非人道的あるいは耐え難い待遇を受けた場合。 • 雇用者が、被雇用者やその近親者に対して、犯罪行為や侮辱行為に及んだ場合。 • その他の上記に類似する例。 - 92 - を行うことが可能である。「正当な理由105」とは被雇用者の過失または怠慢より生ずる理由 のことである 。また、「公認の理由106」とは雇用者の経済状況または被雇用者の健康状態 に基づく理由のことである。 仮雇用の被雇用者が、雇用の際に雇用者から提示される常勤雇用の基準に達しなかった場 合、その雇用者は、当該の被雇用者を解雇することが可能である。 雇用者は、プロジェクト雇用または固定期間雇用の被雇用者に対し、当該のプロジェクト または雇用期間が終了した際にその解雇を行うことが可能となる。 雇用者が、法的ではない理由で被雇用者を解雇した場合、当該の被雇用者はその先任権及 びその他の特権を失うことなく復職する権利、当人の実際の復職までに支払いが差し止め られていた給与の全額(諸手当てを含む)と手当て(またはそれに相当する金額)及び損 害補償金を受け取る権利を有する。 7-4-2. 解雇の必要手続き 雇用者は、正当の理由によって被雇用者を解雇しようとする場合、労働法の下、その旨を 被雇用者に文書で通知する必要が生じる。そして、当該の被雇用者が望む場合は、その当 人が弁護人の援助が得られる場所で、当該の解雇に対する回答を行う機会を設けることを 承諾しなくてはならない。その後、雇用者は、被雇用者を解雇することを決定した場合、2 度目の通知を被雇用者に行い、当人にその旨を知らせなくてはならない。 雇用者は、疾病以外の公認の理由による解雇においては、当該の解雇予定日より30日以上 前にその解雇に影響を受ける被雇用者の全て及びDOLEにその旨を通知しなくてはならない。 この様な解雇の場合、被雇用者は適切な解職手当てを支給される権利を有する107。 105 正当な理由に基づく解雇とは、以下のような理由による解雇を指す。 • 被雇用者が、当人の業務に雇用者の課す合法的な指示に著しくあるいは故意に違反した。 • 被雇用者が、当人の職務において非常にかつ習慣的に怠慢である。 • 被雇用者が、雇用者またはその正式な代理の信任に対し不正行為または故意の違反を犯した。 • 被雇用者が、雇用者または雇用者の近親者または正式代理に対し、犯罪行為または侮辱行為に及 んだ。 • その他の、上記に類似する例。 106 公認の理由による解雇とは、以下のような理由による解雇を指す。 • 労働力の節減となる、設備の導入。 • 人員の削減。 • 損失防止のための人員削減。 • 職場の操業/事業の停止または休止。 • 被雇用者が疾病であり、その状態での継続的な雇用が、法律で禁じられている、または、被雇用 者の同僚に有害である場合。 107 労働力の節減となる設備の導入による、あるいは人員削減のための解雇の場合、被雇用者は、当人のこ れまでの勤続期間の各年につき1か月分の給与額以上の金銭を解職手当てとして支給される権利を有す る。 解雇が損失を防ぐための人員削減、操業/事業の停止や休止によるものであって、かつ、著しい事業損 失または財的危機によるものではない場合、解雇される被雇用者は、勤続期間の各年につき半月分の給 与額以上の金銭を解職手当てとして支給される権利を有する。 解職手当ての額は、「公認の理由」の種類を問わず、当該の被雇用者の1か月分の給与額を下回ってはな らない。また、端数としての勤続期間が6か月間以上である場合、それらの期間は1年間として見なされ る。 - 93 - 疾病による解雇の場合、当該の被雇用者の疾病が、適切な治療をもっても6か月以内に治癒 が不可能であるという旨の証明書が、合法の公衆衛生当局から取得されなければならない。 この場合、当該の被雇用者は解職手当て108を支給される権利を有する。 雇用者は、仮雇用の被雇用者を被雇用者当人が常勤雇用となるための条件を満たさなかっ たという理由で解雇する場合、その旨の事前通知を解雇予定日から妥当な期間を遡る時期 に文書で行うことが必要となる。これはプロジェクト雇用の被雇用者の解雇(当該のプロ ジェクトが完了していること)及び固定期間雇用の被雇用者の解雇(当該の雇用期間が終 了していること)においても同様で、雇用者はプロジェクトまたは雇用期間の終了日より 妥当な期間を遡る時期に解雇の旨の事前通知を被雇用者に文書で行うことが必要となる。 仮雇用の被雇用者は、当人が常勤雇用の条件を満たしていないという理由で解雇される場 合、解職手当てを支給される権利は有さない。これはプロジェクト雇用の被雇用者の解雇 (当該のプロジェクトが完了していること)及び固定期間雇用の被雇用者の解雇(当該の 雇用期間が終了していること)においても同様で、特別な契約が交わされていない限り、 これらの被雇用者は解職手当てを支給される権利は有さない。 雇用者が、被雇用者の解雇において必要な手続きを踏まなかった場合、その解雇が正当な または公認の理由によるものであっても、当該の被雇用者に名目上の損害賠償を受ける権 利が生じる。この損害賠償は、雇用者の被雇用者解雇における必要手続きの不履行に対す る罰金の役割を持ち、その額は、法廷が解雇の状況、特に解雇手続の不履行の度合いを個々 に吟味した上でそれを決定する。 7-5. 労働組合 フィリピンでは、被雇用者の自己組織の権利が、1987年憲法の下に定められている。また、 フィリピン政府は、自由かつ責任ある、自己組織の権利の行使を推進する政策を掲げてい る。 一般的に、被雇用者は自己組織の権利及び団体交渉を目的とした労働組合の結成、支援、 及び労働組合への参加の権利をする。但し、これについては管理職の被雇用者がこの権利 から除外されている、監督職の被雇用者の組合と一般被雇用者の組合が分けられているな ど、いくつかの制限が設けられている。 フィリピンでは、労働法では特に定められてはいないが、守秘被雇用者という被雇用者が、 法律上で認識されている。そして、労働関連のマネジメント方針の立案、決定、施行の担 当者の補佐や代行を行う守秘被雇用者は、労働組合の結成や支援及び労働組合への参加が 禁じられている。 また、協同組合の組合員である被雇用者も、協同組合の共同所有者であると見なされるた め、労働組合の結成や支援及び労働組合への参加が不可能である。 職場の操業停止が、多大な事業損失を理由とするものであった場合、現行の法律に基づき、雇用者は(解 雇する)被雇用者への解職手当てを支給する義務は、負わない。 108 解雇が疾病を理由とするものである場合、被雇用者は勤続期間の各年につき半月分の給与の額以上の金 銭を解職手当てとして支給される権利を有する。解職手当ての額は、当該の被雇用者の1ヶ月分の給与 額を下回ってはならない。また、端数としての勤続期間が6ヶ月間以上である場合、それらの期間は1 年間として見なされる。 - 94 - 労働組合は、その結成は奨励されているものの、活動には規制が設けられており、不当労 働行為及び以下のような行為が禁じられている。 ① 自己組織の権利を行使する上で被雇用者に抑制または強制を与える。 ② 雇用者の被雇用者に対する差別を引き起こすことまたはそれを試みること。 ③ 団体交渉で生じた問題の仲裁において、交渉手数料を要求または受領する。 労働組合は、法の下に与えられる権利の全ての行使を可能とするために、DOLEへの登録を 行う必要がある。この登録は、独立的な労働組合としての登録、国家労働組合または連合 労働組合の支部としての登録のいずれの形態によっても可能である。登録手続きは、労働 法並びにその実施細則によって定められている。 労働組合が被雇用者達の代表として団体交渉を行うには、その労働組合が「被雇用者の団 体単位の交渉を代表して行う専任機関」としての承認及び証明を、受けている必要がある。 労働法並びにその実施細則では、これらの承認や証明の手続き及び団体交渉に関する規則 が定められている。 団体交渉の協定期間は、陳述に関するものは5年間と定められ、その他の条項(経済条項 など)は、3年毎に再交渉が行われる。 団体交渉の協定の当事者は、協定締結から30日以内に協定書の写しをBLR(労働関連局)ま たはDOLEの担当地方支所に直接提出し、その登録を行わなくてはならない。この手続きに おいては、協定書が職場の目立つ場所の2箇所に掲示されていることの証明及び交渉単位の 中の全労働者の過半数の批准を得ていることの証明も必要となる。 労働法の下、フィリピンでは労働組合の他に民間企業の労働管理審議会(労働者及び管理 職者の代表者達が、会社と人材の方針について協議する審議会)の結成が認められており、 これらの組織構造及び結成手続きの方法が同法並びにその実施細則で定められている。 7-6. 社会保険 雇用者及び被雇用者は、社会保険法1997年(Social Security Law of 1997)、国家健康保 険法1995年(National Health Insurance Act of 1995)、持家促進相互基金法1980年(Home Development Mutual Fund Law of 1980)(以下、これらの3つの法律をまとめて“社会法” と呼ぶ)並びにこれらの実施細則の下、被雇用者の給与に基づく社会保険積み立てを行う ことを義務付けられている。 社会法の下、雇用者及び被雇用者は、SSS(社会保障システム)、PhilHealt、Pag-IBIG Fund (住宅共済)に加入し、毎月、定額の積立を行うことが義務付けられている。積立額は月 給ベースであり、雇用者は被雇用者の負担積立額を当該の被雇用者の給与から差し引き、 自己負担額(この分は、被雇用者の月給から差し引いてはならない)と共に、期限日まで にSSS、PhilHealt、Pag-IBIG Fundに納金する。 雇用主が積立金の自己負担額及び被雇用者の天引き額の納金を怠った場合、当該雇用主及 びその担当者は、金銭的債務だけではなく刑事責任も負うことになる。この罪に問われる 者が法人である場合、その社長、パートナー、会長、総支配人及び/または担当者に罰則が 科されることになる。 積立額納金の不履行に伴う金銭的債務には、当該の未払い積立金の利息(積立金の納金期 限日~実際の納金日までの期間を対象に算出)が含まれ、刑事責任には罰金または/及び懲 - 95 - 役が含まれる。 7-7. 駐在員の待遇 フィリピンでは、“非規制国”* (日本も含む)の国民に対し、以下の2点への準拠を条件に、 事業目的の入国における事業ビザ9(a)の事前取得(母国のフィリピン大使館で取得される) を免除している。 a. 当人のパスポートの有効期限日が当人のフィリピンの出国予定日よりも6ヶ月以 上先の日付である。 b. 当人が有効の往復航空券を所持している。 非規制国の国民は、上記の条件を満たしていれば、入国の際に有効期間が21日間、14日間、 7日間のいずれか(当人の国籍によって決まる)の9(a)ビザを発給される。 一方、“規制国”の国民は、フィリピンへの入国においては、上記の条件に加え、ビザ9(a) を、母国/現居住地のフィリピン大使館/領事館から事前に取得することが必要となる。 * DFA Advisoryでは、フィリピンへの渡航の際にも入国ビザまたはビザ9(a)の事前取得を 国民に義務付ける必要のない国を指定している。このような国の国民は、“非規制国の 国民(unrestricted” national)”と呼ばれる。それ以外の国の国民は、“規制国の国 民(“restricted” national)”と呼ばれ、フィリピンへの入国の際には、9(a) ビザを 最寄りのフィリピン大使館/領事館より事前取得することが必要となる。 7-8. 就労ビザ/就労許可の取得規則 フィリピンの外国人労働者は、通常、適切な就労ビザ及び/または外国人雇用許可(AEP) を当人のフィリピンの雇用主を通じ(以下、このような雇用主または外国人労働者のビザ 申請を行うフィリピンの企業を“請願者”と記す)、取得しなければならない。 就労ビザは通常、BI(出入国管理局)で発給される。このビザの申請は、申請者のフィリ ピン雇用主(請願者)が、申請者の保有する9(a)ビザをこのビザへに切り替える申請を代 行するといった形で行われる。 一方、AEPはDOLEで発給される。 外国人労働者は、就労ビザまたはAEPの規則に準拠しなかった場合、国外追放の罰則が科さ れる。また、その雇用主もBI及びDOLEの要注意企業一覧表にリストされ、外国人の雇用を 禁止される。 BI及びDOLEとの間で交わされている現行覚書に基づくと、AEPの発給は、外国人労働者の、 就労ビザが発給されるまでの仮の就労許可と見なされている。従って、これを取得した外 国人労働者は、フィリピンの雇用主の下での労働の開始が、可能である。但し、この場合、 外国人労働者は、就労ビザが発給されるまでの間に9(a)ビザが有効期限を迎える場合、そ の更新を行わなくてはならない。 - 96 - 7-8-1. 就労ビザ 一般的な就労ビザには、以下のような種類のものがある。 a. 9(g)ビザ(事前取得ビザ)-フィリピン企業で合法的な職務に就くために、フィ リピンに渡航する外国人に発給される。発給の申請は、BIに対して行われる。9(g) ビザは、その保持者の配偶者及び21歳未満の未婚の子供にも適用される。 通常、9(g)ビザの発給に要する期間は、全ての必要申請書類の提出から、2~3ヶ 月である。申請に必要な書類には以下のものが含まれる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みの一般申請用紙(General Application Form) ⅱ. 申請者の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔写真であるこ と、インスタント写真不可) ⅲ. 駐在員の人数を示した公証人の証明済みの証明書 ⅳ. 納税を約束する公証人の証明済みの書類 申請者が配偶者または未婚の子供を同伴する場合、以下の書類の提出が必要となる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みの一般申請用紙(General Application Form) ⅱ. 申請者とその配偶者との有効な婚姻証明書 ⅲ. 申請者の未成年の子供の出生証明書 ⅳ. 申請者の配偶者と未成年の子供のパスポートの(申請の)関連ページのフォ トコピー ⅴ. 申請者の扶養者各人の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔 写真であること、インスタント写真不可) (申請者自身及び申請者の雇用主による配偶者及び子供の)扶養と保証の宣誓書 b. 9(d)ビザ(協定に基づく貿易業者/投資家のビザ)-9(d)ビザは、米国、ドイツ、 日本の国民が、同国籍者を多数株主とするフィリピン企業と事業を行う場合に、 発給されるものである。このビザは、一部の外国人被雇用者にも申請が可能であ るが、最近はその発給に長い時間を要するようになっているため、フィリピン雇 用主は9(g)ビザを申請した方が無難であるとされている。 通常、9(d)ビザの発給に要する期間は、全ての必要申請書類の提出から、2~3か 月である。申請に必要な書類には、以下のものが含まれる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みの一般申請用紙(General Application Form) ⅱ. 申請者の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔写真であるこ と、インスタント写真不可) ⅲ. 雇用主の外国人従業員の人数を示した公証人の証明済みの証明書 - 97 - ⅳ. ビザの申請が、その請願者(申請者の就労する会社/共同経営事業)への投 資に基づくものである場合、申請者が株式及び株式台帳を通じて請願者に投 資を行っていることの証明書(請願者の秘書役の作成したものであること)、 申請が、請願者との貿易業務のためのものである場合、請願者の継続的な貿 易事業を証明する書類(請願者の社長、CEO、収入役、秘書役のいずれかの 作成する証明書及びLC、バイヤーの送り状、バウチャーなどの貿易業務の証 明) ⅴ. 請願者の多数株主が申請者と同じ国籍であることの証明書(請願者の収入役 または秘書役の作成するものであること) ⅵ. 納税を約束する公証人の証明済みの書類 注:多数株主(企業)の国籍は、登録や設立の場所ではなく、あくまで多数株主 の株の過半数を所有する個人の国籍に基づく。 申請者が配偶者または未婚の子供を同伴する場合は、以下の書類の提出が必要となる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みの一般申請用紙(General Application Form) ⅱ. 申請者とその配偶者との有効な婚姻証明書 ⅲ. 申請者の未成年の子供の出生証明書 ⅳ. 申請者の配偶者と未成年の子供のパスポートの申請関連ページのフォトコ ピー ⅴ. 申請者の扶養者各人の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔 写真であること、インスタント写真不可) ⅵ. (申請者自身及び申請者の雇用主による配偶者及び子供の)扶養と保証の宣 誓書 c. 47(a)(2)ビザ(特別非居住者ビザ)-47(a)(2)ビザは、フィリピン出入国管理法 (Philippine Immigration Act)第47項(a)(2)の下、その発給によって公益が保 証される場合に、一定の条件が設けられた上で、大統領によって発給されるもの である。 大統領は、輸出加工ゾーン企業(Export Processing Zone Enterprise)、BOIの 登録企業、特別政府プロジェクト(MRT、Skywayなど)のいずれかにおける、外国 人の監督職、技術職、顧問職の雇用を担当の政府機関を通じて認可する権限を持 つ。 47(a)(2)ビザは、全ての必要申請書類の提出から通常、4週間後に発給され、保有 者の扶養家族の併記が可能である。申請に必要な書類には、以下のものが含まれ る。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みのBOIの申請用紙 ⅱ. 記入済み及び公証人の証明済みのDOJの申請用紙 - 98 - ⅲ. 正式に署名された保証書 ⅳ. (申請者の)代行者の指名、詳細、訓練プログラム ⅴ. (申請者の雇用主の)最新の組織図 ⅵ. (申請者の雇用主の)外国人従業員数の証明 申請者が配偶者または未婚の子供を同伴する場合、以下の書類の提出が必要となる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みのDOJ申請用紙 ⅱ. 申請者とその配偶者との婚姻証明書の原本 ⅲ. 申請者の未成年の子供の出生証明書の原本 ⅳ. (申請者による、配偶者及び子供の)扶養の宣誓書 ⅴ. 申請者の配偶者及び/または未成年の子供のパスポート d. 共和国法第8756号(以前の大統領令(EO)第226号)に基づく、数次入国特別ビザ (Multiple Entry Special Visa)-数次入国特別ビザは、フィリピン政府に公認 されている、多国籍企業の地域本部で就労する外国人に発給されるもので、その 有効期間は3年間である(但し、BI担当官の任意によって短縮される場合もある)。 このビザは、その保有者に同伴する(保有者の後にフィリピンに入国することも 可能)配偶者及び21歳未満の未婚の子供の併記が可能である。 このビザは、他の就労ビザと違い、申請者のDOLEからのAEPの取得が免除されてい る。従って、申請者がフィリピンの雇用主のもとでの就労を開始することができ るのはこのビザを取得してからということになる。 数次入国特別ビザは、全ての必要申請書類の提出から通常、15営業日後に発給さ れ、保有者の扶養家族の併記が可能である。申請に必要な書類には、以下のもの が含まれる。 ⅰ. 記入済み及び公証人の証明済みの、一般申請用紙(General Application Form) ⅱ. 申請者の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔写真であるこ と、インスタント写真不可) ⅲ. 申請者のパスポートの申請関連ページのフォトコピー ⅳ. 申請者の雇用主(請願者)のSECの登録証明書、 定款並びに付随定款 ⅴ. 請願者による、以下を証明する宣誓書 • 申請者は請願者の重役であること。 • 申請者は、請願者のフィリピン国内の地域本部のみで、就労すること。 - 99 - • 申請者は給与を受領し、請願者の地域本部から年間に12,000US$以上の金銭あるい はこれと同価値の報酬を受理すること。 • 申請者は、海外国(現在の滞在国)の最終的な出国の日付の少なくとも5日前にそ の旨をBIに通知すること。 ⅰ. 申請者の給与額と雇用期間を正確に記した雇用契約書の正謄本。 ⅱ. 申請者が配偶者または21歳未満の未婚の子供を同伴する(申請者の後にフィ リピンに入国することも可能)場合、以下の書類の提出が必要となる。 • 申請者の扶養者各人の記入済み及び公証人の証明済みの一般申請用紙(General Application Form) • 申請者の扶養者各人の顔写真(縦横2インチ)2枚 (眼鏡をかけていない顔写真で あること、インスタント写真不可) • 申請者の配偶者と、未成年(21歳未満)の子供のパスポートの(申請の)関連ペ ージのフォトコピー • 申請者とその配偶者との有効な婚姻証明書 • 申請者と配偶者との婚姻証明書の正本またはそれと同等の書類 • 申請者の未婚の子供の出生証明書の正本またはそれと同等の書類 • 申請者による当人の配偶者及び子供の扶養の宣誓書 注:フィリピン国外で署名され、公証人による証明を受けた書類は全て、それらの書類の 署名または証明された場所の最寄りのフィリピン領事館で認定を受けること。 7-8-2. 外国人雇用許可(AEP) 外国人を雇用するフィリピン企業は、その外国人の就労ビザの他に外国人雇用認可(AEP) も取得しなくてはならない。AEPの申請はDOLEに対して行われ、発給に要する期間は、通常、 全ての必要申請書類の提出から約3~4週間となる。 前記されたように、AEPを取得した外国人労働者は、フィリピン企業での就労の開始が可能 となる(すなわちAEPは、9(g)ビザが発給されるまでの仮労働許可の役割を果たす)。 7-8-3. 短期雇用(SWP-特別就労許可) フィリピン企業は、短期雇用の形態で外国人を雇用することが可能である。短期雇用が、 一時的な期間のものであるといった性質を持つ職務(コンサルタント業など)であり、そ の雇用期間が6か月以内である場合、請願者(外国人労働者の雇用主)はSWP(特別就労許 可)のみをBIから取得すれば良い。 SWPは、通常、全ての必要申請書類の提出から約5営業日後に発給される。 SWPによって就労する外国人労働者の雇用期間が6か月を超える場合、その雇用主(フィリ - 100 - ピン企業)は、当該の就労者の就労ビザとAEPをBI(または関連の政府機関)及びDOLEから 取得しなくてはならない。 7-9. その他の労働関連事項 7-9-1. 女性の夜間労働の禁止(労働法) 労働法の下、女性はその年齢や手当ての支給の是非に関わりなく、以下のような労働を行 うことが禁じられている。 a. 夜10時~翌朝6時の工業施設またはその支部での労働。 b. 深夜12時~翌朝6時の商業/非工業施設またはその支部での労働。 c. 農業施設での夜間労働。但し、労働者が、連続9時間以上の休憩時間を与えられる 場合は、その限りではない。 女性の夜間労働の禁止は、以下の場合には適用されない。 a. 重大な事故、火事、洪水、台風、地震、伝染病の流行、その他の災害/災禍などに よる緊急事態が実際に生じている/急迫している際に、人命または資産の損失ある いは公安の危機を防止する場合。 b. 雇用者の多大な損失を避けるために、機械、施設、設備への緊急作業が必要な場 合。 c. 腐敗しやすい商品の損失を防止するために作業が必要な場合。 d. 女性労働者が、管理的または技術的な性質の責任職あるいは保健/福祉関連の仕事 に就いている場合。 e. 女性労働者の仕事が手先の技術や器用さを要し、男性労働者では同等の効率性が 実現できないような性質のものである場合。 f. 女性労働者が夜間に作業を行う工場や施設の営業者の近親者である場合。 g. その他、上記に類似し、DOLE長官が法規において女性の夜間労働の禁止から免除 している例。 上記に関しては、DOLEの長官が夜間労働の禁止からの免除に関するいくつかの規則を定め ている。 7-9-2. 手当ての減額の禁止 労働法の下、被雇用者の手当ての廃止や減額は禁じられている。これは、「雇用者は、被 雇用者に対して自発的に支給した手当を一方的に取り戻したり減額したりしてはならな い」ということを意味している。この手当て減額の禁止の規則が適用されるためには、以 下のような規則が設置されるべきである。 a. 手当ての支給は、雇用者の明言した方針に基づくものである、または、長期間に おける行使の準備が整ったものであること。 - 101 - b. 手当ての支給は、安定的かつ慎重に行われること。 c. 手当ての支給は、不確かなあるいは難解な法律問題の誤った解釈または適用によ るものではないこと。 7-9-3. 強制的仲裁 労働判事(労働仲裁人)は、以下のような係争を審理及び裁定するための独占的司法権を 有する。 a. 不当労働行為に関する係争。 b. 係争の解決。 c. 復職の主張を含み、労働者の賃金、給与支給額、労働時間及びその他の雇用の規 約条件に関する係争。 d. 雇用者と被雇用者との関係において生じる、現実面、倫理面、例示面などでの損 害に関する係争。 e. 労働法第264条への違反(被雇用者の自己組織の権利に関する禁止行為)から生じ る係争(ストライキや工場閉鎖の合法性の問題など)。 f. 雇用者と被雇用者(ホームヘルパーも含む)との間での、5,000PHP(約100US$) 以上の金銭が関与する問題の全て。但し、被雇用者手当て、社会保障、メディケ ア(医療保険)、出産手当に関するものは除く。 7-9-4. 雇用契約 雇用契約は、どのような形態を取ることも可能であり、口頭によるものも、それに含まれ る。だが、雇用者と被雇用者の期待、権利、特権、職分、義務を明確なものとするために も、文書の形態を取ることが望ましいとされている。 雇用者が受託業者(すなわち、用務/清掃会社など、第三者にサービスを提供する者)であ る場合、その雇用者は以下の規約条件を含む文書での雇用契約を被雇用者と交わす必要が ある。 a. 被雇用者の職務、仕事、サービスの詳細。 b. 被雇用者の仕事の場所、雇用の規約条件(給与支給額の明細など)。 c. 被雇用者の、雇用期間/継続期間。この期間は、受託業者と顧客(すなわち、受託 業者がサービスを提供する相手)との契約期間、または、その契約の上で、当該 の被雇用者がサービスを提供すると定められる期間と一致していなくてはならな い。 7-9-5. 被雇用者の手引き フィリピンの労働法では、就業規則の設置または被雇用者の手引きの作成は、義務付けら れていない。だが、文書での雇用契約が推奨されるのと同様、雇用者は被雇用者との関係 - 102 - を管理するような就業規則や被雇用者の手引きを設けることが望ましい。そして、被雇用 者に対する規則の設置/修正の際には被雇用者の意見を得るべきである。 7-9-6. 健康診断 労働者の雇用においては、労働者の健康状態を確認し、かつ、労働者の肉体的/精神的疾患 によって他の労働者や職場資産に危険が及ぶのを防止していくためにも、事前の健康診断 が行われるべきである。これらの健康診断は全て被雇用者にとって無料で、完全かつ慎重 に行われ、被雇用者が特別な体質である場合は、レントゲン検査または臨床検査を含むも のでなければならない。健康診断の記録や雇用者の保健担当者の入手した情報は絶対守秘 の取り扱いを受けるべきとされる。 また、フィリピンでは、DOLE省法令(DO)2003年第53-03号の下、従業員数が10人以上の民 間企業には、薬物乱用防止/調整プログラムの設置と導入及び危険薬物の使用に対する企業 方針の設定が義務付けられている。雇用者はこの規則に基づき、「採用予定の労働者に対 しては、薬物使用テストの検査を行う」といった方針を確立することが可能である(但し、 テスト結果は絶対守秘のこと)。 7-9-7. 雇用における選択肢 鉱業法の下、鉱業に携わる個人または法人は、国内の鉱業労働に従事するフィリピン人労 働者に対し、労働の種類(いかなるものも該当)の選択肢を与えることが、義務付けられ ている。但し、このような選択肢は、当該の労働者がそれを効率的かつ操業安全を脅かさ ないよう行う資格を得ているものに限られる。 鉱業コントラクターは、「非常に専門的な訓練、または、長期の探鉱/鉱物の開発または加 工処理の経験を要する」と当人が判断し、かつ、MGB局長によって認可される、技術的また は特殊な作業を行う労働者を連邦法第613号(修正法)に従った上で任意に選択することが できる。 上記のような雇用の期間は、5年間、または、鉱業コントラクターが初期のプロジェクト調 査で示した回収期間の、いずれか長い方となる。また、鉱長、操業副長の役職に就く、あ るいは、採鉱、粉砕、採石、掘削の操業においてこれらの役職と同等の管理職に就く外国 人被雇用者の採用は、以下のような条件の下に行われる。 a. 被雇用者の資格及び作業経験が証明されている。 b. 被雇用者が該当の政府ライセンス試験に合格している。 c. 但し、被雇用者の母国が、(上記のような)条件の免除といった相互特権をフィ リピンと結んでいる場合、当該の被雇用者も、同様の条件免除が適用され、1年以 内の就労が可能となる。 外国人労働者を雇用する鉱業コントラクターは、外国人労働者の代行者の養成プログラム (訓練は外国人労働者が行う)をフィリピン人労働者に提供することも必要となる。 7-9-8. 差別及びハラスメント 関連法:労働法、開発と国民形成における女性法(Women in Development and Nation Building Act、共和国法第7192号とも呼ばれる)、鉱業法の実施細則 - 103 - 労働法では、「政府は、性別、人種、使徒心情に関わらずに、公平な労働機会を提供する」 と定められている。 開発と国民形成における女性法では、男性と同等の労働機会を女性に提供することが、定 められている。一方、労働法では、雇用者が雇用の規約条件において、女性被雇用者を性 別の理由のみで差別することは、非合法であると定められている。また、以下のような事 項も、非合法であると、見なされている。 a. 採用条件または雇用継続の条件に、女性被雇用者は婚姻しないといった条件を盛 り込む。 b. 「女性被雇用者は、婚姻によって退職または解雇となる」と、明示的あるいは黙 示的に定める。 c. 女性被雇用者を、婚姻の理由によって解雇、免職、差別する、または、当人の権 利を傷つける。 d. 労働法で定められる手当の女性被雇用者への支給を拒否する、あるいは、女性被 雇用者のそれらの手当ての受給を阻止するために当人を解雇する。 e. 女性被雇用者を、妊娠の理由で、あるいは、妊娠による/出産休暇の最中に、解雇 する。 f. 女性被雇用者の再妊娠の懸念を理由に、当人の復職を拒否する。 労働法では、雇用者による以下のような行為も非合法であると定められている。 a. 被雇用者を、当人の年齢を理由に、雇用の規約条件で差別する。 b. 賃金に関して苦情を申し立てた、あるいは、そのような苦情に関して証言を行っ た/行おうとしている被雇用者を差別する。 c. 自己組織の権利を行使した被雇用者を差別する。 d. 労働組織への被雇用者の参加を奨励または阻止する目的で、被雇用者に対し、賃 金、労働時間、その他の雇用規約条件における差別を行う。 e. 労働法に基づき証言を行ったり、行おうとしている被雇用者を差別する。 また、(労働法の)実施細則では、「鉱業に携わる者は、女性被雇用者が本人の権利や手 当てに影響を及ぼすような意思決定のプロセスに参加する権利を尊重し、かつ、性別によ る差別を行わない」といった旨が定められている。 7-9-9. 身体障害者の大憲章 共和国法第7277号(“身体障害者の大憲章”とも呼ばれる)は、「身体障害者は、当人に 適合する雇用の機会取得を拒否されてはならない」と定めるものである。有資格の身体障 害者は、有資格の健常者と同等の雇用規約条件、補償、特権、手当て、フリンジベネフィ ット、奨励、支給を受けるものとされている。また、雇用者は、有資格の身体障害者を、 当人の障害を理由に、求職手続き、採用、昇進、解雇、被雇用者補償、研修などをはじめ とする規約条件及び被雇用者の特権において、差別してはならないとされている。 - 104 - 7-9-10. 先住民権法1997年(IPRAまたは共和国法第8371号) IPRAの下、ICC及びIPは、雇用、雇用条件に関するいかなる差別も受けない権利を有し、以 下において平等な機会を得るものとする。 • 採用 • 医療/社会補助 • 安全 • 職務関連の手当て • 現行の労働法規で定められる権利/利用可能な損害賠償施策についての、情報入手 • 強制的な使役(奴隷労働やその他の債務奴隷制)からの自由 • 男女平等の待遇(セクシャル・ハラスメントからの保護など) IPRAでは、以下のような行為が非合法であると定められている。 a. ICC 及びIPをその家系を理由に雇用の規約条件において差別する。 b. ICC/IP被雇用者の合法的な権利または手当取得を拒否する、あるいは、ICC/IP被 雇用者を当人がそれらの合法的な権利または手当てを得るのを阻止するために解 雇する。 ICC、IP、非ICCが同価値の仕事を行う際、それらの労働者の全てに対し、同等の報酬が支 給されるものとする。 7-9-11. フィリピンエイズ予防及び管理法1998年 共和国法第8504号(フィリピンエイズ予防及び管理法とも呼ばれる)では、免疫不全ウィ ルスに感染している、あるいはそれと認められたり、その疑いのある人物に関する差別を 雇用以前から雇用後のいかなる段階(採用、昇進、配置など)においても禁止すると、定 められている。HIVに感染していたり、感染していると認められたり、疑いがあるという理 由のみによる被雇用者の解雇は非合法と見なされている。 7-9-12. 父子家庭または母子家庭の親の福祉法2000年 共和国法第8972号(父子家庭または母子家庭の親の福祉法2000年とも呼ばれる)では、雇 用者は、被雇用者を当人が父子家庭または母子家庭の親であるという理由のみで、雇用の 規約条件の差別を行ってはならないと定められている。 7-9-13. フィリピン最高裁判所判例– International School Alliance of Educators 対Quisumbing, 333 SCRA 13 (2000) フィリピンでは、賃金規約に関する差別は、禁止されている。フィリピン最高裁判所は、 同価値の仕事に就く被雇用者達の賃金は全て同額であるべきといった判決を下している。 7-9-14. 反セクシャル・ハラスメント法1995年 共和国法第7877号(反セクシャル・ハラスメント法1995年とも呼ばれる)では、雇用環境 でのセクシャル・ハラスメントの非合法性が宣言されている。職場でのセクシャル・ハラ スメントとは、雇用者、被雇用者、管理職者、監督者、雇用者の代理、その他、職場にお いて権限、影響力、道義的な支配力を持つ人物が、職場において他者に対し、性的な要求、 - 105 - 要請、要望を行うことであり、それらの要求、要請、要望がその相手に承諾された場合も セクシャル・ハラスメントであると見なされる。 セクシャル・ハラスメントは、職場または雇用環境における以下のような状況が特にそれ に当てはまるとされている。 a. 採用、雇用、再雇用、雇用の継続の条件あるいは好条件な補償、規約、条件、昇 進、特権を条件に個人が性的な行為に応じたり、被雇用者が性的行為に応じるの を拒否したことにより、当人の雇用機会に差別、剥奪、損失をもたらしたり、あ るいは当人に悪影響を及ぼすような制限、隔離、等級分けが生じた。 b. 上記のような行為によって、労働法によって定められる被雇用者の権利または特 権が侵害されている。 c. 上記の行為により、被雇用者にとって、脅迫的、敵対的、攻撃的な環境が生じて いる。 共和国法第7877号は、雇用者に対し、セクシャル・ハラスメントの防止と阻止及びセクシ ャル・ハラスメントの解決、仲裁、告発の手続きの設置を義務付けており、雇用者はこの 義務の遂行のために以下を行うことが必要である。 a. 適切な規則及び規定109を、被雇用者との協議及び被雇用者の共同的承認(いずれも、 被雇用者達の正式な代表を通じて行われること)に基づき設定し、かつ、セクシ ャル・ハラスメントに対する調査手順と行政処分を取り決める。 b. マナーや秩序及びセクシャル・ハラスメント調査に関する委員会110を設置する。 c. 関係者全員への情報として、共和国法第7877号を配布または掲示する。 雇用者は、当人あるいは当人の被雇用者が、差別及びハラスメントに関する上記法律への 違反を犯した場合、その責任を負うことになる。一般に、これらの違法行為は、法廷の任 意によって、罰金または懲役、あるいはその両方の罰則が科せられる。違法を犯した者が 雇用者であった場合、罰則はその当人に科せられ、外国人である場合、法廷の科す罰則を 受けた後に国外追放となる。このような違法者は、その者が会社の雇用者である場合も含 み、損害の責任を弁済や罰則賦課などの方法で負うことになる。 セクシャル・ハラスメントの事実を通告されたが、何の迅速な対応も取らなかった雇用者 は、当該のセクシャル・ハラスメントによって生じた損害の責任をそのハラスメントを犯 した当人と共に、負うことになる。 109 これらの規則及び規定は、職場マナーのガイドライン、及び、教育/訓練の制度などが盛り込まれたも のとなること。 110 委員会は、管理職者、組合、(該当する場合は)監督者の地位に就く被雇用者、一般被雇用者など、各 部門や各職位の代表者の1名以上によって構成される。この委員会は、状況に応じて、責任者や被雇用者と 会合を開き、セクシャル・ハラスメントに対する理解の浸透と防止を図っていく他、セクシャル・ハラス メントと疑わしき問題の調査も行う。 - 106 - 8. 鉱業と関連した環境法規/地域社会法規 8-1. 環境法規 フィリピンでは、“責任ある鉱業”の徹底のため、鉱業コントラクタ ーには、特定の環境法規への準拠が法律で義務付けられている。この ような環境法規は、以下の3つの分野に分かれている。 ① 環境プログラム 鉱業法の実施細則の下、鉱業コントラクターは、持続可能な環境維持 のプログラムの実施が義務付けられており、鉱業活動の全ての段階及 びプロジェクトの終了後においても、全ての露天掘り/坑内掘りの作 業場、廃鉱/尾鉱沈殿池、採石場所、その他、鉱業によって打撃を受 けた地形(探鉱による打撃を受けた地形も含む)をECC及びEPEPでの指定通りに、継続的に 回復させていかなければならない。 ② 保護区 通常、保護区では、鉱業活動が禁止されている。これらの保護区は、鉱業法の下、DENRに よって、生態系、歴史、文化あるいはこれらと似た理由によって指定される他、NIPAS(国 家総合保護区システム)法、文化的資産保護及び保存法(Cultural Properties Protection and Preservation Act)、野生生物保護法(Wildlife Resources Conservation and Protection Act)においても、指定されている。 ③ 汚染防止 フィリピンでは、特定の汚染に焦点を絞った、以下をはじめとする環境法が複数存在する。 • 固形廃棄物法(Solid Waste Act)、危害廃棄物法(Hazardous Waste Act)-廃 棄物処理に関する法律。 • 大気浄化法 (Clean Air Act)-精錬所や加工工場といった静止大気汚染源に関 する条項が定められる。 • 水質浄化法(Clean Water Ac)-水域への廃棄物排出を規制する法律。 8-1-1. 環境プログラム 鉱業コントラクターは、鉱業法の実施細則の下、鉱業プロジェクトの主に以下のような段 階において、持続可能な環境維持のプログラムや証明の提出や及び、実施が義務付けられ ている。 a. 鉱業認可の申請 b. 開発/生産 8-1-1-1. 申請段階 EP、MPSA、FTAAの申請者は、MGBの地方支所に以下のような書類を提出しなければならない。 ① 環境マネジメント/地域社会関係記録証明書(CEMCRR)または免除証明書 (Certificate of Exemption) - 107 - ② 環境作業プログラム(EWP) (1)環境マネジメント/地域社会関係記録証明書(CEMCRR)または免除証明書(Certificate of Exemption) 環境マネジメント/地域社会関係記録証明書(CEMCRR)は、EP、MPSA、FTAAの申請者が、 過去の鉱物資源の利用プロジェクトにおいて、妥当な環境マネジメントを行っており、 かつ、地域社会との関係が良好なものであったことを証明するものである。この証明の 申請は、担当のMGBの地方支所が受け付けており、申請者の過去の環境マネジメントや 地域社会との関係が記録に基づき妥当なものであると判断されれば、証明書が発行され る。 申請者が過去に鉱物資源の利用プロジェクトまたは鉱業関連の事業を実施したことがない 場合、担当のMGB地方支所はCEMCRRの代わりに免除証明書 (Certificate of Exemption) を発行する。 (2)環境作業プログラム(EWP) EP、MPSA、FTAAの申請者は、探鉱期間における環影響管理と土地回復活動の詳細を示すEWP (環境作業プログラム)をMGBに提出しなくてはならない。EWPは、以下の条件を満たすも のでなければならない。 • 環境及び土地回復における申請者の責任の遂行に十分な費用が組まれている。 • (環境)影響の中でも、受容可能と予想される/見なされるものの詳細が記されて いる。 • 探鉱における環境マネジメントのベスト・プラクティス(最良の実践)に基づい た環境保護及び向上の戦略が含まれている。 • 探鉱に打撃を受けた様々な種類の土地についての、探鉱後の土地利用案(打撃を 被った土地の回復を技術面、社会面、環境面で十分な水準をもって、完了すると いった範囲にまで及ぶものでなければならない)を含んでいる。 • 受容可能、実務的、達成可能な選択肢及び実証済みの作業に基づくものである。 • 実施スケジュール、環境準拠の保証、監視、報告及び費用充当のシステムが組ま れている。 EWPで予定される作業に未実証のものが含まれている場合、それらの環境影響管理技術及び 土地回復技術を実証するような調査プログラムの実施が必要となる。 申請者は担当のサングニアン・パンララウンガン111にEWPの提出を行わなくてはならない。 また、EWPの承認から6か月を過ぎたらその15日以内に、そしてその後は6ヵ月毎に、EWPが 正しく実施されていることの報告をMGB地方支所に行わなくてはならない。 8-1-1-2. 開発/生産段階 鉱業コントラクターは、開発/生産の段階に移行したら、特定の規則への準拠及び以下のよ うな環境プログラムの提出や実施が義務付けられることになる。 ① 環境コンプライアンス証明書(ECC) ② 環境保護促進プログラム(EPEP) ③ CLRF(偶発的負債及び回復基金) 111 州議会。 - 108 - (1)環境コンプライアンス証明書(ECC) DENRの定める法規の下、環境に重大な影響を及ぼすようなプロジェクトは、その開始前に 環境コンプライアンス証明書(ECC)を取得することが義務付けられており、特に鉱業コン トラクターは開発段階に移る前にこれを取得しなくてはならない。 ECCは、これを取得するプロジェクトまたは事業が以下に準拠していることを証明するもの である。 • 環境に重大な打撃を及ぼさない。 • EIS(環境影響評価書)システムの規則の全てを遵守している。 • 承認された環境マネジメント計画を実施している。 ECCには、特定の施策や条件が盛り込まれている。そして、この証明書の取得者は、操業の 事前や最中及び場合によってはプロジェクトの中止段階においても、これらの施策や条件 を実施/遵守し、環境影響の緩和に努めていかなければならない。 通常、ECCの申請においては、DENRの内部機関であるEMB(環境マネジメント局)に、EISを 提出することが必要となる。EISは、プロジェクトが環境に及ぼす重大な影響への技術的評 価と対応計画を含むものとならなければならない。EMBは、ECCの申請者に対して、公聴会 の実施を要請することがある。 (2)中止令(CDO) EMB局長またはEMB地方支所の所長はECCを取得していなかったり、ECCに盛り込まれている 規則に違反した、あるいは、環境への甚大かつ回復不可能な損傷の防止を怠った鉱業コン トラクターに対し、CDO(中止令)を、発令する。CDOは、その発令より即時、効力を持つ ものであり、申し立てまたは取り下げの請願によっても、それを失うものではない。但し、 DENRは、このような申し立てや請願が行われてから10営業日以内に何らかの対応を行うこ とが義務付けられている。 (3) 環境保護促進プログラム(EPEP) 環境保護促進プログラム(EPEP)は、鉱業コントラクターがECCの下に義務付けられている 作業の詳細となるものである。 鉱業コントラクターは、ECCの受理後30日(暦日)以内に、EPEPをMGBに提出しなくてはな らない。EPEPは以下のような条件を満たすものでなければならない。 • 鉱物の開発及び加工処理によって影響を受ける地域の全てに適用される。 • 鉱業コントラクターが鉱山寿命期間に行う環境影響管理及び土地回復活動に十分 な費用が組まれている。 • 環境影響の中でも、受容可能と予想される/見なされるものの詳細が記されている。 • 鉱業における環境マネジメントのベスト・プラクティス(最良の実践)に基づい た、鉱山寿命を通しての環境保護及び向上の戦略が含まれている。 • 鉱業に打撃を受けた様々な種類の土地(特に、坑、廃棄場、尾鉱沈殿池など)の、 採鉱後の土地利用案(打撃を被った土地の回復を、技術面、社会面、環境面で十 分な水準をもって完了するといった範囲にまで及ぶものでなければならない)を 含んでいる。 - 109 - • 実務的で達成可能な選択肢及び実証済みの作業に基づくものである。 • 実施スケジュール、環境準拠の保証、監視、報告及び費用充当のシステムが組ま れている。 EPEPで予定される作業に未実証のものが含まれている場合、それらの環境影響管理技術及 び土地回復技術を実証するような調査プログラムの実施が必要となる。 鉱業コントラクターは、当初の環境資本費用として、総資本及びプロジェクト費用の約10% または、環境/地質の状況、操業の性質と規模、使用技術などに見合う額を充当しなければ ならない。 当初の環境資本費用には、環境調査/設計の費用、廃棄場の設置、尾鉱/泥砂の封じ込め及 び廃棄システム、鉱山廃棄物処理システム、廃水/酸性鉱山排水処理工場、塵管理施設、大 気汚染管理施設、排水施設などといった、環境打撃の緩和措置や資本に関する費用が含ま れるものとされている。 (4)環境保護促進プログラムに関する罰則 承認された、あるいは修正されたEPEPに準拠せずに鉱業プロジェクトを行う鉱業コントラ クターは、鉱業法の下に罰金や懲役などの罰則を科せられる。 (5)鉱山環境保護促進局(MEPEO) 鉱業コントラクターは全て、その鉱山機構の中に鉱山環境保護促進局(MEPEO)を設置する ことが義務付けられている。MEPEOは、EPEPを実施する上での優先度の決定、必要財源また は資材の充当順位の決定などを行う。MEPEOの最高責任者は、鉱山での環境作業の実務経験 が5年以上、かつ、ライセンス保持の鉱山技師、地質学者、製錬技師、環境技師であること が望ましく、鉱業コントラクターの抱える環境問題を適切かつ持続可能なプログラムを通 じ、責任をもって解決していくといった義務を担う。 (6)環境における監視及び監査 フィリピンの鉱山事業においては、EPEP/AEPEPへの準拠の確認のために、MMT(複数当事者 による監視チーム)という政府機関 が、最低四半期毎に(必要性に応じて頻度が増す)鉱 業コントラクターの監視を行っている。MMTは、MRF(鉱山回復基金、以下参照)の一部で ある監視信託資金(MTF)より資金を充当されており、監視作業の結果をMRF委員会に報告 することが、義務付けられている。この報告は、MRF委員会の会合の議題に使用される他、 CLRF(偶発的負債及び回復基金)運営委員会にも提出され、同委員会の年次環境監査に利 用される。 (7)発令の権限 MGB地方支所の所長は、汚染防止法規/規則に準拠しない鉱業/採石コントラクターに対し、 その改善措置の実施を要求する。 また、MGB地方支所の所長は、鉱業/採石事業によって環境への危険性が急迫している場合、 当該の事業を直ちに停止させ、その危険性が解消されるまで、あるいは、その鉱業/採石事 業を行うコントラクターが適切な方策を講じるまではその再開を許可しない。 鉱業/採石作業が環境への危害を及ぼしている、あるいはその可能性が急迫している場合、 EMB、汚染裁定委員会(Pollution Adjudication Board)、環境マネジメント及び保護区サ - 110 - ービス(Environmental Management and Protected Areas Service)が危害の回避のため に不可欠と判断される救済措置を取る。 (8)偶発的負債及び回復基金(CLRF) 鉱業コントラクターは、CLRF(偶発的負債及び回復基金)と呼ばれる環境保証基金のメカ ニズムを設定することが義務付けられている。この基金は以下の3基金で構成されている。 ① 鉱山回復基金(MRF) ② 鉱山廃棄物及び尾鉱(MWT)手数料留保基金 ③ 最終的鉱山回復閉山基金(FMRDF) (9)鉱山回復基金(MRF) 鉱山回復基金(MRF)とは、EPEP/AEPEPで定める各段階での責任及びパフォーマンスを遂行 するための資金として、鉱業コントラクターにその設立及び管理が義務付けられる基金で ある。MRFは、政府銀行への信託基金といった形態で預託され、 鉱業活動によって打撃を 受けた土地及び地域社会の物理的・社会的回復及びそれらの回復の社会面、技術面、予防 面での調査に利用される。 MRFは、以下の基金で成り立っている。 a. 監視信託資金(MTF) b. 回復キャッシュ資金(RCF) (9-1)監視信託資金(MTF) MTFは、MRF委員会に承認された監視プログラムの専用資金であり、鉱業コントラクターは これを政府銀行に預託することを義務付けられている。MTFの預預託額(現金であること) はMRF委員会によって決定されるが、15万PHP以上(交通機関/出張費、試験場分析、調達品、 材料、通信、コンサルタント代金などに利用される)であることが必要とされている。 但し、上記の下限額は、国益及び公益の上で必要性が生じた場合は、DENRによって増額さ れる(MGB局長の提案を通じて行われる)ことがある。鉱業コントラクターは、預託を規定 通りに行っていることを預託銀行の証明書をもってMRF委員会に通知しなければならない。 (9-2)回復キャッシュ資金(RCF) 鉱業コントラクターは、鉱業プロジェクトの各段階での、承認済みの回復作業/スケジュー ル(EPEP/AEPEPでの調査プログラムなど)の実施に使用される回復キャッシュ資金(RCF) を設立することが、義務付けられている。RCFの額は、EPEPの実施に必要な額の10%または 500万PHPのいずれか低い方の額と決められている。RCFは、EPEPの承認後の初年度における 各四半期の開始日より15日(暦日)以内に政府銀行に信託金の形態で同額ずつ預託される。 鉱業コントラクターによるRCFの引出または支出は、当該の鉱業コントラクターのEPEP/ AEPEP に基づくものでなければならず、申請書類をMRF委員会(申請の吟味と認可を行う) に提出し、またその写しをCLRF運営委員会に提出することが必要となる。 鉱業コントラクターはRCFの引出を行った場合、最低預託額の維持のための追加預託(年次 単位となる)を行わなくてはならない。 RCFは、鉱業コントラクターが鉱山寿命終了の文書報告をMRF委員会に提出した時点で終了 する。残高は、必要経費が差し引かれた後に金利と共に鉱業コントラクターに返還される。 RCFの終了後は、最終的鉱山回復閉山基金(FMRDF)が、FMR/DP(最終的鉱山回復/閉山計画) の資金としてその計画目標が達成されるまで設置されることになる。 (9-3)鉱山回復基金の引出 鉱業コントラクターは、MRFの引出を政府銀行から行う場合、MRF委員会の作成する引出認 可書の取得が必要となる(申請書をMRF委員会に提出し、またその写しをCLRF運営委員会に 提出することが必要)。引出額は、当該の鉱業コントラクターのAEPEP に基づくものでな ければならない。 MRF委員会にMRF引出の申請が受理されてから30日(暦日)を過ぎても、引出認可書が発行 されない場合、当該の鉱業コントラクターがMRF委員会の代理として、政府銀行への引出指 示書に署名を行い、AEPEPに基づく額を引き出すことが可能となる。 (10)鉱山廃棄物及び尾鉱(MWT)手数料留保基金 操業を行う鉱業コントラクターは、半年間に生じた鉱山廃棄物及び尾鉱の量に基づき、鉱 山廃棄物及び尾鉱手数料を、半年毎に納金することが義務付けられている。この手数料は、 MWT(鉱山廃棄物及び尾鉱)手数料留保基金として政府銀行に預託され、鉱業活動で生じた 損害の補償やCLRF運営委員会の承認する調査プロジェクトに利用される。 MWT手数料は、各期間(半年)の末日から45日(暦日)以内にMGBに納金されなければなら ない。納金額は、鉱業コントラクターの半期(半年間)報告書(原本をMGB、写しをMGB地 方支所に提出することが義務付けられる)に基づき決定される。 (11)最終的鉱山回復閉山基金(FMRDF) 鉱業コントラクターは、設置が義務付けられているFMR/DP(最終的鉱山回復/閉山計画)に 基づき、最終的鉱山回復閉山基金(FMRDF)を毎年納金しなくてはならない。 FMR/DP は、リスクベースの方式/方法によって、閉山のシナリオの全てが検討され、かつ、 この計画の実施費用の予測(インフレ率、技術の進歩、鉱業活動の状況が考慮されている こと)が盛り込まれているものでなければならない。 FMR/DPの費用予測は、外部コントラクターによって閉山/回復作業が行われるケースに基づ いたもので、かつ、鉱山閉山に必要とされる作業(閉山、回復、メンテナンス、監視など) の費用の全て、雇用費用、社会面(10年間に渡る残渣物管理など)の費用が含まれるもの でなければならない。この予測は年次に行われる。 鉱業コントラクターは、FMR/DPを、その事前承認のためにMRF委員会と最終承認のために CLRF運営委員会に提出しなければならない。 (11-1)最終的鉱山回復閉山基金の引出 FMRDFの引出には、CLRF運営委員会の承認(承認済み作業/財務計画に基づいて出されるMRF 委員会の提案を、参考とする)が必要となる。 鉱業コントラクターが、EPEP/AEPEPでの継続的な環境回復プログラムや年次環境/改善プロ グラムで負担する額はFMDRFの貸方に計上することはできない。 - 112 - (12)FMR/DPの見直し FMR/DPの見直し/修正は、その承認より2年以内、その後は2年毎に行われるべきとされてい るが、鉱業活動の変更により必要性が生じる場合はいつでも可能である。見直し/修正は、 鉱業コントラクターの任意、あるいは、MGB局長またはMGB地方支所の所長の要請に基づき 行われる。 FMR/DPの見直し/修正では、以下のような理由によって、FMRDFの年額が調整されることが ある。 a. 鉱業コントラクターによる継続的環境回復への資金充当。 b. FMR/DPの作業の内容または費用の変更。 (13)回復済みの土地からの退去 鉱業コントラクターは、最終回復報告(Final Rehabilitation Report)を、外部者による 環境監査(Environmental Audit)を添えて、事前評価のためにMRF委員会及び最終的承認 のためにCLRF運営委員会に提出することが義務付けられている。報告書が鉱業コントラク ターの評価に基づくものである場合は、FMR/DPの下に達成された目標の報告も必要となる。 MRF委員会及び/またはCLRF運営委員会は、報告された達成事項に関し、フィールド調査を 行い、報告書の修正の提案や追加的な回復作業の要請などを行う。残渣物の管理が更に必 要とされる場合は、その作業詳細を記す用地マネジメント計画(Site Management Plan) の提出が鉱業コントラクターに課せられる。 鉱業コントラクターは、FMR/DPの資金に不足が生じた場合、その全てを負担しなければな らない。但し、環境回復が完了すれば、鉱業コントラクターは、CLRF運営委員会の最終的 退去証明(Certificate of Final Relinquishment)の発行をもってFMRDFの残額の全てを 償還され、当該の回復済みの土地に関し、その後一切の義務を負わないものとされる。 8-1-2. 保護区 以下の土地は、鉱業法の実施細則の下、鉱業権申請の対象外地である。 a. 老生林、未開林、分水界森林保護区(宣言済みのものであること)、自然地域、 マングローブ林、コケで覆われた森林、国立公園、州立/市町森林、森林園、緑地 帯、野鳥保護区、鳥類保護区及び宣言済みの海洋保護区/海洋公園、旅行者区域、 NIPASのInitial Component(初期要素)に指定の区域。 b. 環境天然資源長官が、正式な環境影響評価、持続可能な土地利用の面から、鉱業 活動から除外する地域。バランガイ、町、市、州のサングニアン112の法令によって、 場所や境界線の定められる市街地や重要分水界などがそれに当たる。 一方、以下の土地は、場合によっては鉱業権の申請が可能である。 a. 公共/民間の建物、墓地、考古学的/歴史的場所、橋、高速道路、水路、鉄道、貯 水池、ダムなどといったインフラプロジェクト地、公共/民間の職場(プランテー ションまたは有価値の作地など)のいずれかがある土地またはそれらの近接地。 112 地方行政機関。 - 113 - このような土地での鉱業権の申請においては、MGBの技術的評価を受けた上での当 該の政府機関/民間企業の文書による承諾が必要となる。 b. DENRのプロジェクト地。但し、担当の政府機関の事前承諾が必要となる。 通常、鉱業活動から除外される土地は、上記のような条件に従って、DENRによって決 定されるが以下のような法律でもそれが定められている。 ① NIPAS法 ② 文化的資産保護及び保存法(Cultural Properties Protection and Preservation Act)または文化的資産法(Cultural Properties Act) ③ 野生生物保護法(Wildlife Resources Conservation and Protection Act)また は野生生物法(Wildlife Act) 8-1-2-1. NIPAS法 NIPASは、保護区指定地域全ての分類及び管理のシステムであり、不可欠とされる生態学的 過程と生命維持システムの持続、種の多様性の維持、保護区資源の持続可能な利用の徹底、 保護区の自然な状態の維持の最大限化に活用されるものである。 NIPAS法では、保護区での探鉱の禁止(特に厳正自然保護区と国立公園では絶対禁止されて おり、下記の例外も認められない)が明言されており113、その例外となるのは、周辺地域へ の打撃が非常に少ない、エネルギー源に関する情報収集または調査のみである。そして、 このような調査は、DENRの承認を得たプログラムに則って行われた上で、その結果の開示 及びフィリピン大統領への提出(共和国議会に提出される)が必要となる。保護区で発見 されたエネルギー資源の開発または加工処理は、それに関する共和国議会の承認が立法化 されることによって初めて可能となる。 DENRは、NIPAS法の下、保護区指定の提案を大統領に行う義務を担っている。保護区は、以 下のような種類に分類される。 a. 厳正自然保護区(Strict Nature Reserve)-顕著な生態系や国家的な科学面で重 要性を持つ植物や動物の種や特徴が、自然保護・自然環境の観察や教育における 113 保護区内では、探鉱の他に、以下のような活動も禁止されている。 a. 保護区の植物、動物、生産物を、委員会からの特別認可(ICC保護区の場合は、相互合意)を取 得せずに狩猟、破壊、侵害、保持する。 b. 保護区あるいは保護区内の植物、動物、住民に有害な廃棄物を廃棄または処理する。 c. 無認可でのいかなる電動設備もの使用。 d. 自然美、埋葬地、宗教的な場所、人工遺物及び文化共同体に属するその他の物体を損傷、摩損、 破壊する。 e. 道路や小道を損傷し、放置する。 f. 保護区内で、無断居住、探鉱、土地の不法占有を行う。 g. 無認可で、建造物、柵、囲いなどを建設または維持し、事業を行う。 h. 廃棄物、塵芥、破壊物ゴミを露出または不衛生な状態での遺棄、水域に廃棄物を流出させる。 i. 境界線を移動、撤去、破壊または磨耗させる。 - 114 - 生態学的代表例の維持、動的かつ進化の状態にある遺伝資源の維持のために保護 される区域。 b. 自然公園-人的変化があまり加えられていない比較的広い土地で、かつ、科学面、 教育面、レクレーション面で重要性を持つ国家的または国際的な自然/景観区の保 護のために資源採取が禁止されている区域。 c. 天然記念物/天然ランドマーク-特別な関心事または独特な特徴によって国家的 に重要であると見なされる小天然物の保護または維持に焦点が置かれている比較 的小さな区域。 d. 野生保護区-国家的重要性を持つ種、種群集、生物群集、環境的特徴の保護に不 可欠とされる自然条件が確保されている場所またはその永続のために人的操作が 必要とされる物理的環境特徴を含む区域。 e. 保護景観/海景保護区-人間と土地との調和的な相互作用の特徴を持ち、一般的な 生活様式の中でのレクリエーションや観光を通じて、公共への娯楽の機会及び地 域の経済活動を提供する国家的重要区域。 f. 資源保護区-通常、訪れることが物理的に困難で、比較的孤立しており、かつ、 無人地の多い広い場所で、天然資源の将来的な活用のための保護を目的及び適切 な知識と計画に基づく目的が確立されておらず資源に影響を与えるような開発計 画の阻止のためにその指定が必要とされる区域。 g. 自然生物地域/人類学的資源-現代技術を独自のペースで受け入れながら環境と 調和し合って生活する人々の生活様式を守るために保護される区域。 h. その他保護区-法律や協定に基づき、または、フィリピン政府が調印国である。 国際協定に基づき保護区に指定される区域。 DENRによって保護区指定を提案された区域は、NIPASのInitial Component(初期要素) と見なされる。初期要素での鉱業権の申請は鉱業法の実施細則の下に禁じられている。 フィリピン大統領は、DENRの提案を受理した後、その土地の保護区指定、及び、暫時 的な保護施策の実施のための、大統領布告を行う。その後、共和国議会では、当該の 保護区をNIPASの一部として認めるための法案の立法化といった最終的手続きが取ら れる。 8-1-2-2. 罰則 NIPAS法への違法に問われた者は、法廷の判決に従って、以下のような罰則が科せられる。 • 5,000PHP以上50万PHP以下の罰金(損害賠償額とは別)または/及び1年以上6年以 下の懲役。 • 法廷が、当該の保護区の回復または復元が必要であると裁定を下した場合は、そ の回復と復元の実施あるいはそれに必要とされる賠償金の支払い。 • 保護区からの立ち退き。 • 当人によって保護区で採取または移動された鉱物、木材、生種(これらの採取や - 115 - 移動に使用された設備、装置、小火器も含む)、建築/改修された建物全てのフィ リピン政府による没収。 違法者が組合や会社である場合、その会長または経営者が、被雇用者または労働者による 違法行為に直接の責任を負う。 これらの違法に対しては、DENRによる行政上の罰金も、NIPAS法の条項に従った上で科され る場合がある。 8-1-2-3. 文化的資産保護及び保存法(Cultural Properties Protection and Preservation Act)または文化資産法(Cultural Properties Act) “考古学的場所(archaeological site)”及び“歴史な場所(historical site)”とい う言葉は、鉱業法ではなく文化的資産保護及び保存法(Cultural Properties Protection and Preservation Act)で、定義されている。この法律は文化資産法(Cultural Properties Act) とも呼ばれ、フィリピンの考古学的/歴史的場所の保護及び保存が定められる特別法である。 文化的資産保護及び保存法は、“歴史的場所”を「フィリピンの歴史において重要な役割 を果たしている場所、州、市、街、及び/または、敷地や建造物」と定義している。この定 義における“重要な”とは、文化面、政治面、社会面、歴史面での重要性といった意味で ある。一方、“考古学的場所”は、「地下、地表、水中、海水位に存在し、古生物学的な 及び先史における事実を描写及び記録しているような、化石、人工遺物をはじめとする文 化的、地理的、植物学的、動物学的な物質を含む場所」と定義されている。 しかしながら、鉱業法では歴史的場所及び考古学的場所での鉱業活動が完全に禁止されて いるわけではない。鉱業法の実施細則の下、歴史的場所及び考古学的場所の近接地または 地下/水面下での鉱業権の申請は、担当の政府機関の文書による同意とMGBによる技術的評 価/承認を取得すれば認可される可能性がある。 考古学的場所、歴史的場所での鉱業活動の認可は、フィリピン国立博物館(Philippine National Museum)が行っている。この認可の申請は、特に基準が定められておらず、事例 ごとに取り扱われている。フィリピン国立博物館は、国立博物館(National Museum)とも 呼ばれ、文化的資産法の施行及び行政を担当する機関である。 8-1-2-4. 罰則 MGB及び国立博物館からの認可を取得せずに考古学的な場所または歴史的な場所で行われ る鉱業活動は違法行為と見なされ、その責任者は鉱業法並びに文化的資産法に基づく罰則 が科される。 上記の違法に対し、鉱業法で定められる罰則は5,000PHP以下の罰金、文化的資産法で定め られる罰則は10,000PHP以下の罰金である。但し、違法の責任者が個人である場合、法廷の 任意により、当人に2年以下の懲役あるいは罰金と懲役の両方が科せられることもある。ま た、文化的資産法への違反をもって採掘された物質は国立博物館によって直ちに押収/没収 される。 違法行為が企業(会社、共同経営事業、団体など)によるものの場合、当該の企業の経営 者、代表、取締役、代理、被雇用者のいずれかで、かつ、違反行為の責任を負う者に文化 的資産法で定められる罰則が科せられる。 - 116 - 8-1-2-5. 野生生物保護法(Wildlife Resources Conservation and Protection Act) または野生生物法(Wildlife Act) 野生生物保護法(Wildlife Resources Conservation and Protection Act)は、フィリピ ン国内の野生生物の種及び生息地の保護を目的とする法律で、フィリピン国内の、NIPAS法 で定められる保護区や重要生息地などの野生生物に適用される。この法律は、野生生物法 (Wildlife Act)とも呼ばれる。重要生息地は、絶滅の危機に晒されている野生生物の種 の生息するNIPAS法の適用されていない区域である。 野生生物法の下、重要生息地に指定される区域では、そこに依存しかつ絶滅の危機に晒さ れている種の生存に有害な探鉱または破壊の全てが禁止されている。そして、野生生物法 はこのような保護の方針のもと重要生息地での以下のような行為の禁止も定めている。 a. 野生生物に有害な廃棄物の遺棄。 b. 重要生息地のいかなる場所にもおける、無断居住または占有。 c. 探鉱または採鉱/加工処理。 d. 焼却 e. 伐採 f. 採石 8-1-2-6. 罰則 上記のような違法行為を犯した者は、1か月~8年間の懲役及び/または5,000PHP以上50万 PHP以下の罰金が科せられる。 違法行為において利用された全ての野生生物、それらの派生物または副産物、用具、道具、 輸送機関は全てフィリピン政府に没収される。 違法者が外国人である場合、その当人は科せられた懲役及び罰金の納金を完了の後に国外 追放される。 上記の罰金は、野生生物法の下、インフレ率考慮及び犯罪の抑止維持のためにも3年毎に10% 以上の率で増額される。 8-1-3. 汚染防止 フィリピンでは、特定の種類の汚染に焦点を絞った環境法が複数定められている。これら の法律、特に以下に記されるものは、前記の各法のように鉱業活動に直接関連するもので はないが、ある特定の汚染に関し、鉱業コントラクターに関連してくる。 ① 固形廃棄物法(Solid Waste Act)及び危険廃棄物法(Hazardous Waste Act)-廃 棄物の処分に関する規則が定められている。 ② 大気浄化法(Clean Air Act)-法定大気汚染源(精錬所、加工工場など)に関す る規制が定められている。 - 117 - ③ 水質浄化法(Clean Water Act)-水域への廃棄物遺棄に関する規制が定められて いる。 8-1-3-1. 固形廃棄物法及び危険廃棄物法 3.1.1 固形廃棄物法 固形廃棄物生態学的管理法(The Ecological Solid Waste Management Act)とも呼ばれ、 国内の固形廃棄物の管理、移送、輸送、加工、処理に関する規制が定められている。この 法律では以下のような行為が禁止されている。 a. 道路、運河、歩道といった公共の場所での廃棄物の遺棄。 b. 固形廃棄物の屋外焼却。 c. 分別されていない廃棄物の収集の許可。 d. 屋外のゴミ捨て場または埋立地での無断居住。 e. 洪水に見舞われ易い場所でのゴミの屋外廃棄。 f. 固形廃棄物収集容器への分別再生廃棄物とその他の固形廃棄物との混入。 g. 法律で許可される場所以外での屋外ゴミ廃棄場の運営。 h. 環境基準を満たしていない梱包材の製造または販売。 i. 環境基準を満たしていない梱包材を使用しての消費者製品の輸入。 j. 有毒廃棄物を再生可能と詐称の上での輸入。 k. 家庭/商業/工業/企業収集ゴミの、指定外廃棄物センター/施設への輸送及び廃棄。 l. ECC未取得のまたはLGU(地方政府)の土地利用計画に整合しない廃棄物管理施設 の建設、拡張、運営。 m. 屋外/管理ゴミ捨て場または衛生埋立地から200m以内の場所での、工場/施設の建 設。 n. 帯水層、貯水池、分水界のいかなる場所にもおける、埋立地、廃棄物施設の建設 または運営。 固形廃棄物法への違法行為には、罰金または懲役の罰則が科せられる。 (1) 固形廃棄物収集の基準と規則 以下は、固形廃棄物の収集における最低限の基準と規則である。 a. 廃棄物収集業者及び固形廃棄物の収集に直接携わる者は全て、廃棄物取り扱いの 危害に対する防具を備えていなければならない。 b. 「適切な、かつ、固形廃棄物法に準拠した固形廃棄物取り扱い」のために必要な - 118 - 訓練が廃棄物の収集業者及び関係職員に対して行われなければならない。 c. 固形廃棄物の収集は、廃棄物容器の損傷及び収集場所の近接地への固形廃棄物の 散在を防ぐような方法で行われなければならない。 3.1.2 有毒物質及び危害/核廃棄物管理法(Toxic Substances and Hazardous and Nuclear Wastes Control Act) 有毒物質及び危害/核廃棄物管理法(Toxic Substances and Hazardous and Nuclear Wastes Control Act)は、有毒物質、危害廃棄物、核廃棄物の、輸入、製造、加工、販売、利用、 輸送、処理、廃棄の規則が定められている法律である。この法律は、危害廃棄物法(Hazardous Waste Act)とも呼ばれる。 危害廃棄物法では、「新化学物質の製造業者及び輸入業者は、全て製造前及び輸入前の通 知(PMPIN)をDENRに提出することが義務付けられる」と定められている。“新化学物質(new chemical substance)”は、「フィリピン化学薬品及び化学物質目録(PICCS)にリストさ れていない、全ての化学薬品(物質)」と、定義付けられている。PMPINは、有害化学物質 がフィリピンへの入国前に検査されることを目的に設けられた制度であり、PICCSは、フィ リピンで利用、販売、流通、輸入、加工、製造、保管、輸出、処理、輸送される、既存の 工業用化学薬品及び化学物質の目録のことである。 新科学薬品の製造または輸入を行う業者は、当該の薬品の製造または輸入の開始の90~180 日前に、その製造または輸入の旨の通知をPMPINの用紙と共にDENRに提出することが義務付 けられている。 上記のような通知によって、PICCSにリストされた新化学薬品は、優先化学薬品リスト(PCL) にリストされていず、CCO(化学薬品管理令)の適用対象ではないということを前提に、自 由に製造または輸入されることが可能となる。 PCLは、公衆衛生、職場、環境に不当なリスクを及ぼす恐れがあると見なされる化学薬品の 最終リストである。PCLにリストされる化学薬品の選定は、工業国で使用される選定基準(残 留性、有毒性、体間蓄積性)に基づき行われ、これらの科学薬品の使用者、輸入業者、製 造業者は、様々な登録/報告の規則に従うことが義務付けられる。 CCOは、「化学薬品の適切管理の徹底により、人体及び環境への危険性を緩和する」という ことを目的とする法律で、優先化学薬品(Priority Chamical)に指定される化学薬品の使 用、製造、輸入、輸出、輸送、加工、保管、所持、卸売の禁止、規制、取り締まりが定め られている。優先的化学薬品とは、公衆衛生、職場、環境に及ぼすリスクが非常に高いた めに、規制、段階的撤廃、禁止の対象である化学薬品のことである。また、CCOでは、優先 化学薬品の輸入、製造、利用、輸送、廃棄に関する細則及び優先化学薬品の段階的撤廃や 有害性の低い化学薬品による代替なども定められている。 危害廃棄物法への違法行為には、罰金または懲役の罰則及び関連の事務手数料が科される。 (1) 廃棄物排出者 危害廃棄物を排出する企業は全て、以下の事項に準拠しなくてはならない。 a. 排出される廃棄物の種類及び量をDENRに通知する。この通知は、DENRの認可する 形式に沿って行われ、規定の手数料の支払いを伴うものとなる。 - 119 - b. 排出または外部に移送された危害廃棄物の種類並びに量に関する情報や、その他、 必要とされる情報を四半期毎にDENRに提出する。 廃棄物排出者は、敷地内で排出された危害廃棄物が、処理、再生、再処理、廃棄されたと DENR認定の廃棄物処理業者によって証明されるまでは、それらの所有者であり、かつ、責 任者であると見なされる。 また、廃棄物排出者は、化学物質/危害廃棄物の散在及び事故の緩和/対処のために、包括 的な非常事態計画(DENRのガイドラインに準拠するものであること)を作成して、DENRに 提出しなければならない。 8-1-3-2. 大気浄化法(Clean Air Act) 大気浄化法(Clean Air Act)は、大気汚染(主に“固定汚染源”)を取り締まる法律であ る。“固定汚染源”とは、大気汚染源を排出する、またはその恐れのある建物、固定建造 物、施設、設備のことである。 大気浄化法の実施細則の下、固定汚染源の全ては、DENR地方支所の所長が発行するもので、 有効な操業認可を保持していなくてはならない。 固定汚染源の新築または改築においては、その許可をDENR地方支所の所長から取得するこ とが必要となる。但し、EMB(環境マネジメント局)との合意協定を交わしており、かつ、 指定された時間枠内での環境マネジメント計画を実施する固定汚染源は、適用される罰則 や罰金がDENRによって軽減または減額されることがある。 以下の行為は、大気浄化法並びにその実施細則によって禁止されている。 a. 適切な予防措置を取ることなく、粒状物質の排出を行う、または容認する(いか なる排出源も該当)。 b. 揮発性物質または有機溶剤の保管、揚水、取り扱い、加工、荷降ろし、加工過程 での使用、設置のいずれかを必要な、かつEMBによって認可された既存の水蒸気放 出制御装置システムを使用することなく行う。 c. 汚染排出源(いかなる排出源も該当)から、大気汚染物質を法によって不快を生 ずると定められる量で排気する。 d. 有害かつ有毒な煙を生ずるような物質(いかなる物質も該当)の焼却(いかなる 量も該当)を行う。 e. 屋外で廃棄物の焼却を行う。 f. 有害及び有毒性の煙を排出する都市ゴミ、生物医学的廃棄物、有害廃棄物の焼却 を行う。 汚染制御装置の設置または既存設備の汚染削減の改良を行う工場は、税還付及び/または加 速減価償却の適用といった税優遇措置を受ける資格を得る。 大気浄化法に対する違法行為には、罰金または懲役の罰則が科される。 8-1-3-3. 水質浄化法(Clean Water Act) - 120 - 水質浄化法(Clean Water Act)は、地上の汚染源によって生ずる水質汚染の軽減及び制御 を、主な目的とする法律であるが、この法で定められる水質基準/規則、民事責任、罰則の 条項は、あらゆる種類の汚染源に対して適用されている。 水質浄化法では、以下の行為の禁止が定められている。 a. 水域または縁水域への、または、潮の満干、暴風雨、洪水などによって物質が水 域または表層水に流され易い場所への、水質汚染または水域の自然流の妨げを生 じるような物質の、直接的あるいは間接的な排出または沈積、または、それを生 じるような行為。 b. 地下水を汚染するような物質の、土壌または下層土への排出または注入、あるい は滴下を生じるような行為。但し、DENRの認可を受けた地熱プロジェクトの場合 は、管理された上での短期間の排出(立坑試験、水放出、試運転、ガス抜きなど)、 地熱流体の深部での再注入が容認される(地下水の汚染防止のための安全策が取 られること)。 c. 有効認可の無所持または規約条件への違反によって認可を取り消された後の規制 対象水汚染源を排出するような設備の運転。 d. 下水汚泥または固形廃棄物法で定義される固形廃棄物の海中への無認可の移動ま たは遺棄。 e. 危害廃棄物法で禁止されている化学薬品、物質、汚染源の、移動、遺棄、排出。 f. 危害廃棄物法で禁止されている化学薬品、物質、汚染源の、水域への、またはそ れらが表層水、地面、海岸、海水に流され易い場所への排出あるいは滴下をもた らすような故意または過失による設備の運転。 g. 法律に違反した活動、プロジェクトの展開、拡張、排水/下水設備の運転。 h. 水質浄化法準拠の有効認可の無所持または条件規約への違反によって認可を取り 消された後の規制対象水汚染源の排出。 水質浄化法に対する違法行為には、罰金または懲役の罰則が科される。 8-2. 社会/地域社会法規 フィリピンでは、鉱業活動に影響を受ける地域社会の権利保護のメカニズムが、様々な鉱 業法規の下に確立されている。これらの鉱業法規は、以下のような5つの分野に分かれる。 ① SDMP(社会開発/マネジメントプログラム)鉱業コントラクターは、鉱業地の住民の福 祉のために、SDMP(社会開発/マネジメントプログラム)を実施しなくてはならない。 ② 係争解決 通常、鉱業権と関連した係争は、DENRの行政裁判所である裁定委員会(Panel of Arbitrators)で裁かれることになる。 ③ 地表権 鉱業保有地は、私有地、リース権保持者の保有地、政府譲与地と重なる場合 がある。鉱業法の実施細則ではこのような土地保有権の重複の解決法が定められてい る。 - 121 - ④ 地方政府 鉱業権の申請者は、DENRの規則の下、担当の地方政府と当該の鉱業プロジ ェクトに関する協議を行う必要がある。 ⑤ 先住民(IP) 鉱業コントラクターは、その鉱業活動において、鉱業保有地内の先住 民(IP)からFPIC(自由意志による事前承諾)を得なければならないことがIPRA(先 住民権利法)によって定められている。 8-2-1. SDMP(社会開発/マネジメントプログラム) 鉱業コントラクターは、プロジェクトが開発の段階に入った時点で、SDMP(社会開発/マネ ジメントプログラム)をMGBに提出し、その承認を受けなくてはならない。SDMPは、鉱区の またはその近隣の地域社会の住民の一般福祉の向上を図る地域社会開発プログラムである。 鉱業コントラクターは、SDMPの他に鉱業及び地球科学の一般認識及び教育に関するプログ ラムの実施が義務付けられている。 鉱業コントラクターは、採鉱及び鉱石粉砕の直接費用の1%以上を毎年、上記のプログラム に充てる(この1%のうち、9割がSDMPに、残り1割が一般認識/教育プログラムに割り当てら れる)ことが義務付けられている。 鉱業コントラクターは、各年(暦年)末後の60日以内に採鉱及び鉱石粉砕の直接費用額の 宣誓済みの報告をMGBに提出しなくてはならない。 上記のSMDP及び一般知識/教育プログラムの充当金は、IPへのロイヤルティに含まれる。 (1)鉱業コントラクターの義務 鉱業コントラクターは、SDMPの実施において以下を行うことが義務付けられている。 a. 鉱区のまたはその近隣の地域社会の開発計画を正式な関連機関との調整の上で行 う。 b. 再緑化、鉱山や地域社会で必要とされる物品、サービスの生産といった自立型の 所得生産活動の創出の支援を行う。鉱区のまたはその近隣の地域社会に、自立型 所得生産活動が既に存在している場合は、それらの維持や向上を当該の地域社会 と共に図る。 c. 鉱業活動の人員採用においては、有資格のフィリピン国民を優先し、その大半を 鉱区のまたはその近隣の地域社会の住民、鉱業地の属する市町の住民、鉱業地の 属する県の住民といった優先順で雇用する。必要とされる技能保持者がいない場 合は、技能向上プログラムを自費で実施する。閉山プログラムにおいては、その 一環として、鉱区の地域社会の人々のための新技能開発や事業開発を実施する。 SDMPは、鉱区のまたはその近隣の地域社会との協議及び協同の上での活発な促進かつそれ らの地域社会の開発の向上のための鉱業コントラクターによる計画、プロジェクト、活動 を含むものでなければならない。 また、鉱業コントラクターは地域社会の必要性や需要の変化に対応するために、担当のMGB 地方支所へのSDMPの提出とその認可取得を5年毎に行わなければならない。 - 122 - (2)経費への計上が可能な活動 以下のような活動の経費はSDMPの最低必要経費額への計上が認められる。 a. インフラ機構(地域社会の学校、病院、協会、娯楽施設、道路、橋、埠頭、波止 場、通信、水道、電気、下水システム、住宅地建設プロジェクト、人材開発のた めの訓練施設など)の、設立、建設、開発、メンテナンス。 b. 所得を創出するような産業または活動の確立。 c. 鉱区のまたはその近隣の地域社会の住民への、鉱山施設(病院や学校など)の開 放。この経費額は、当該の施設を利用した地域社会住民の数に比例して決定され る。 d. MGB局長が適切であると認めるその他の活動。 但し、鉱業コントラクターの被雇用者またはその家族によって負担されるプログラム/プロ ジェクト/活動経費はSDMPの経費に計上してはならない。 以下のような経費は、一般認識/教育プログラムの経費としての計上が認められる。 a. 利害関係者に鉱業プロジェクトの情報を提供する、情報/公報センターの設立、改 善、維持の経費。 b. 鉱物資源開発プロジェクトにおける社会面、環境面などでの問題や懸念に関する 情報、教材、文書(効果的なマネジメントや緩和の計画など)の刊行における経 費。 c. 鉱業関連の情報、問題、懸念に関する地域または国内全体での公開協議、ラジオ 放送、新聞発行の経費。 d. 鉱区での先端的研究(制度/人材開発、基本及び応用リサーチなど)に関する経費。 e. 科学技術省に有資格者と承認され、かつ、鉱業コントラクターの被雇用者ではな い研究者によって行われた先端的研究の経費。この場合、その研究と関連する専 門雑誌または研究論文(地元の科学関係者が入手できるものであること)の刊行 経費も計上が可能である。 f. 鉱業、地球科学、鉱物加工技術及びそれらと関連する学術分野(地域社会の開発/ 計画、鉱物経済学、環境経済学など)の学者、特別研究員、訓練生に関する経費。 g. 鉱業及び地球科学に関する一般認識及び教育の浸透のための設備及び資本の提供 に関する経費。鉱業、地球科学、加工技術、関連の人材訓練/開発のためのリサー チや教育機関の設置に関する経費。 h. MGB局長が適切であると認める、その他の活動の経費。 (3)地域社会関係担当官(CRO)の指名 鉱業コントラクターは、SDMPの実施において、鉱区のまたはその近隣の地域社会同士の 連携を図るようなCRO(地域社会関係担当官)を鉱山組織内に配置することが義務付けられ - 123 - ている。CROは、社会学課程の卒業者、地域社会の開発作業の経験者または訓練修得者がな ることが望ましく、鉱業コントラクターの住民/工場マネジャーへの直接報告を行うことが 義務付けられている。 (4)罰則 SDMPの不履行といった違法行為に及んだ鉱業コントラクターは、それが初めての場合は 5,000PHP以下の罰金、2回目の場合はMGBによる採鉱、鉱石粉砕作業の停止処分及び5,000PHP の罰金が科せられる。 8-2-2. 係争解決 通常、鉱業権と関連した係争は、DENRの行政裁判所である裁定委員会(Panel of Arbitrators)で裁かれる。但し、鉱業活動で生じた損害に対する申し立ては、CLRF運営委 員会の地方調査評価チーム(RIAT)が取り扱う。 (1)裁定委員会(Panel of Arbitrators)及びMAB(鉱山裁定審議会) 裁定委員会(Panel of Arbitrators)は、以下の審理と裁決における独占的司法権を持つ 委員会である。 a. 鉱区に関連した権利を巡る係争。 b. MA、FTAA、EPに関する係争。 c. 地表権保有者、居住者、権利保有者、特許権所有者と関連した係争。 裁定委員会による裁決は、権利を侵害された者がその裁決通知(文書となる)を受理して から15日以内に異議申し立てを行わなかった場合本決定となる。 MABは、裁定委員会の採決の再審を行う権限及びMABに申し立てられた係争から生じたもの で、当該の再審、係争の当事者に甚大かつ修復不可能な損害を与え、または社会や経済の 安定に深刻な打撃を与えるような行為に対し、強制命令を発令する権限を有する。 鉱業法の下、MABの裁決を不服とする者は、当該の裁決の受理から30日以内に再審の請願を 最高裁判所に届け出ることが可能である。 (2)損害補償の申請 鉱業活動によって生じた損害に対する補償の申請は、当該の損害の発生から30日(暦日) 以内にRIATに対して行われなければならない。 補償の申請は、鉱業活動によって以下にもたらされた損害に関し可能となる。 • 生命 • 個人の安全 • 土地 • 農作物 • 森林生産物 • 海洋生物 • 水産資源 - 124 - • 文化資源 • 人的資源 • インフラ • 沈積土の農作地または農業や漁業の専用地の、再緑化及び回復 補償対象として認められるものは以下の通りとなる。 a. 個人-当人の死亡または当人の生活、安全、資産への損害。 b. 民間所有者-損害を受けたインフラ機構、森林生産物、海洋/水産/内陸資源。 c. 私有地の申請者または株式譲受人で、所有権、または、所有者としての証明を保 持する者-当該の私有地の損害。 d. 譲渡可能または処分可能な土地の申請者または株式譲受人-当該の土地の損害。 e. 農業賃貸人、賃借人、分益小作人-農作物の損害。 f. IP-埋葬地、文化財への損害。 8-2-3. 地表権 鉱業保有地は、私有地または賃借地と重複している場合がある。鉱業法の実施細則では、 このような鉱業保有地での鉱業コントラクターと私有地や賃借地の地表権保有者との利害 対立の解決手続きが定められている。 (1)立ち入り権/地役権 鉱業保有地と私有地や賃借地が重複する場合、鉱業コントラクターは、それらの土地の地 表権保有者に適切な補償金を支払えば、当該の土地で鉱業活動を行う権利を得ることにな る。 従って、鉱業コントラクターは、適切な補償金の支払いを行えば、第三者によって所有、 占有、賃借される鉱業地に鉱業インフラ(トンネル、道路、粉砕機、廃棄場、尾鉱ダムな ど)を建築、建設、設置することが可能となる。 (2)自主的な協定 地表権所有者や地表の占有者、特許権所有者が当人の所有地または保有地での鉱業権保有 者に対し、その土地の鉱業目的による使用を許可するといった自主的な協定を結ぶ場合、 担当のMGB地方支所にそれを登録することが必要となる。このような協定は、協定の当事者 及びその相続人、株式譲受人、譲り受け人に対する拘束力を持つものでなければならない。 (3)地表所有者/占有者への補償 鉱業活動またはインフラの建設や設置によって、地表権の所有者あるいは地表の占有者/特 許権所有者の資産に損害が与えられた場合、その損害に対して正式かつ適切な補償がなさ れなくてはならない。 このような補償は、鉱業権の保有者と当該の土地の地表権の所有者または地表の占有者や 特許権所有者との間で結ばれた協定に基づくものでなくてはならない。 - 125 - 補償の合意が得られないか上記のような協定そのものが存在しない場合、その補償問題は 正式な対処のためにも裁定委員会での取り扱いを受けなければならなくなる。 8-2-4. 地方政府 DENRの法規の下、鉱業権の申請者または鉱業コントラクターは、当該の鉱業プロジェクト と関連するサングニアン・パンララウンガン、バヤン、パンガソド、バランガイ114 との協 議を行う必要がある。この協議は、鉱業権申請あるいは開発段階への移行の承認における 必須条件となる。 探鉱活動において初めての鉱業権申請(EPまたはFTAAなど)を行う場合、サングニアン(地 方議会)の承認を提出する必要はなく、以下の証明のいずれかを提出すれば良い。 • 関連のEXWP及びEWPが、当該の鉱業プロジェクトと関連するサングニアンの事務官 の全て、または、関連の副知事、副市長の全てに受理されていることの証明 • 当該の鉱業プロジェクトが、関連の州知事、副知事、市長、町長、副市長、副町 長またはサングニアンの事務官の全てに提示されていることの証明 但し、MAの申請が、早急な開発や建設を含むものである場合(MPSAの申請など)あるいは 既存の鉱業保有地の鉱業コントラクターが、鉱業プロジェクトの実現可能性の証明 (Declaration of Mining Project Feasibility)の承認をMGBに申請している場合(FTAA の開発段階への移行前など)、鉱業コントラクターは、関連のサングニアンの全てが、当 該の鉱業プロジェクトを承認していることを、MGBに証明(各サングニアンでの過半数可決 を示す、決議文または証明書を提示のこと)しなければならない。 8-2-5. 先住民(IP) 先住民(IP)は、先住民権利法1997年(IPRA)の下、当人の所有する先祖伝来の土地115で、 当人の自由意志による事前承諾(FPIC)を得ること無しに行われるプロジェクトを中止ま たは延期させる権利を有する。また、いかなる鉱業権申請も鉱業コントラクターが「当該 の鉱業地には、先祖伝来の土地が含まれていない」または「関連のIPより、FPICが取得さ れている」のいずれかの証明書を国家先住民委員会(NCIP)より事前取得していない限り 認可されない。 FPICの取得においては、鉱業コントラクターが、IPと協定書(MOA)を交わす(当該のIPの 長老会議を通じて行われる)ことが必要となる。このMOAはNCIPへの登録が必要で、IPの先 祖伝来の土地での天然資源の加工処理、採取、開発を管理する役割を果たす。MOAの有効期 間は最長25年間で、その後、IPの選択によっては、更に25年間の更新が可能である。 前記されたように、IPと鉱業コントラクターの間で交わされるMOAは、IPへのロイヤルティ (鉱業プロジェクトの総利益の1%以上の額)の支払いに関する条項を必ず含まなければな らない。このロイヤルティには、鉱業コントラクターの鉱区またはその近隣の地域社会の 開発の費用負担額を計上することが可能である。 DENRは、ロイヤルティに関する不合意が当事者間で生じた場合、その時点から3か月以内に 114 州、市、地域などの行政機関(議会) 115 “先祖伝来の土地”とは、広義的には、太古からIP(先住民)によって、所有権、占有、所有の形によっ て保有され、かつ、IPの経済的/社会的/文化的福祉に必要とされる土地と、されている。 - 126 - これを解決しなければならない。ロイヤルティは、鉱業地のIPがNCIPの支援の下に作成し たマネジメント計画に従って、IPの社会/経済福祉信託基金に預入され、IPによって管理及 び活用される。 上記の他に、MOAへの盛り込みが必須とされる条項は、以下の通りである。 • 鉱業地のIPへの手当て • IPの権利及び価値体系の保護 • 鉱業プロジェクトの提案者、IP共同体、NCIPの、それぞれの責任 • 「鉱業コントラクターが交代した場合においても、新たなMOの設定は必要はなく、 従来のMOAの規約条件が、新しい鉱業コントラクターへの拘束力を持つことにな る」との旨 • 規約条件への不準拠または違反に対する罰則 8-2-6. 鉱業の労働条件と人材調達 鉱業会社は、社会面での責任作業の一環として、以下の実践が義務付けられている。 • 鉱業活動の人員採用においては、有資格のフィリピン国民を優先する。 • 必要とされる技能保持者がいない場合は、技能向上プログラムを実施する。 • 閉山プログラムにおいては、鉱区の地域社会の人々のために、新技能や事業を開 発する。 鉱業会社は、鉱山安全及び衛生規格(Mines Safety and Health Standards)に盛り込まれ ている規則や法規が強制的に適用されており、以下を行うことが義務付けられている。 • 全職場における安全/衛生リスクの全ての評価/除去 • 応急手当、鉱山救出、消火活動などといった安全衛生対策の、被雇用者への訓練 • 被雇用者への入院治療の提供 • 安全、衛生、健全な職場環境のために必要な男性専用または女性専用の施設の提 供 フィリピンにおける鉱業部門の被雇用者数は、2000年で10万9,500名である。これより過去 の推移を見ると、1993~1995年は年間9.8%ずつ減少、1996~1997年は金属鉱物の探鉱と非 金属鉱物の生産がそれぞれ増加したことによって増加に転じている。 しかしながら、フィリピンでは鉱業会社は鉱業活動のいかなる段階にもおける16歳未満の 青少年の雇用及び坑内堀りでの18歳未満の青少年の雇用が禁じられていることもあり、人 材調達に制限が生じることになっている。 8-3. 現在の環境的/社会的状況 フィリピンの鉱業部門は、土地アクセス、利用の問題に関する抗議を、NGO、環境グループ、 教会、地方政府、部族グループなどの各方面から継続的に受けている。一般のメディア報 道では、鉱業が環境や社会に及ぼす影響への恐れから、この産業の経済成長に対する貢献 がしばしば過小評価されている。 フィリピン政府は、鉱業法やEIS(環境影響評価書)システムを通じての鉱業政策の実施を 通じ、マスメディアで報じられる鉱業のマイナスイメージの払拭及び「鉱業が社会、環境 への影響に対する義務を全うしながら責任を持って行われる」ということの証明に努めて いる。 - 127 - フィリピンにおいて、環境保護及び地域社会との関わりにおける“国際的なベスト・プラ クティス”に準拠している鉱業プロジェクトの例には、Philex Mining社のパドカル鉱山(ベ ンゲット州)、Sagittarius Mines社のタンパカン・プロジェクト(南コタバト)などが ある。 8-4. 非政府組織(NGO)及び住民組織(PO)が鉱業界に及ぼす影響 NGO(非政府組織)及びPO(住民組織)は、“責任ある鉱業事業”の監視役としての重要な 役割を果たしており、例えば環境NGOなどは、MMT(複数当事者による監視チーム)の代表 的な役目を担っている。MMTは、鉱業活動の事前及び事後の厳しい監視(特に、環境/安全 基準への準拠、IP及び鉱山労働者の権利の保護に関する監視)を行う。 NGO及びPOは、直接的及び間接的なロビー活動を通じ、“責任ある鉱業事業”に関する法律、 政府プログラム、戦略の策定に、影響を与えている。また、NGO及びPOは、以下のような活 動も行っている。 • 地域社会の開発計画の策定の支援 • 研究実施の支援 • 情報提供 • 多部門会合における、鉱業問題の協議 • 生態系に対する一般認識の浸透 • 先住民(IP)や鉱山労働者への自身の権利に関する教育 • 鉱業問題の仲裁及び解決 フィリピンの投資環境調査 2006年 平成20年 3 月 発行 発行: 金属資源開発本部 企画調査部